推しにも彼にも私にも

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『みんなーっ！　本当にありがとうーっ！』
『キャーッ！』

　ああ。これは夢なのかな。夢ならばいいのに。

　ペンライトでいっぱいの、満員のドーム会場。キラキラと輝く衣装に身を包んだ彼は、会場全体に向かって大きく手を振る。

『みんながいてくれたから、ここまで来れた』
『イヤーッ！』

　会場全体の歓声や悲鳴が、大きなうねりを上げている。ビリビリと、それは振動となってわたしたちのみぞおちを揺らす。

『本当にみんなのこと、大好きだよ』
『タキーッ！』

　ねえ、嘘でしょう？　もうこうやってあなたの名前を叫ぶことも、大好きだって伝えることも、その姿を見ることさえも、叶わなくなるなんて。

『みんなーっ今までありがとうーっ！　愛してるよーっ！』
『キャアアアアアッ！』

　涙で目の前がぐちゃぐちゃになる。キラキラの衣装も、まばゆい照明も、みんなの手で揺れるうちわやペンライトも、なにもかもがぐるぐる混ざる。

「タキくーんっ！」

　心の限り、叫びつくした。体中の水分を涙に変えて、愛を伝えた。