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私は今日、センテーノ王立学院にきております
視察、ですわ
学院を案内してくださるのは先日お友達になった3人のご令嬢
ドロレス様、ナタリア様とイリス様
和やかに進んでいた空間に暗雲が立ち込めたのは学院の中庭に面した時でした
男女の賑やかな声が聞こえてきたので私はついそちらを見てしまったのです
「………まぁ」
「フロレンティナ様っ」
「大丈夫ですわナタリア様。……あれはラファエラ様と、誰、かしら?」
「エルバ男爵家のご令嬢のベニータ嬢ですわ」
「男爵家の…」
叔母さまから頂いた扇子をパサリと静かに開きます
顔を隠した私の姿を見て3人がそっと私の前に移動されました
さすが高位貴族のご令嬢方ですわ
「マルシア。帰ったらすぐにラファエラ様に言伝を。「お伺いします」と」
「かしこまりました」
「さぁ、皆さん残りの場所を案内してくださるかしら?」
パンっと扇子を閉じた私はニコリと笑顔を浮かべたのです
ーー
「ラファエラ様、エルバ男爵令嬢を愛でるのであれば成婚後にしてくださいませんか?」
学院から帰ってきたその日の夜に私はラファエラ様の執務室へと赴きました
もちろん先触れは出しております
「なぜ、君がベニータのことを知っている?」
「本日、学院にお邪魔させて頂きましたの。そこでお二人の姿を見たものですから」
扇子で顔の半分を隠している私をラファエラ様は訝しげに見つめてきます
それに負けじと私もじろりと視線を返します
「私も器量が狭いわけではありませんから、ラファエラ様がエルバ男爵令嬢を愛でることに異論は唱えませんわ。ですが、婚姻前だというのにあのような…もう少し私のことを考えてくださいませ」
私は昼に見た2人の姿を思い出しました
ベンチで寄り添って、まるで婚約者同士に笑い合うお二人
本当の婚約者同士なら問題はないのでしょうが、貴方の婚約者はこの私
「……君に指図される謂れはないはずだ」
「まあ。愛妾は成婚してから。常識でしてよ?」
私も国を納める父母の元生まれてきたのですから男性がそう言ったことにうつつを抜かすことは存じております
現に、私の父にも公妾と呼ばれる女性がおりましたから
母も思うところはあったようですが上手く関係性を築いておりました
ですから、私もラファエラ様が公妾を持つことに異論はありません。ですが、それはあくまで成婚してからのお話です
「ベニータを愛妾だと言うのか?!」
私の言葉が逆鱗に触れたのでしょうか
突如として大声を上げたラファエラ様に目を大きく開いてしまいました
「愛妾、でしょう?センテーノ王国は一夫一妻なのですから」
近隣諸国含め一夫一妻は当たり前です
どうしても後継者が生まれなかった場合のみ側妃を娶る方もいらっしゃるみたいですが。
まさか成婚前からそんなことを言われるとは思わず、私も驚いてしまいました
「ベニータは私の真実の愛なんだ」
「真実の、愛」
「ヴァロワ公国との取引がなければ私は彼女を正妃にしたいんだ」
ダンっとテーブルに拳を落とした彼を私はじっと見つめます
確かに私とラファエラ様の婚姻には様々な取引が発生しておりますから破談などもってのほかなのです
そこは王太子として流石に自覚はあったようです
「君には悪いが…私の子を産むのはベニータだ」
「…まぁ」
出て行ってくれ、と。言われた私は何も言わずにサッと彼の部屋を後にしました
「フロレンティナ様」
「マルシア。お母様たちにお手紙を書くわ」
「かしこまりました。ご準備いたします」
多くを語らずとも私の意を汲んで動いてくれるマルシアには本当に感謝しています
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