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第3章:動き出す野望と過去との対峙
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――ラウル王子がグランシェル侯爵家の門前で追い返されてから、数日後。
冬の王都は厳しい寒さが続いていたが、街の活気は依然として衰えない。年明けが近づき、商人たちは新年を迎える準備に奔走し、貴族たちは年末年始の行事やパーティー、領地への帰省など、それぞれの予定に忙殺されていた。しかし、王宮の内情は決して穏やかとは言えない。かねてより囁かれていた「ラウル王子と平民リリアの結婚問題」が、いよいよ最終段階を迎えようとしていたからである。
---
●王宮に渦巻く思惑
王宮では、国王の名代として宰相や高官が集まり、ラウルの今後についてさまざまな議論を重ねていた。第一王子が次期国王となることがほぼ確実なこの国において、第二王子であるラウルはもはや政治的にも軍事的にも大きな期待を寄せられる存在ではなくなっている。
さらに、グランシェル侯爵令嬢との破談が正式に確定した時点で、ラウルの「将来の選択肢」は限りなく狭まっていた。王族としての立場を維持するにしても、既に有力貴族からの信用はほとんど失われ、宮廷内に味方と呼べる存在は皆無に近い。
それでも、「平民の娘リリアと結婚し、堂々と王宮で暮らしたい」というラウルの希望は変わらない。だが、貴族社会の大半はそれを認める気はさらさらなかった。リリアの出自がどうこうという以前に、ラウル自体がもはや「問題児」として扱われているからだ。国王ですらも“これ以上王家の恥を晒されたくない”という思いが強く、内心では早々にラウルを宮廷の外へ押し出したいのではないか、と噂されるほどであった。
「――殿下の問題は、このまま放置するのが最善策です。追放という形を取れば、国民の印象を損なう恐れもある。ですが、殿下ご自身が『自らの意志で王都を出ていく』のであれば、円満に事を収められましょう」
ある高官はそう提案し、他の貴族や官僚たちも賛同する声が上がる。
「そうだ、いっそ近隣の同盟国に留学か視察の名目で出してしまい、当面は帰国を認めないようにすればいい。ラウル殿下も平民との恋にかまけている余裕などなくなるだろう」
どこからともなく、そんな冷ややかな言葉が飛ぶ。
こうして、王家内の多くが「ラウル排除」の方向に傾きつつあった。しかも、グランシェル侯爵家への補償はまだ交渉が続いており、国王としては“金銭面や形式的な謝罪”で済むなら早急に手を打ちたい。もしラウルがこれ以上厄介ごとを起こすなら、さらに不必要な波紋が広がるに違いない。
しかし当のラウルは、そのような王宮内の動きを察知しながらも、なおも自分の意志を貫きたいと主張している。
「僕がリリアと結婚するのは自由だろう? なぜ誰も祝福してくれないんだ。王族だって、一人の人間として自分の幸せを追求する権利があっていいじゃないか……」
かつてグランシェル侯爵令嬢マイラとの婚約で「貴族社会の模範的なカップル」と見なされていた頃からは想像もつかないほど、ラウルの立場は悪化している。だが、彼はまだ自分の選択が誤りだったとは認められない様子であった。
冬の王都は厳しい寒さが続いていたが、街の活気は依然として衰えない。年明けが近づき、商人たちは新年を迎える準備に奔走し、貴族たちは年末年始の行事やパーティー、領地への帰省など、それぞれの予定に忙殺されていた。しかし、王宮の内情は決して穏やかとは言えない。かねてより囁かれていた「ラウル王子と平民リリアの結婚問題」が、いよいよ最終段階を迎えようとしていたからである。
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●王宮に渦巻く思惑
王宮では、国王の名代として宰相や高官が集まり、ラウルの今後についてさまざまな議論を重ねていた。第一王子が次期国王となることがほぼ確実なこの国において、第二王子であるラウルはもはや政治的にも軍事的にも大きな期待を寄せられる存在ではなくなっている。
さらに、グランシェル侯爵令嬢との破談が正式に確定した時点で、ラウルの「将来の選択肢」は限りなく狭まっていた。王族としての立場を維持するにしても、既に有力貴族からの信用はほとんど失われ、宮廷内に味方と呼べる存在は皆無に近い。
それでも、「平民の娘リリアと結婚し、堂々と王宮で暮らしたい」というラウルの希望は変わらない。だが、貴族社会の大半はそれを認める気はさらさらなかった。リリアの出自がどうこうという以前に、ラウル自体がもはや「問題児」として扱われているからだ。国王ですらも“これ以上王家の恥を晒されたくない”という思いが強く、内心では早々にラウルを宮廷の外へ押し出したいのではないか、と噂されるほどであった。
「――殿下の問題は、このまま放置するのが最善策です。追放という形を取れば、国民の印象を損なう恐れもある。ですが、殿下ご自身が『自らの意志で王都を出ていく』のであれば、円満に事を収められましょう」
ある高官はそう提案し、他の貴族や官僚たちも賛同する声が上がる。
「そうだ、いっそ近隣の同盟国に留学か視察の名目で出してしまい、当面は帰国を認めないようにすればいい。ラウル殿下も平民との恋にかまけている余裕などなくなるだろう」
どこからともなく、そんな冷ややかな言葉が飛ぶ。
こうして、王家内の多くが「ラウル排除」の方向に傾きつつあった。しかも、グランシェル侯爵家への補償はまだ交渉が続いており、国王としては“金銭面や形式的な謝罪”で済むなら早急に手を打ちたい。もしラウルがこれ以上厄介ごとを起こすなら、さらに不必要な波紋が広がるに違いない。
しかし当のラウルは、そのような王宮内の動きを察知しながらも、なおも自分の意志を貫きたいと主張している。
「僕がリリアと結婚するのは自由だろう? なぜ誰も祝福してくれないんだ。王族だって、一人の人間として自分の幸せを追求する権利があっていいじゃないか……」
かつてグランシェル侯爵令嬢マイラとの婚約で「貴族社会の模範的なカップル」と見なされていた頃からは想像もつかないほど、ラウルの立場は悪化している。だが、彼はまだ自分の選択が誤りだったとは認められない様子であった。
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