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しおりを挟むマリーズ視点
「エミリエンヌに余計なことを言うなよ」
「まあ、私を疑ってますの?ここまでお膳立てしたのは私ですのに」
従兄弟にあたるアルフレッド・ラバールお兄様を見送るために馬車の置かれている場所までついてきた私にお兄様がそう言い放つ
腰まで伸びた自慢の髪を指でくるくると弄る
「それに関しては感謝している。が、今回の泊まりの件は予定外だ」
「まあまあ!婚約もしていないのに手を出しているお兄様には言われたくありませんわ」
「………なぜ気づいた」
「侍女からの報告です。随分とご執心ではありませんか」
サッと扇子を出して口元を隠しながらも視線は彼を責めるように細める
珍しく焦り気味のお兄様を見てニヤリと笑うが、すぐに口元を引き締める
「マリーズ」
「わかってますわ。少し遊びすぎましたわね。では、お兄様、ごきげんよう」
門を通り過ぎる馬車を見送り部屋へと戻った
「マリーズ様っ、アルフレッド様は…」
「お兄様は急ぎの用があるみたいで出られましたわ。エミリエンヌ様によろしく、と仰ってましたわ」
湯浴みを終えた彼女、エミリエンヌ・シェロン(元)が私の言葉を聞きほっとした表情を浮かべる
私はその笑顔を見て、安堵した
「それにしてもエミリエンヌ様は本当に若々しくて美しいですわね」
31歳には見えない彼女の頭から爪先までを見つめる
お兄様から渡されていた彼女のためのオーダードレスは驚くほどに彼女を美しく引き立てている
ドレスの色は紫水色
彼の執着ぶりに呆れながらも彼女にストールを渡す
「初夏とはいえ家の中はまだ冷えますわ」
これを使ってくださいな。と手渡せば彼女はありがとうございまいす。と受け取った
ドレスの隙間から見える背部に散らされた花弁を隠すにはちょうど良いだろう
「今日は楽しみましょうね!」
パンっと手を叩いてそう話す私に彼女は一瞬目を開きながらもニコリと笑った
ーー
「おやすみなさい」
「ええ、おやすみ」
ディナーを終えて食後のお茶を楽しみながら私と彼女はそれぞれの部屋へと戻った
部屋に戻り、私は車椅子から立ち上がる
スタスタと歩いて窓から空を眺める
ふぅ、と淑女らしかぬ声を漏らす
足取り軽く机に向かい引き出しを引きながら中に置いている一つの本を取り出す
そこには私が物心つく頃から書き記しているこの世界の出来事だ
そう、私は転生者。と呼ばれるものだ
しかもこの世界の作者だった人間だ
それに気づいたのが5歳の時
ありきたりな、転んで頭をぶつけたら思い出したと言うもの
それから私はこの世界をどうするか悩んだ
物語でいけば私は悪役令嬢だ
だけど、断罪はそんなに酷いものではなく、修道女行き程度
元々前世が平民の私には修道院の生活も悪いものではない
物語通り過ごすか、そう決めた私はイジメなどの行為はせずに普通に生活した
その生活を変えようと決心したのはヒロインの登場
私が設定していたはずの彼女の性格とは真逆な性格に最初は驚き、そして絶望した
彼女も転生者と言うことはいじめをしていない私に冤罪を着せてくる可能性が高いからと思ったからだ
その予想は見事に的中
彼女は恐ろしいほどにシナリオ取りに動き、思い通りに行かないとギャーギャー騒ぐ
私の存在で普通の感性で成長していた婚約者の王太子たちはそんな彼女のことをバケモノを見るような目で見ていたのが救いだったかもしれない
そして私は彼女を退治することに決めた
ヒロインざまぁというやつだ
結果的には彼女は頭があまり強い方ではなかったのか簡単にざまあされてくれた
「シャロン嬢は母親似なのだろうか?」
その言葉を私に投げかけてきたのが従兄弟のアルフレッドお兄様だった
彼の設定はヒロインのお助け役
ヒロインの可憐な見た目に惹かれた彼ではあるが、歳の差を考えてヒロインを助ける役に収まる。という設定で作られた彼は案の定、ヒロインの見た目には惹かれたらしい
しかし、化物のような性格をした彼女に引いているのは事実だ
そんな時にヒロインの父親が逮捕されると言う情報が入った
その情報を聞いた彼はどうやらヒロインの母親、と言う存在を思い出したみたいだった
「ええ。お母様にそっくりだそうですよ」
私のその言葉を聞いてからの動きは私の目を見張るほどの速さだった
元々ヒロインだけではなく男爵のこともあったので男爵夫人だった彼女にはきてもらう必要があった
だがその役目は国の役人が行うはずだった
その役目をお兄様は見事にもぎ取って男爵夫人のまつシェロン男爵領へと旅立った
結果的には彼女はお兄様のお眼鏡にかなったみたいだ
まさかの彼女を王都にすぐ連れてきたのにも驚いたが、侯爵家に泊まらせているのも驚きだった
あれ?こんな性格にキャラデザしたっけな?と思ったのはここだけの話だ
そしてお兄様に持ちかけられた提案は彼女をお兄様の婚約者、そして侯爵夫人にすること
(「まったく。公爵令嬢じゃなかったらそんなことできなかったわよ」)
感謝してほしいわ、と呟いた声が広い部屋に広がる
今日のディナーで食卓を囲んだ彼女の人柄を父と母は気に入っていた
きっとすぐにお兄様の希望通りに物語は進むだろう
これからの結末を考えながら、私はふかふかのベッドに飛び込みいそいそとシーツの中に埋もれる
「結局私がお助け役ね」
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