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しおりを挟む「エミリエンヌ。少しお時間を頂いても良いですか?」
「ええ。かまいませんわ」
彼の婚約者として無事にデビューした私は穏やかな日々を過ごしている
両親は結婚式の準備があるからと、2週間前に領地に帰っている
両親が領地に帰ったその日の夜からアルフレッド様が私の寝室へと来るようになった
最初は断っていた私だったが、彼に触れられると一気に熱を持つ体を鎮めることが自分ではできず、結局彼に身を任せてしまう
口では嫌だ嫌だ、と言っている私だが、体は正直で、すでに彼に堕ちている
でもそれを認めたくなくて、私は頑なに彼からのアプローチを拒んでいた
そんな私を見て何を思ったのか、よく晴れた日に彼から散歩に誘われた
ラバール侯爵家の庭は王都でも有名な庭園だ
前侯爵夫人が力を入れていたの庭は今でも庭師のおかげで綺麗に花が咲いている
「暑くはないですか?」
「はい。大丈夫です」
薔薇のアーチを通り抜けて四阿に行き着いた私たちは静かにそこに腰を下ろした
ふぅと息を吐く私の指を握りながら彼が口を開いた
「エミリエンヌ。すみません」
「……何に対する謝罪でしょうか?」
「……勝手に貴女に触れていたことと、婚約を急いだことです」
「一応、悪いとは思っていたのですね」
苦笑する私に申し訳なさそうに眉を顰める彼
とても今更だが彼は私に謝罪をしたいようだ
「正直、私の知らない所で勝手に体に触れられていたのは許せないです。ですが…貴女に触れられることが嫌ではない私もいるのです」
「エミリエンヌ…」
「アルフレッド様。私は貴女に沢山助けられました。ジョアンナのことも、マシューのことも。感謝こそすれ、恨みなどは一切ありません。」
私の思っていることを彼に話した
私が怒っていない、と判断したのか彼はどんどんと表情が明るくなる
「ですが!事を性急的に進めすぎです!私の気持ちが追いつきません!」
「そこに関しては本当にすみません…早く、貴女を私のものにしないと、と焦っていたのです」
叱られた子犬のようにシュンッと落ち込む彼がぽつりとぽつりと話し始めた
ーー
「では、最初に会った時から私のことを…?」
「はい。一目惚れ、なんて恥ずかしいですが、貴女を見て私の妻にしたいと強く願ったのです。」
無理やり感はありましたが…と言葉を濁す彼に私は苦笑する
確かに色々と無理矢理感はあったが、私が被害を受けたことは一つもない
むしろ、助けてもらったことばかりだった
「アルフレッド様。私31歳になりますわ」
「年齢など関係ありません。」
「子供も望めないかもしれません」
「その時は2人で生きていけば良いのです」
「私、存外嫉妬深いのですよ?」
「貴女以外眼中にありません」
「…私のことどう思っておりますか?」
「愛しています。私の妻になってください」
はしたなくも、私はその言葉を聞いて勢いよく彼に飛び込んだ
私よりも逞しく、大きな体で包み込んでくれる存在をわたしは受け入れることにしたのだ。
ーー
「今日も美しくて可愛いね、私のエミリエンヌ」
「……ありがとうございます」
「ラバール侯爵夫妻は本当に仲が良くて羨ましいですわ」
「本当に。ご夫婦とも美男美女で目の保養ですわ」
アルカイクスマイルで並ぶ貴婦人たちの言葉に同じようにアルカイクスマイルで返す
表情とは裏腹に心の中で大きくため息が漏れる
私が一生踏み入れるはずがないと思っていたこの世界
上流階級の人々が集う息が詰まるこの煌びやかな世界には慣れない
表面上では好意的に接してくれる人たちも心の内は何を思っているかはわからない
実際、何人かの御令嬢には「この年増がアルフレッド様を解放しないさよ!」と私からしたら至極真っ当なことを言われたことも多々ある
しかし、そのたびにアルフレッド様が間に入ってくれたり、落ち込む私を慰めてくれたりとしているので、私はなんとかこの世界で潰れることなく立っている
三十路の私にいつの間にか、年下夫が出来ました。
fin.
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