婚約継続中なのに逃亡?元悪役令嬢、勘違いで癒しカフェ開店中

しずく葉

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22. すれ違う視線

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──学園・中庭の片隅。

春の光がやわらかく降り注ぎ、若葉がそよ風に揺れている。

アレクシスは、石畳の小道をゆったりと歩きながら、すっと立ち止まった。
目の前には、ふわふわと揺れる栗色の髪──セシリア嬢。

「セシリア嬢、こんにちは」

「っ、アレクシス様!」

セシリアは小さく跳ねるように驚き、けれどすぐに顔を綻ばせた。

「ご機嫌よう……アレクシス様」

にこやかに微笑む王子の姿に、セシリアの頬はほんのりと染まっていく。

──王子の内心は、別のところにあった。

(……セシリア嬢の背後に誰がいるのか、もっと確かめなければ)

優しく微笑みながら、セシリアに合わせて歩を進める。

すると、セシリアが少し躊躇いがちに、けれど勇気を振り絞ったように言った。

「あの……もしよろしければ、今度、一緒に街へ行きませんか?」

その瞬間、アレクシスはほんのわずかに目を細めた。

(……都合がいい。もっと近くで探れる)

「ええ、いいですよ」

柔らかな声で答えると、セシリアはぱっと顔を輝かせた。

──そして、そのやり取りを、偶然目にしてしまった者がいた。

──クラリッサ。

中庭の小道を曲がった先、ふと目に映ったのは、笑顔で話すふたりの姿。
そして、セシリアがほんのりと頬を赤らめ、王子がやさしくうなずく光景だった。

(……アレクシス様と、セシリア嬢……)

胸の奥がきゅっと締め付けられる感覚。
けれど、クラリッサは何事もなかったかのように、微笑みを崩さずにその場を通り過ぎた。

──春の風が、静かに金の髪を揺らしていた。



* * *


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