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しおりを挟む「本当にどこまでもクズだな」
「フィル様、お言葉が悪いですよ」
「仕方ないだろう。マリーツ卿の事だけじゃ飽き足らず誘拐まで企てるとは…」
救いやのない奴らだ、とため息を吐きながらルフェリ邸に来訪したフィル様の顔には疲れが浮かんでいた
アイシラ様とデルフィーナ様に付けている王家直属の監視員たちが今朝方報告してきた内容に頭を抱えている様子だ
「祝賀会当日はシャリーの代わりに女騎士を馬車に乗せる。シャリーは今から王宮内のローズマリー義姉上のところにいてもらう」
「ローズマリー様のところに?」
「あぁ。話はもう通してある。ドレスも一緒に運ぼう」
フィル様の一声でバタバタと私はローズマリー様のところへ向かうことが決まった
「ラウラ、本当にありがとう」
「いいのよ。また祝賀会で会いましょう」
私の身代わりとして女騎士の1人が祝賀会までは私としてルフェリ邸で過ごすことが決まった
私と同じ亜麻色の長い髪を持ち、背丈も同じくらいの女騎士の方にも「よろしくお願い申し上げます。」と伝えれば彼女は敬礼を向けてくれた
ーーー
「シャーロット」
「ロ、ローズマリー様」
ルフェリ邸を出発した馬車は裏門を通ってすぐに王太子宮へと直行した
馬車から降り、すぐさま開いた扉の中に入り込んだ
そして通された部屋の中にはローズマリー様が待っていた
「ご迷惑をおかけして本当にすみません…」
「構わなくてよ。貴方が義妹になるなんてこんな嬉しいことはないわ!」
楽しみね、とニコニコ笑うローズマリー様になんだか毒気を抜かれた私は促されたソファにそっと腰を下ろした
「ここに来たらもう安心よ。あのおバカさん達も流石に王太子宮までは来ないから」
「ご配慮ありがとうございます。」
「さて、それじゃあ始めましょうか」
「え、なにを…」
ですか?と言い切る前に私の後ろに立っていた2人の女官達が私の腕をがしりと掴んだ
「フィルナンドが婿入りするとはいえ、今はまだ第三王子。その婚約者になる貴方は準王族よ。しっかりとお勉強しましょうね」
「はい…」
王太子妃として有無を言わさない完璧な笑顔を向けられて私は静かにうなだれた
ーーー
「いよいよ明日ね」
「はい。お陰様で苦手なワルツが踊れるようになったのは嬉しいです」
怒涛の教育を終えていよいよ明日は春の祝賀会だ
王国の全貴族が出席する祝賀会で失敗することは許されない
ましてや私はフィル様の婚約者としての初の公の場となる
「外は荒れているみたいよ」
「そう、ですね…元没落貴族の、しかも25歳の私が婚約者になったわけですから」
つい3日前にフィル様は非公式ではあるものの国王陛下に私との婚約承諾を願い出た
国王陛下は驚いた顔をしつつも。「幸せになるんだぞ」と優しい表情で私たちの婚約を承諾してくれた
そして間を開けずに私とフィル様の婚約が王家から発表された
「特に荒れているのは案の定、デルフィーナ嬢とアイシラよ」
はぁ、とため息をつくローズマリー様をみて苦笑する
風の噂で聞いたが、婚約の話を聞いたあの2人はそれはそれは暴れてウン何百万の壺を割ったと聞いた
ローズマリー様お気に入りのローズヒップをコクリと飲む
(「どうか、明日は穏やかに済みますように」)
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