王妃になるのは決定事項です

Ruhuna

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その3

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私の言葉で会場中の貴族と国王夫妻が固まった



あら、みなさんご存知かと思っておりましたのに。



アデラインはこてんと首を傾げた


「アディ。意外とみんな知らないものだよ。なんせヨーゼフは王妃にそっくりだからね」

「ああ。そうでしたの。では説明して差し上げましょう。」


ねえ、王妃様?と告げれば国王の横にいた王妃の顔は怯えて、顔の色はさっと青くなった


「ど、とういうことだアデライン…?」

「国王陛下は18年間も他人の子を育てていましたのよ?なんて慈悲深いと思っておりましたのに。ご存知なかったのですね。ヨーゼフ殿下は王妃様と浮気相手のロティ宰相とのお子様ですわ。よく見てくださいまし、ヨーゼフ殿下は王妃様にはそっくりですけど国王には似ておりませんでしょう?」


そう話すと会場にいる全ての人の視線がヨーゼフに注いだ

ヨーゼフはこの国ではありふれた金髪碧眼だ
そして王妃も金髪碧眼である
国王陛下は金髪に燕脂の瞳である


ロドリグ王国の王族達は必ず燕脂の瞳を持って生まれる
だからこそヨーゼフが金髪碧眼なのはおかしいことなのだ

だが近年は王族も他国からの血を入れてるために稀に燕脂の瞳を持たない子が生まれてきた子もあって誰しも王妃に似すぎたのだろうと思ったのだ

だがアデライン率いるレプシウス公爵家は知っている

どんなに他国の血を入れようが下位貴族の娘から生まれた子であろうが直系尊属であれば必ず燕脂の瞳を持つ子が産まれるということを

だからこそアデラインは王妃が不貞をしていることがわかったのだ

元より王太子妃時代から夫に隠れてハーレムを作っていた時点で不貞は確実なのだがそこは別の話だ
 
扇子をパチリと閉じた


「残念ながら直系尊属の王族であれば燕脂の瞳が必須です」

「黙りなさい!!そんな証拠もないのに!」


今まで一言も発していなかった王妃がワナワナと震える手を握り締めながら叫んだ

「証拠ならあります。リーリヤ伯爵夫人。ここへ」

「はい。アデライン様。」

「伯爵夫人!!?なぜここに!!」

「私が呼びました。さて、リーリヤ伯爵夫人は王妃様の元侍女長として出仕されておりましたが…王妃がヨーゼフ殿下を身ごもってから暇を出されておりますわ」

間違いないですね?と私が伝えるとリーリヤ夫人は美しいカーテーシをしながら肯定の言葉を口にした

リーリヤ伯爵夫人の登場に王妃はふらふらと倒れそうであった

「私は、王妃様の侍女長として王太子妃時代からお仕えしておりました。なので、ロティ宰相との交流も存じておりました」

「この女は嘘をついてるわ!今すぐここから叩き出して!!」

「お静かに。王妃様。それ以上の言葉は自分の首を締めますわよ?」


にこりと微笑めばヒッと息を呑み王妃は静かになった
リーリヤ伯爵夫人へ次の言葉を促すように視線を向けた

「本来、侍女長とは王妃様の身の回りの世話から国王陛下との閨事情まで事細かく管理しております。ですので、王妃様の月のものが来なくなった時期と国王陛下と行った閨の時期が外れていることに気づいた私は王妃に進言したのです。「まさかロティ宰相との子では?」と」

「そして暇を出されたと?」

「はい。一介の伯爵夫人では異議を唱えることはできません。悔しながらも王宮を退出させて頂きました」


リーリヤ伯爵夫人は独身時代から王宮の家庭教師を行うなど有望かつ信頼がある女性である
そのリーリヤ伯爵夫人が訴えた内容はすぐに貴族達の中でどよめきが起こった

「伯爵夫人が勝手に言ってることだわ!」 

「蛙の子は蛙とは、まさにこのことですわね…王妃様、先程リーリヤ伯爵夫人はなんとおっしゃいましたか?「侍女長は王妃の全て事柄を管理・把握している」のです。王妃様がいつ、どこで、誰と、何をしたのか。事細かに王室行動記録書に記載されております」


王室行動記録書とは王族の行動を事細かく記載するものである
ここに記載されるものは王妃付き侍女長、国王付き侍従長の両2名が確認した、確実に行われた行動が記載されるために嘘の記載はされない
嘘の記載や改竄をした場合は問答無用で死刑となっている


「王妃!余を騙しておったのか?!」

「違いますわ!私はいつでも陛下をお慕いしております…!」

「ではなぜ、余の閨を断るのだ!ヨーゼフが生まれて18年間一度も余の寝室にこないのはロティ宰相と枕を共にしていたからか!」

国王の怒りは完全に王妃へと向かった
国王に怒鳴られている王妃は縮こまり最早反論の余地もなかった

「ええい!貴様はもう王妃でもなんでもない!速攻に王宮を立ち去れ!そしてロティ宰相!貴様も宰相の職を辞してさっさと余の前からいなくなるがよい!」

「「へ、陛下…!!どうかご慈悲を!!」」


名指しされた王妃とロティ宰相は二人揃って陛下の足元に縋りついた
その光景がさらに国王の逆鱗に触れているとも知らず哀れに情けを乞う姿は滑稽だ


アデラインは思い出したように王妃に声をかけた


「あぁ。ヒルデ叔母様からの伝言ですわ。『因果応報。ご苦労様』と」

項垂れていた王妃はパッと顔をあげアデラインの言葉を聞くな否や美しい顔を歪ませ力の限り叫んだ

「~~~ッッッ!!!あのクソ女!!また私の邪魔を!!!あのクソ女とお前もぶっ殺してやる!!離しなさい!!私は王妃よ!!あの女共々殺してやるわ!!」


無様にも髪を乱して暴れ狂う王妃を衛兵が押さえ込みズルズルと引きづっていった
宰相も首を垂れながら衛兵に連れて行かれた
国王は怒り顔で連れて行かれる2人を見ていた
学生時代からの悪友であったロティ元宰相からの裏切りはこたえたのだろう


ちなみにロティ元宰相と元王妃は学生時代からの付き合いで国王に隠れて刺激的な恋を楽しんでいた二人だ
ロティ元宰相はヒルデ叔母様を蹴落とそうと元王妃に力を貸していたため元王妃同様問答無用で粛清対象だった


「国王、いや、兄上。元王妃の所業によりヨーゼフは王族でもなんでもありません。」

「あ、ああ。ヨーゼフは廃嫡だ。どこへなりといくが良い」

「父上?!」

「余はお前の父ではない!」


国王からそう言われヨーゼフ殿下改めてヨーゼフは呆然としていた
18年間王子として生きてきた彼には事実が受け入れられないのだろう
私はそっとヨーゼフとフローラの近くに足を向けた


「王子でもなんでもない貴方には価値がありませんね」

「ば、バカにするな!!」

「まあまあ。騒がしい。廃嫡されて王族の血も流れてないあなたは何なのでしょうか?」

「………」

「ふふ。せめてもの情けです。これをあげましょう」


アデラインは懐から金貨を5枚出した
金貨1枚で平民の1年分の生活費にはなる
それを5枚渡すのは破格の情けだった


「……バカにするな!!!」
「きゃっ」
「僕は王子だ!!そうだろフローラ?!」
 

アデラインの手に乗せられた金貨を投げつけヨーゼフはフローラに詰め寄った
いつでもヨーゼフの自尊心を高めさせてくれる言葉を放つフローラにヨーゼフは依存していたのだ
だからいつも通り「ええ。殿下は王子様です!」と無邪気に笑いながら伝えてくれるフローラをヨーゼフは期待してフローラの肩を掴んだ


「はあ?気持ち悪い手で触らないで」

「フローラ…?」

いつも無邪気な笑顔を向けてくれるフローラの瞳はヨーゼフをゴミクズを見るような目つきで見ていた
その視線に気圧され、ヨーゼフは1.2歩後退した


「はぁ…お嬢様。もうよろしいでしょうか?」

「今までありがとうフローラ。元に戻って大丈夫よ」

「やっと解放されるのですね!お嬢様の頼みとはいえ1年間お側を離れるのは悲しかったです!」

「さすが私の侍女ね。素晴らしい演技でしたわ!」


フローラはヨーゼフの横をすり抜けアデラインの下へ向かった
その姿を歯車人形のようにぎこちない動作でヨーゼフは振り返った


「どういうことなんだ…」

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