そういう時代でございますから

Ruhuna

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私の名前はフロレンティナ・ド・ヴァロワ


花も羨む18歳を迎えた私は夫となるラファエラ・デ・センテーノ様が住まうセンテーノ王国につい先ほど入国致しました


この婚約が結ばれたのが10年前
まだ8歳の私をお母様が手放したくないと仰った為に成人を迎えたこの年でセンテーノ王国へ参った次第でございます



「センテーノ王国は我が国より暖かいのね」
「左様でございます。ヴァロワ公国より南にありますから」


私の乳母であるマルシアが優しい微笑みを向けながら答えてくれます


「ラファエラ様もこの国のように暖かいお方だと嬉しいわ」
「……そうでごさいますね」


マルシアの少し言葉に詰まったような返答に首を傾げながらも私は移り行く美しい花畑を馬車の中から楽しんでおりました




ーー




「よく来たわね!フロレンティナ!」
「叔母さまっ」


白亜の美しい王宮に着いた私を出迎えてくださったのはお母様の姉であり、センテーノ王国王妃殿下のマルグリット叔母さま

私と同じ淡い金の髪に透き通った美しい青色の瞳がやさしく私に笑いかけてくれます

年甲斐もなく叔母さまに抱きつくとやさしく抱きしめ返してくれました
1週間前に泣きながらお別れしたお母様を思い出して目元に少し涙が浮かんでしまいました


「さあフロレンティナ。あなたの部屋に案内しましょう」
「ありがとうございます。ところで…ラファエラ様はどちらに?」


本来であれば叔母さまとともに私を出迎えてくれるはずの婚約者であるラファエラ様の姿がないことに私は首を傾げます


「え、えぇ、ラファエラは少し公務が立て込んでて…後であなたの部屋に挨拶に行かせるわ」
「まあ、お忙しいのであれば私がラファエラ様の元へ向かいますわ」
「いいえ!ラファエラを貴方の元へ行かせるわ」


部屋でゆっくりしていて頂戴。と仰る叔母さまの言葉通り私は、私に宛てがわれた日当たりの良い可愛らしい装飾がされた部屋でゆっくりとしていました



ーー





「失礼するよ」


マルシアの淹れてくれた紅茶を飲み、少し暇を持て余した私は自国から持ってきていた読みかけの本を読んでおりました

そんな静寂が包む部屋の扉が突如として開かれたのは日が傾き始めた時間帯でした


「ラファエラ様?」

扉から無遠慮に入ってきたその方は叔母さまにとてもよく似ていました
一目で私の婚約者であるラファエラ様と分かりながらも念のため疑問形でお声がけしました


「あぁ、ラファエラ・デ・センテーノだ」
「お久しぶりでございます。ヴァロワ公国第一公女のフロレンティナ・ド・ヴァロワでございます」


カーテーシで腰を落として挨拶をする私をラファエラ様がじっと見つめます
婚約が結ばれた10年前に一度お会いしたきりでした
10年前は人形のように可愛らしい容姿をされていたのですが、今や成人した男性そのもの
ドキリと高鳴った鼓動が彼にバレないかハラハラしてしまいます


「あぁ、じゃあ、私は忙しいから」
「ラファエラ様?」
「君の好きなようにして構わないから」
「……??」
「では失礼するよ」
「ラファエラ様…??」


踵を返した彼はそのまま扉から出て行かれました
ぼんやりとする私にマルシアが駆け寄ります


「フロレンティナ様っ」
「マルシア…ラファエラ様はあんなお方だったかしら?」
「…年月はお人柄を変えてしまわれます」


10年前にお会いしたあの時

「君が僕のお嫁さんになるんだね!」

そう無邪気に仰っていた彼の姿はどこにもなかったのです
















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