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しおりを挟む「それではお母様を殺したのはやはりイライザだったのですね」
「そういことだ」
「証拠は?」
「事故をおこした馬車は燃やされている。それを操っていた従者も処罰されて行方はわからない。ということになっている」
「シェイド公爵家でも色んなツテを使ったがあちらも尻尾を出さなくてね。だけど『とあるお方達』が協力すると名乗り出てくれたよ」
「とある方達?」
クラウスの一言にメルージュ以外の皆んなが頷く
どうやらメルージュだけが事を知らなかったようだ
仲間外れにされたことでメルージュは少し拗ねた
それを愛おしさに見つめクラウスの顔を見て恥ずかしさが勝ったのか顔を真っ赤にするメルージュを父親たちは微笑ましく眺めていた
「あなた。いらっしゃいましたわ」
「ああ。今からいこう」
シェイド公爵夫人が来客があることを告げにやってきた
ーーー
シェイド公爵家の応接室は調度品も一級品でありながら防音にも優れており会話が外に漏れることは決してない作りであった
「お、王妃陛下に、王女殿下…それに側妃様まで…!!」
「先ほどぶりねメルージュ」
「リリー殿下、先程は義妹がとんだ無礼を…」
「かまわなくてよ」
応接室にいたのは国家権力者である王妃、側妃、王女の3人であった
「さて、では時間もないので本題にはいりましょう」
王妃が口を開いた
「こちらで準備するべく証拠は集め終わりました。いつでも王を引退させることは可能です」
「ご協力ありがとうございます。」
「シェイド公爵。まだ油断はできませんわ。側妃があの時の従者を匿っているとはいえ相手はあのイライザです」
混乱するメルージュをよそに大人達は話を続ける
動揺した視線をメルージュはリリーに向けた
リリーはその視線を浴び、にこりと微笑む
「お母様。メルージュが混乱しておりますので、私たちは私たちでお話ししても?」
「いいわよ。メルージュ嬢には断罪の立役者になっていただかないといけませんもの」
リリーの助け舟もあり、メルージュ、クラウス、リリーの3人は応接室をでてサロンに移動した
「どこから話しましょうか」
「最初から、全てをお教えください」
メルージュの覚悟を決めた瞳をみてリリーは頷き口を開いた
7年前
リリーは父の妹であるイライザが好きではなかった
30も近いというのに嫁にもいかず王城で贅沢三昧な生活をしているイライザを負債だと思うレベルには嫌いだった
そして本人は隠しているつもりなのだろうが彼女の娘もいることは知っていた
その娘の父親が誰かもリリーは薄々感づいていた
父のイライザに対する兄妹愛は度が過ぎていた
妻である王妃や側妃の意見を聞かず聞くのはイライザの声のみ
父のイライザを見る目は妹としではなく異性としてみているその目を見たときは鳥肌が立ったのをリリーは今でも覚えている
そんなイライザは週に1度、必ず父の寝床に来ていた
何をしているのか考えたくもないが必ずイライザが父の寝床に行った次の日の朝は父である国王は理不尽な王命を言うことが多かった
今思えばイライザの我儘を叶えてやっていたのだろう
イライザの我儘がピークに達していた頃
ラランド侯爵の夫人がイライザが乗っていた馬車に轢かれ即死したという悲報がはいった
その頃からリリーの中でイライザと父に対しての評価は地に落ち、王妃である母と父には早めに退位してもらおうとと作戦を考えていた
ラランド夫人には申し訳ないが、今回の事件を種にイライザを凶弾しようとすら考えていた
だがイライザの方が行動は早かった
口封じのためか従者をすぐさま処罰し、証拠隠滅のために馬車は燃やし調査の手が回らないように国王に嘆願していた
腐っても王妹という立場から調査も難航しいつしかその事件は風化していった
そしてその1ヶ月後にイライザがラランド侯爵に嫁ぐことが王命として発表された
その事を聞いた時にリリーは自分の父親を疑った
馬鹿だ馬鹿だとは思っていたがどうやら彼はイライザのためなら何でもする愚王に成り果てていた
リリーの中で唯一残っていた肉親の情が消えた瞬間だった
それは母である王妃と側妃も同様であった
王妃は隣国の公爵令嬢であったが側妃は国内の有力貴族の娘であったため側妃の力を借り、死刑寸前の従者を保護しイライザから守った
表では王に純情な王妃を演じながら裏ではシェイド公爵家と手を組み父王の悪事、横領などの証拠をかき集めた母には今でも頭が上がらない
父王はイライザに贅沢をさせるために国庫にまで手を出していたのだ
リリーはリリーで王位継承者として父に負けないように勉学に励んだ
外交にも積極的に参加し、毎日行われる議会にも顔を出し政治を学んだ
その結果、父王よりも家臣達からの信頼を得られるようになったのは上々な出来だった
そうやってみんなでコツコツと証拠集めをしてようやく王族を凶弾するための手札が揃ったという事だ
応援ありがとうございます!
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