冷徹公爵と契約妻 〜捨てられるはずが、なぜか溺愛されています〜

鍛高譚

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第5章:溺愛の始まりとざまあの結末

5-2:告白の瞬間

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5-2:告白の瞬間

セリーナが去った森の中、ヴィヴィアンはその場に立ち尽くしていた。全てが終わったはずなのに、胸の中には静かな動揺と混乱が広がっていた。自分を守るために現れたアレクサンダーの姿と言葉――それは彼女の心に深い衝撃を与えた。

そんな彼女に向けられる、アレクサンダーの強い眼差し。それはこれまで見たことのない、彼の素直な感情を映し出しているようだった。


---

「ヴィヴィアン、帰ろう。」

アレクサンダーはそう言って手を差し伸べた。その声は柔らかく、それでいて彼女を拒絶する隙を与えないような強さを含んでいた。

「……はい。」

ヴィヴィアンは少し躊躇しながらも、その手を取った。彼の大きな手の温かさが、彼女の震えた心を静かに包み込んでいくようだった。

二人は森を抜け、屋敷へと向かう道を歩いていた。夕陽が二人の背中を照らし、長い影を作っている。静寂の中、ヴィヴィアンは口を開こうとしたが、言葉がうまく出てこなかった。

彼に何を言えばいいのか――それがわからない。


---

屋敷に戻った二人は、応接室で向き合った。アレクサンダーは普段通り冷静な顔をしていたが、その瞳の奥には何かを決意した強い光が宿っていた。

「君に話したいことがある。」

その言葉に、ヴィヴィアンは少し驚きながら彼を見つめた。

「話したいこと……ですか?」

「そうだ。これまで言えなかったことを、今伝えなければならないと思っている。」

アレクサンダーの声は低く、真剣だった。ヴィヴィアンはその言葉に緊張しながらも、静かに彼の次の言葉を待った。

「君との結婚は、最初はただの契約だった。家同士の利益のための、形だけのものだと思っていた。」

その言葉に、ヴィヴィアンの心が少し締め付けられる。しかし、彼の声には続きがあると感じ、黙って耳を傾けた。

「だが……君と共に過ごす中で、私は自分がどれだけ愚かだったかを思い知らされた。」

アレクサンダーは一度深く息を吐き、言葉を続けた。

「君はいつも周囲の視線に耐えながら、公爵夫人としての役割を完璧に果たそうとしていた。そんな姿を見て、私は次第に君を――いや、君の存在を気にするようになった。」

その告白に、ヴィヴィアンは驚きを隠せなかった。彼が自分のことを「気にしていた」とは、一度も感じたことがなかったからだ。

「公爵様……それは……。」

彼女が戸惑いながら答えようとした瞬間、アレクサンダーが彼女の目を真っ直ぐに見つめた。

「ヴィヴィアン、私はもう君を契約上の妻としてではなく、一人の女性として愛している。」

その一言が、ヴィヴィアンの胸に深く響いた。彼の声には迷いがなく、ただ真実だけが込められているようだった。


---

ヴィヴィアンは動揺し、何を言えばいいのかわからなかった。彼が自分に向けた想いがどれほど本物なのか――それを信じるべきか迷っていた。

「私は……公爵様にふさわしい人間ではありません。私がこの家に来たのは、ただ家同士の契約のためです。それ以上のものを望む資格なんて……。」

彼女の声が震えるのを聞き、アレクサンダーはゆっくりと立ち上がり、彼女の手を取った。その手は彼女の手を包み込むように温かかった。

「そんな資格は必要ない。君は十分すぎるほどふさわしい。私がそう思っているのだから、それで十分だ。」

その言葉に、ヴィヴィアンの目から涙が溢れた。彼が自分の価値を認め、必要としてくれる――それがどれほど大きな意味を持つのかを、彼女は初めて知った。


---

しばらくの間、二人の間には静けさが漂っていた。ヴィヴィアンは涙を拭いながら、彼を見つめた。

「……私にはまだ、自信がありません。それでも、公爵様が本気でそうおっしゃるのなら……私も少しずつその気持ちを受け入れたいと思います。」

彼女の言葉に、アレクサンダーの表情が柔らかくなった。それは、彼がこれまで見せたことのない穏やかさだった。

「それでいい。それで十分だ。これから少しずつ、君に俺の想いを伝え続けていくつもりだ。」

アレクサンダーはそう言って、彼女の手をそっと握り直した。その手の温もりは、彼女の不安を少しずつ溶かしていくようだった。


---

その夜、ヴィヴィアンは自室に戻りながら、胸の中に芽生えた温かい感情を抱きしめていた。アレクサンダーの言葉は真実だと信じても良いのかもしれない――そんな希望が、彼女の心に新たな光を灯していた。

一方、アレクサンダーもまた、初めて自分の想いを伝えられたことで、心に安堵を感じていた。これから彼女を守り抜く――その決意が、彼の中で確固たるものとなっていた。


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