王妃になるのは決定事項です

Ruhuna

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その4

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ヨーゼフ視点




「はあ?気持ち悪い手で触らないで」


「フローラ…?」


いつも無邪気に笑う彼女が好きだった
幼い頃からの完璧でスキのない婚約者より笑顔でずっとそばにいてくれるフローラが好きだった


だがその彼女は今、僕が嫌いだった婚約者、いや、元婚約者のアデラインにその笑顔を向けている


「どういうことなんだ…」


言葉がぽつりと溢れた


「騙されていたんですよ」


「バレリオ…」



「はぁ、これで私の負けだ。アデライン!賭けは君の勝ちだ!レプシウス公爵家はエドアルト大公殿下を後押ししよう」


「ありがとうございますお兄様!」


僕の肩にポンと手を置いた後アデラインにそう話しかけたのはバレリオ・レプシウス
アデラインの双子の兄にして時期公爵
若いながらもその敏腕は有名で将来は国王の側近として有望視されている人物だった


「バレリオ、ぼ、僕にわかるように説明してくれ!」

「はあ…殿下、いやヨーゼフ。君はアデラインにはめられたんだよ」

「はめられた?」

「アデラインは君と婚約破棄したくて信頼の厚い侍女に君を誘惑するように指示したんだよ」

「それがフローラだったのか…?」

「ご名答。頭の弱い君はまんまと妹の策略にハマって婚約破棄、それから廃嫡。」


こうも簡単に丸め込まれるなんて計算ミスだった。とバレリオは呟く
僕はそれをどこか他人事のように聞いていた
頭の中は靄がかかったように何も考えられなかった
重たい頭をアデラインに向けたらいつもと変わらずにこりと妖艶に微笑む彼女の顔を見て確信する


僕は最初から彼女の掌の上で踊らされていたんだ…と


膝から力が抜けてがくりとその場に座り込む
バレリオがドンマイドンマイと声をかけてくるがその声にも反応できなかった


だが最後だけアデラインに聞きたいことがあった


「君は、僕のことが好きだったんだろ…?」



その言葉にハッと驚くほどアデラインの顔を見て一筋の光が見えた気がした 
先ほどまで力がなかった膝に力を入れて立ち上がりフラフラとアデラインに近く



この時にはもう僕は壊れていたのだろう



彼女は僕のことが好きだからわざとこうするんだとーーー




「私、一度もヨーゼフ様のことを好きになったことなどありませんわ。」

「………え?」


アデラインのその言葉に立ち止まる
アデラインの前にさっと出てきたフローラが顔を歪めていた


「貴方のどこに好きになる要素がありまして?頭も悪い、ナルシスト、それに直系尊属ならまだしも王族ですらない庶子と婚約されていたお嬢様が可哀想でしたわ!お嬢様は貴方と違って王族の血を引く高貴なるお方。近づくことすらも烏滸がましいのに「僕を好きだった?」寝言も大概にしなさい!!」


「アデラインが王族の血を引く?」

「ほんっとに理解力がないのですわね!お嬢様の高祖母様は元王女様です。それにお嬢様のこの美しい紫紺の瞳!燕脂と碧が混じったこの美しい紫紺こそ王族の血を引く確固たる証拠です!」


ドトンと効果音がつくように意気揚々と話すフローラは僕が今まで見てきた可憐な姿とは程遠く自信に満ち溢れた女傑のような姿だった


「フローラ、やめて頂戴。なんだか恥ずかしいわ」
「いいえお嬢様!お嬢様の温情があって王太子という不相応な身分に一時的に入れたことを感謝すべきですのに!」
「そこまで間にしてやってくれフローラ嬢。…ヨーゼフはもう反論する気もないだろうから」


叔父上、いや、レノー大公の言う通り僕はもう何も言い返せなかった

頭の悪い僕ですらわかってしまった


王族の血を引かない僕が王太子として居れた理由
王家と公爵家の取り決めもあるだろうが、アデラインがもつ王族の血があったからこそ僕は無様にも王太子としていれたのだと、



その彼女から見放された今、僕の存在価値はない
愛するフローラにも騙され、会場にいる貴族たちからの視線は痛いものだった


「アデライン」

「はい」






「今まですまなかった」






「…………北の離宮を整えております」




「あぁ、ありがとう」





北の離宮は王都から遠く離れた寒さ厳しい土地だ
そこに送られると言うことは命までは取らないと言うことだ
大人しく過ごしておけば命と生活は保証される
言外にそういうアデラインはやはり優しい



僕は自分の足で立ち上がり衛兵と共に会場を後にした


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