冷徹公爵と契約妻 〜捨てられるはずが、なぜか溺愛されています〜

鍛高譚

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第3章:距離が縮まる二人

3-4:心の距離が近づく夜

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3-4:心の距離が近づく夜

ヴィヴィアンがセリーナの罠による怪我から回復しつつある頃、ブラックモア公爵家には穏やかな日常が戻りつつあった。だが、ヴィヴィアンとアレクサンダーの間には、それまでの冷たく形式的な関係とは異なる新たな感情が芽生えつつあった。それはまだ互いに言葉にできるものではなかったが、確実に二人の心を近づけていた。


---

ある夜、ヴィヴィアンは不意に目が覚めた。夜風が窓から入り込み、カーテンを揺らしている。寝付けないままベッドを出ると、静まり返った屋敷の廊下を歩き始めた。月明かりが照らす廊下を進みながら、自然と足が中庭へ向かっていた。

中庭に足を踏み入れると、そこにはアレクサンダーが一人で立っていた。いつもの冷静な雰囲気ではなく、何かを考え込むような表情を浮かべ、夜空を見上げている。ヴィヴィアンは思わず足を止めたが、彼は彼女の気配に気づいたようで振り返った。

「こんな時間にどうした?」

彼の声は驚きよりも優しさを含んでいた。それに気づいたヴィヴィアンは、自分でも驚くほど自然に答えた。

「少し寝付けなくて……それで、月明かりに誘われてここに来てしまいました。」

アレクサンダーはそれを聞いて小さく頷くと、手で彼女に近くのベンチを指し示した。

「少し座れ。夜風が冷たい。」

ヴィヴィアンはその提案に従い、ベンチに腰を下ろした。アレクサンダーも隣に座り、二人で静かな夜の空気を共有した。


---

しばらくの沈黙の後、アレクサンダーが口を開いた。

「君は……本当に強い女だ。」

不意に告げられたその言葉に、ヴィヴィアンは驚いて彼を見つめた。

「突然、どうしてそんなことを?」

アレクサンダーは少し視線を落としながら続けた。

「セリーナの罠にも負けず、噂にも屈しなかった。あの場でも毅然として立ち向かった。その姿を見て、私は初めて……君を誇りに思った。」

その言葉に、ヴィヴィアンの胸が熱くなった。これまで冷たく無関心に見えた彼が、自分の行動をしっかりと見てくれていたことが嬉しかった。

「ありがとうございます、公爵様。でも、強いなんてことはありません。ただ、私がやるべきことをやっただけです。」

彼女の答えに、アレクサンダーは少しだけ笑みを浮かべた。

「それが君の強さだ。どんな状況でも、自分を見失わない。私には……それが眩しく見える。」

その言葉は、彼がこれまで心に抱えてきた孤独をほんの少しだけ打ち明けたように感じられた。ヴィヴィアンは彼の言葉の重みを感じ取り、静かに返した。

「公爵様も同じです。普段は冷静で、誰よりも強い。それでも、時折見せる優しさに、私は救われています。」

アレクサンダーは驚いたように彼女を見つめた。

「優しさ、か。君がそう思うなら……私は少しは人間らしく見えるのかもしれないな。」

彼の言葉にはどこか自嘲が混じっていた。それを感じたヴィヴィアンは、少しだけ前に身を乗り出した。

「公爵様は、冷たい人ではありません。ただ、それを隠しているだけです。私にはわかります。」

アレクサンダーの灰色の瞳が一瞬だけ揺らいだ。それは、彼の心の奥に触れた証拠のように見えた。


---

二人はそれからも静かに話を続けた。ヴィヴィアンが幼い頃の話や、アレクサンダーが領地のために尽力していることについて。これまでほとんど交わされなかった互いの本音が、少しずつ言葉に乗せられていった。

「君は……この結婚をどう思っている?」

突然の問いに、ヴィヴィアンは少し考え込んだ。

「この結婚が契約であることは理解しています。でも、それが私に与えてくれたものも確かにあります。公爵様と出会い、この家のために尽くすことで、自分が少しでも人の役に立てていると感じることができました。」

アレクサンダーは彼女の言葉を黙って聞きながら、ふと視線を月明かりに向けた。

「私にとって、この結婚は……最初はただの責務だった。だが、今は違う。」

彼はそう言うと、ゆっくりとヴィヴィアンの方に目を向けた。

「君がここにいることで、私は何度も救われている。」

その言葉に、ヴィヴィアンの瞳が見開かれた。彼がここまで自分の気持ちを打ち明けたのは初めてだった。そして、それが彼の本心であることを、彼女は直感的に感じていた。

「公爵様……。」

言葉が出てこないまま、二人はしばらく見つめ合った。夜風が吹き抜ける中、二人の距離はこれまでにないほど近づいていた。


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その夜、ヴィヴィアンは自室に戻りながら胸の奥で感じた温かさを抱きしめていた。一方、アレクサンダーもまた、自分の中で何かが変わり始めたことを自覚していた。

契約結婚という枠の中にいた二人の関係が、この夜を境に確実に変わりつつあった。




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