日替わりメイド・ミリア 〜追い出されたけれど両家から引っ張りだこ! 最後に選ぶのは“恋”ですか?“居場所”ですか?〜

鍛高譚

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第1話 『追い出されたメイド、行き先は“妙にやさしい屋敷”でした』

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第1話

『追い出されたメイド、行き先は“妙にやさしい屋敷”でした』



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ミリアは、小さなトランクを抱えながら、屋敷の門を出ていた。

「……まさか、本当に追い出されるとは思っておりませんでしたわ」

呟いてみても、涙はもう出なかった。

元の屋敷を追い出された理由は——
ミリアが働き者だったからではない。
怠けたわけでもない。

ただ、
メイド長に妬まれて、嘘を奥様に吹き込まれた
というだけだった。

(わたし、本当に奥様に無礼なんてしていませんのに……)

ミリアは胸を押さえながら、ゆっくり歩き出した。


御者台の老人が振り返る。

「ミリア嬢さん、次の奉公先……すまんのう、少し遠くてな」

「いえ。雇っていただけるだけで十分ですわ」

(それに……戻る場所がないより、ずっと良いですもの)

荷馬車は揺れながら郊外の道を進んでいく。
途中、ミリアは前の屋敷の光景を思い出した。

怒鳴る奥様。
冷たく笑うメイド長。
何も知らず褒めてくれた若旦那様——
その人が「不在の間」に決定された追放処分。

(若旦那様……あの方は、わたくしを悪く思っていなかったのに……)

けれど、もはや戻れない。

ミリアは自分の手をぎゅっと握った。


数時間後。

「ここだよ」

御者台のおじいさんが指差した先に、小さくて静かな屋敷が見えてきた。

白い壁、よく手入れされた玄関。
城邸でもないけれど、
“人が大事に暮らしている優しい家” という印象があ(……素敵な家ですわね)

ミリアは胸が少しだけ軽くなった。

「失礼いたします……今日から奉公に参りました、ミリアと申します」

玄関扉が、
カチャ と静かに開いた。

黒髪の青年が現れた。
どこか物腰が柔らかく、こちらを見て微笑む。

「私はアーロン。この屋敷の主だ。
 今日からよろしく頼む、ミリア殿」

ミリアは驚いて深く頭を下げた。

「ご、ご主人様自らのお出迎えなど……!」

「当たり前のことだよ。
 うちに来てくれる人を粗末に扱う理由がないだろう?」

(……優しい……!)

思わず胸が詰まった。

アーロンは穏やかに続ける。

「急がなくていい。荷物を置いて、屋敷を見て回ろう」
「は、はいっ!」

ミリアは緊張しながら屋敷に入った。


◆新しい屋敷は、やさしさだらけだった

部屋を案内され、
「無理はしなくていい」
と言われ、
「疲れたら休めばいい」
とも言われた。

(こんなに……働きやすい場所があるなんて……!)

前の屋敷とは天と地の差だ。

ミリアは、胸がじんわり温かくなる。


その日の午後。
ミリアは庭の掃除をしながら、思わず空を見上げた。

「いい風ですわ……ここで、やり直せるかも……」

優しい主。
静かで美しい屋敷。
誰にも怒鳴られない日々。

(ここなら……もう泣かなくていい気がします)

ミリアはそっとほほ笑んだ。
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