22 / 51
22. すれ違う視線
しおりを挟む
──学園・中庭の片隅。
春の光がやわらかく降り注ぎ、若葉がそよ風に揺れている。
アレクシスは、石畳の小道をゆったりと歩きながら、すっと立ち止まった。
目の前には、ふわふわと揺れる栗色の髪──セシリア嬢。
「セシリア嬢、こんにちは」
「っ、アレクシス様!」
セシリアは小さく跳ねるように驚き、けれどすぐに顔を綻ばせた。
「ご機嫌よう……アレクシス様」
にこやかに微笑む王子の姿に、セシリアの頬はほんのりと染まっていく。
──王子の内心は、別のところにあった。
(……セシリア嬢の背後に誰がいるのか、もっと確かめなければ)
優しく微笑みながら、セシリアに合わせて歩を進める。
すると、セシリアが少し躊躇いがちに、けれど勇気を振り絞ったように言った。
「あの……もしよろしければ、今度、一緒に街へ行きませんか?」
その瞬間、アレクシスはほんのわずかに目を細めた。
(……都合がいい。もっと近くで探れる)
「ええ、いいですよ」
柔らかな声で答えると、セシリアはぱっと顔を輝かせた。
──そして、そのやり取りを、偶然目にしてしまった者がいた。
──クラリッサ。
中庭の小道を曲がった先、ふと目に映ったのは、笑顔で話すふたりの姿。
そして、セシリアがほんのりと頬を赤らめ、王子がやさしくうなずく光景だった。
(……アレクシス様と、セシリア嬢……)
胸の奥がきゅっと締め付けられる感覚。
けれど、クラリッサは何事もなかったかのように、微笑みを崩さずにその場を通り過ぎた。
──春の風が、静かに金の髪を揺らしていた。
* * *
ここまで読んでくださりありがとうございます。🌱
ご感想やお気に入りの登録、とても励みになります。
ぜひ一言でも残していただけたら嬉しです。
春の光がやわらかく降り注ぎ、若葉がそよ風に揺れている。
アレクシスは、石畳の小道をゆったりと歩きながら、すっと立ち止まった。
目の前には、ふわふわと揺れる栗色の髪──セシリア嬢。
「セシリア嬢、こんにちは」
「っ、アレクシス様!」
セシリアは小さく跳ねるように驚き、けれどすぐに顔を綻ばせた。
「ご機嫌よう……アレクシス様」
にこやかに微笑む王子の姿に、セシリアの頬はほんのりと染まっていく。
──王子の内心は、別のところにあった。
(……セシリア嬢の背後に誰がいるのか、もっと確かめなければ)
優しく微笑みながら、セシリアに合わせて歩を進める。
すると、セシリアが少し躊躇いがちに、けれど勇気を振り絞ったように言った。
「あの……もしよろしければ、今度、一緒に街へ行きませんか?」
その瞬間、アレクシスはほんのわずかに目を細めた。
(……都合がいい。もっと近くで探れる)
「ええ、いいですよ」
柔らかな声で答えると、セシリアはぱっと顔を輝かせた。
──そして、そのやり取りを、偶然目にしてしまった者がいた。
──クラリッサ。
中庭の小道を曲がった先、ふと目に映ったのは、笑顔で話すふたりの姿。
そして、セシリアがほんのりと頬を赤らめ、王子がやさしくうなずく光景だった。
(……アレクシス様と、セシリア嬢……)
胸の奥がきゅっと締め付けられる感覚。
けれど、クラリッサは何事もなかったかのように、微笑みを崩さずにその場を通り過ぎた。
──春の風が、静かに金の髪を揺らしていた。
* * *
ここまで読んでくださりありがとうございます。🌱
ご感想やお気に入りの登録、とても励みになります。
ぜひ一言でも残していただけたら嬉しです。
10
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました!
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる