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その2
しおりを挟む現国王夫妻は王族では珍しく恋愛結婚である
恋愛結婚で結ばれた国王夫妻の恋愛は脚色に脚色を重ね、身分違いのロマンスとして国内では語られている
平民達は国王夫妻のロマンスに酔いしれ一時期は身分違いの恋愛を願う者もたくさんいた
だがそれはあくまでも平民達の間で、だった
貴族達は脚色されたロマンスの裏で犠牲にされたレプシウス元公爵令嬢、ヒルデ・レプシウスの存在を知っていた
アデラインと同様に王太子の婚約者の座にいた令嬢、レプシウス公爵家の長女にして現公爵の双子の姉であったヒルデはとても優秀な令嬢であった
社交界の白百合と称されていたヒルデも当時王太子であった現国王の素行の悪さには頭を痛めていたと話していた
王太子でありながら数々の貴婦人、令嬢と浮気をしていたが、相手が貴族であったからこそヒルデは見て見ぬふりをしていた
しかし、そんなヒルデの不安をよそに王太子はとうとう看過できない行動を起こした
元平民上がりの男爵令嬢に熱をあげたのだ
その男爵令嬢こそが現王妃であるのだが、この令嬢がまた厄介者だった
王太子、王太子の側近達の男性を次々と陥落させていったのだ
貴族世界に平民あがりという毛色の異なる存在は貴族世界で生きてきた王太子には興味の湧く存在だったのだろう
ずぶずぶと男爵令嬢にのめり込んだ王太子はとうとうある事件を起こした
それが婚約破棄騒動だ
ヒルデは身に覚えのない罪をでっち上げられあわや国外追放になるかもしれないと言う場面で隣国の当時、第二王子であった現イフォンネ公爵に見初められ隣国に嫁いだ
事件は丸く収まりかけていたが、ロドリグ王国の筆頭公爵家であったレプシウス先代公爵は愛娘を侮辱されたと王室を追及した
賢王と呼ばれていた先代国王はレプシウス公爵家に謝罪、そして次代の王妃には必ずレプシウス公爵家から王妃を出すことを確約させた
「その確約のために私は生まれながらにして王妃になることが決まっておりました。なのでたまたま第一王子として生まれたヨーゼフ殿下と婚約した次第ですわ」
「な…な、なんだと…!そんなの昔の話だろ?!今は関係ないはずだ!」
顔を真っ赤にして囃し立てるヨーゼフの顔を見てアデラインは何度目かのため息をつく
「昔の話ではございません。誓約書の中には先代国王、現国王のサインが施されています」
「馬鹿な!そんなのこうしてやる!」
アデラインが懐から取り出した誓約書をビリビリと破くヨーゼフはしてやったりの顔を見せた
「そんなものコピーに決まってますわ。原本は我が公爵家で保管されてます」
「僕を騙したのか!ふ、不敬だぞ!」
「不敬の意味をご存知でして?……はあ、これでは話が続きませんわ。」
アデラインはさらにため息をつく
そんなアデラインを守るようにエドアルトは動き出した
「ではここからは私が場を取り仕切ろう」
「エドアルト様…」
「アディ、疲れただろう?」
「馬鹿の相手は疲れますわ」
ヨーゼフの後ろにいたエドアルトはアデラインの横に並び立つ
24歳になるエドアルトはヨーゼフよりも身長は高く、前側妃様譲りの美しい黒髪と先代国王様譲りの魅惑的な燕脂の瞳は数々の女性を虜にしてきた
だがその瞳はいつでも厳しく、浮いた話などは一つもない冷徹な大公として有名だった
「まあ、レノー大公があんな優しい瞳を…」
「アデライン様と並ぶと絵になりますわね」
「ええ、アデライン様の美しい銀髪とレノー大公の黒髪が対の様で素敵ですわね」
会場からひそひそと聞こえるのはアデラインとエドアルトを称える声だ
その声が聞こえたヨーゼフは苛立ちを隠せず地団駄を踏んでいた
そんなヨーゼフをエドアルトは冷めた目で見下ろした
「ヨーゼフ。馬鹿な子ほど可愛いとはいうがお前は度が過ぎた」
「叔父上!僕は王太子になる身です!いくら叔父上といえどこれは許されないのでは?!」
「王太子か…お前は本当に世間知らずだ」
「何なんですか!」
アデラインは過去の話で一番大事な部分をヨーゼフに話していなかった
美味しい話は最後に取っておくからこそ美味しいのだ
扇子の下でニヤニヤと笑うアデラインのそんな気持ちを知りながらもエドアルトは目の前にいる甥っ子に最後の情けをかけてあげることにした
「アディが話した内容には抜けている部分がある。
『万が一、次代の王太子となるべくものが不貞、婚約破棄などを行った場合はその者を廃嫡とす。王位継承権は最も王族内で血が濃いし者へとうつる』だ。
意味がわかるか?」
「王太子となるべくもの…僕ですよね?え、廃嫡…なんで…?」
「まあ。無知もここまで来ると恥ずかしいものですわね。わかりやすくご説明してあげますわ。王太子となるべく者はヨーゼフ殿下、不貞、婚約破棄を行った者も殿下、つまり条件を満たしてしまった貴方は廃嫡。王子ではなくなります。」
「ま、待て!では婚約破棄をしなければ良いのだろう?!そしたらアデラインを王妃に、フローラは側妃にする!」
「嫌ですわ。それにロドリグ王国では王妃が身罷られた場合を除き側室を取ることは許可されておりません。」
「ちょ、ちょっと!さっきから廃嫡だなんだ言ってるけど悪いのはアデライン様でしょ?それにヨーゼフ様!私は側室なんて嫌です!王妃が良いです!!」
先ほどから黙っていたフローラが王妃、側室という言葉を聞き口を挟んだ
アデラインはフローラに視線を移した
アデラインからの視線を受けビクッとフローラは体を震わせた
「あなたの愛人はそう申しておりますわよ?残念ながら私と婚約破棄をする時点で貴方は廃嫡。これは決定事項です」
「嘘だ嘘だ嘘だ!!お前は公爵令嬢だろ!なぜ王族である私に指図する!!」
あらあら、そんなに怒っては隣にいるフローラさんが怖がってしまいますわよ?
顔を赤くしたり青くしたり忙しない表情を見せるヨーゼフはとても滑稽だ
さて、そろそろお父様がもう1組この舞台に必要なお方達を連れてきてくれているのでそちらも処理していかねばならない
アデラインは後方から向かってくる国王夫妻に向き直った
「なんの騒ぎだ」
「国王陛下に拝謁いたします。ヨーゼフ殿下より婚約破棄を宣言されました。よって約束通りヨーゼフ殿下の廃嫡。新たなる王太子はエドアルト様となります」
「な、なんだと?!ヨーゼフ!本当に婚約破棄をしたのか?!」
「もちろんです!こんな生意気な女こちらから願い下げです!!」
アデラインの言葉に国王は言葉を失った
なぜなら国王は異母弟であり自分よりもずっと優秀で人望の厚いエドアルトにだけは絶対に王位を継がせたくなかったからだ
「馬鹿者!!お前が王になるにはアデラインとの婚約が必要だというのに…!!」
「王族が臣下である貴族に操られるなどおかしな話なのです!!間違ってるのは父上です!」
「黙れ黙れ!!お前はバカでも余の血を引く唯一の子だというのに!!」
「いたっ!!!」
なぜ私たちは親子喧嘩を見せられているのでしょうか?
国王はあまりの怒りにヨーゼフを平手打ちをした
頬を押さえて倒れ込むヨーゼフは今にも泣き出しそうだ
その光景を見ながらアデラインは一つ疑問に思うことがあった
「国王陛下。ヨーゼフ殿下は貴方の子ではありませんよ?」
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