婚約継続中なのに逃亡?元悪役令嬢、勘違いで癒しカフェ開店中

しずく葉

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23. 蠢く影

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──学園の裏庭、誰もいない静かな回廊。

春の風が古い石畳をなでる中、
リリィナ・フォン・ヴァレリウスはそっとドレスの裾を整え、黒衣の男を見上げた。

男はマントを羽織り、顔立ちを影に沈めている。
高貴な雰囲気を纏いながらも、その瞳は鋭く、冷たい。

リリィナは微笑みながら、静かに告げた。

「──学園の生徒たちの間でも、クラリッサ様に対する不信感が広がってきておりますわ。」

「今なら、誰も彼女を庇いません。」

男は何も言わず、ただじっとリリィナを見つめている。

リリィナは続ける。

「そろそろ──仕上げを行っても、よろしいかと。」

静かな提案。
だが、その声には確かな毒がにじんでいた。

男はしばし黙り、
そしてふっと口元をゆがめた。

「……それなら、次の式典で仕掛ける。」

その声は、酷薄な静けさをまとっていた。

リリィナは恭しく頭を下げる。

「すべて、お任せいたしますわ。」

男は何も言わず、回廊の奥へと歩み去った。

──春の空は、どこまでも青かった。

まるで、これから起こることなど知らないかのように。


* * *


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