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しおりを挟む私、アマリリス・ロータスは困惑していた
(「ロベリア、よね…?こんなに清楚なドレスを持ってたのね…それにカーテーシも上手になってるわ」)
目の前でぎこちなさは少し残るものの、人前に出ても問題ないレベルのカーテーシを披露している義妹のロベリアを足の爪先から頭まで食い入るように見つめてしまう
「リリスお義姉様?」
「あ、ええ。もちろん喜んで参加させてもらうわ」
「ありがとうございます!私も楽しみにしております」
それでは、失礼します。と言い私の自室をお行儀良く出て行くロベリアの背中を私は呆気に取られた気持ちで見つめた
(「ロベリアってあんな子だったかしら…?」)
時刻は午後15時を回った頃
自室の片付けもひと段落済み、侍女のシスルが淹れてくれた紅茶をコクリと飲む
ロータス侯爵家に長く帰ってきたのは実に1ヶ月ぶりだ
それまでは帰ってきても数時間で王宮に戻る、を繰り返す生活をしていた
それもこれも、1年前に王太子の婚約者として内定し、この1年間成婚式に向かって準備や、王妃教育の最終段階を終えたりなど、数分刻みでのスケジュールを多忙にこなしていた
だからこそ、自分のことで精一杯になっていた私は義妹が1年前から大幅に変わってしまっていたことにびっくりしてしまった
記憶が正しければ彼女はわがままで派手好きな女性だったはずだ
(「勉強からも逃げていたから礼儀作法も身についてなかったはず」)
そう認識していたのに、午前中に見た彼女はカーテーシもしっかりとできていた
それに言葉遣いだって綺麗に治っていた
ドレスも赤や紫などの派手な色を好む彼女だったが今日来ていたのはパステルカラーの涼やかなブルーだった
私が知る彼女は一度とたりもそう言った服を着た記憶がない
ふぅ…とため息をつけカップをソーサに乗せる
雲行きが怪しくなってきた空に視線を向けて義妹のロベリアとの昔を振り返った
ーーーー
「あんたが私のお姉ちゃん?」
初めてロベリアに会ったのは私が10歳で彼女が8歳の時だった
父と愛人の間に生まれたロベリアと名乗る義妹は父と同じサファイアの瞳と恐らく愛人の髪色であろう蜂蜜を溶かしたような金髪が似合う可愛らしい女の子だった
「ふーん、あなた人形みたいね!」
いくら子供とは言え初対面で相手に対して人形みたいね、とは何事か
10歳ながらに淑女教育や、王妃教育を行なっていた私はわずか2歳下のロベリアがあまりにも子供すぎることに驚いたのは懐かしい思い出だ
そんな彼女は義妹とはいいながらも実際はロータス侯爵家の娘としては認められていない
ロータス侯爵家は私の母の実家で父は入婿だ
男性しか爵位を襲名できないために母は侯爵夫人。父が侯爵と名乗ってはいるが実際は母が実権を握り父はあくまでも名前ばかりの侯爵だった
そんな父の私生児であるロベリアは半分は血の繋がりがあるとはいえロータス侯爵家の血は流れていない
必然的に父の実家であるフロックス子爵家の子供になるわけだが、フロックス子爵家は父の兄が跡を継いで長いため、そこに預けるのも気がひけると母に頼み込みロータス侯爵家で過ごすことになったそうだ
義姉、義妹と呼び合ってはいるがロベリアはフロックスの姓を名乗らされている
だからと言うか、彼女とはあまり屋敷では関わらなかったのが現状だった
なにせ母はロベリアをいない者として扱っていたし、私自身は王妃教育で忙しくなにかと屋敷にいないことが多々あり、ロベリアがどう育っていたのかなど把握していなかった
それだけ私もロベリアに対して興味はなかったのだろう
たまたま会えばドレスの裾を持ち上げて庭を走り回る姿や、大きな声で歯を出しながら笑っているところなど、淑女教育を終えていた、私に取って彼女は珍獣と同じ扱いだったのだ
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