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しおりを挟む「起きなきゃ」
私は今日で25歳の誕生日を迎えた
5年間住み慣れた自室で早朝に目が覚めさまし、慣れた手つきでベットメイキングをしていつも着なれた教師スタイルのドレスに着替えた
ーーー
「おはようございます。殿下」
「おはようシャリー。今日も綺麗だ」
「まあ殿下。朝からよく口が動きますわね」
城の住人たちが動き出し、高貴な身分の方達が起き出すことで城は一気に活性化する
私もその活性化に紛れて主人となる第3王子のフィルナンド・アーストン殿下の元へと馳せ参じた
「冗談ではない。私にとってはシャリーが一番綺麗なんだ」
「殿下に言われても嬉しくありませんわ。私より数倍もお美しい顔をしていますのに」
カウチに座り、むすりとしている殿下に私は苦笑した
フィルナンド殿下と初めてお会いしたのは13歳の頃。
まだ幼さが残るものの国王譲りの野生的なお顔立ちが印象的な美男子だった
そんな彼は今年18歳を迎える
(「図体だけデカくなっちゃって」)
心の中でつぶやいた
王妃様譲りの端正な顔つきと、国王の黒髪赤目を受け継いだ彼は美しい偉丈夫へと成長していた
5年前は私の胸あたりだった上背はグングンと伸びていき、今や私の頭約2つ分ぐらいの差ができてしまっている
フィルナンド殿下は気だるそうに机の上に置かれた釣書をパンっと投げつけた
結婚適齢期を迎えた彼は毎日釣書が届くことに飽き飽きとしていたのだ
「シャリーが結婚してくれたらいいんだ」
「ご冗談を。私はブルジョワ階級ですよ」
「でも元伯爵令嬢だ。元ロックフェラー領は王家管轄だ。私が伯爵となってシャリーと結婚したら全て丸く収まる」
良い案だろ?とニヤリと笑うフィルナンド殿下に私は小さくため息をついた
というのも彼がこの手の話をしだしたのは最近の話ではない
1年前の17歳の誕生日を迎えた頃からこの話を持ちかけてきていたのだ
(「25歳の行き遅れに同情してるのかしら?根は優しいお方だから心配してるのかも…」)
私はまた心の中で小さいため息をついた
ーー
5年前のあの日
初めてお会いしたフィルナンド殿下の第一印象は生意気な餓鬼、もしくは狂犬だった
「なぜ、私がブルジョワ階級の人間から教わなければならないんだ!!」
第一声は5年たった今でも鮮明に記憶されている
鼻息荒くキャンキャンと吠えながら私を部屋から追い出そうとしたフィルナンド殿下に「負けてたまるか!」と謎の対抗意識を芽生えさせて王妃様とエドガー了承の元実力行使にでた
「やめろ!離せ!!」
「やめません。さあ、答案用紙を見せてください!!」
13歳のフィルナンド殿下は20歳の私には流石にまだ力では勝てず、あれよあれよと椅子に縄で縛りつけて大人しくさせた
「……なんですかこの答案用紙は」
「なにって、この間受けたやつだけど」
「……殿下はこれまで王城教師がついていたのですよね?」
「あー…あのジジイたちなら毎回うるさいから追い出してた」
そのテストは母上から監視されてたから逃げ出せなかっただけ、と自慢げに話すフィルナンド殿下に私は頭を抱えた
第3王子ともあろうお方がまさか一般的な義務教育すらも満足に履修していないという現実に衝撃を覚えた
急いで王妃様のところに向かい話を聞くことにした
突然の申し入れを快く引き受けてくれた王妃様は爆弾発言をした
「あの子、勉強嫌いでまともな教育は受けれてないの」
黙っててごめんなさい。てへっと笑う王妃様に対して静かに怒りが込み上げてきたのは許してほしい
もちろんそんな態度は出さず、こめかみに力が入ったがなんとか笑顔を保ちながら部屋を退室した
その日から5年間、心を鬼にしてフィルナンド殿下に自分自身が持てる全ての知識を叩き込んだ
初めは嫌がっていたフィルナンド殿下だったが、褒めて伸びるタイプだったのか、わざとらしくおだてても気を良くして嫌がることなく勉強に熱心に取り組んだ
荒れ果てていた性格も徐々に矯正していって公式の場では敬語も使えるようになった時は私は年甲斐もなく涙を流して喜んだほどだった
照れながらも「シャリーって呼んでもいいか?」と伝えてきた時には危うく鼻血が出るかと危惧したのは恥ずかしい過去だ
世話の焼ける弟のような立ち位置であったフィルナンド殿下からの冗談ではわかっていても求婚してくる姿をみて益々自分が惨めに思えてきた
(「殿下のためにもそろそろ、終わりにしなきゃ…」)
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