異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

文字の大きさ
61 / 185

47「僕がやるんです」

しおりを挟む

 ちょっともう無理っぽいです。
 ここから挽回できる手立てが思いつきません。

 ロップス殿には悪いですが、ここにタロウ達がいない事が唯一の救いですね。

 タロウ、プックル、ロボの事を頼みましたよ。


 タロウの胸元・・・・・・・に入れた、ロボの事を。


 今頃はマエンの長の所へ辿り着いたでしょうか。
 ロボの熱はどうだったでしょうか。
 この先、僕とロップス殿がいなくても、無事にファネル様の下へ辿り着けるでしょうか。

 この世界を守れるでしょうか。









 僕は何を寝惚けているんですか。

 辿り着ける訳がありません。

 守れる筈がありません。

 僕がやるんです。

 僕が、この世界とロボを、守らなくて誰が守ると言うんですか。

「まだ遊んでくれるのかぁ?」
「……ちょっとだけ待って下さいね」

 一緒に吹き飛ばされた大剣も手元にあります。
 僕はまだ戦える。
 手足に力を込めて、大剣を杖代わりに立ち上がります。

「良いかぁ?」
「もうちょっとだけ」

 左手をナギーさんに向けて少しだけ時間を貰います。
 ポケットの中から、タロウに少し分けて貰ったリコの実を取り出し、全て口に放り込みます。

「……うぅぅ、酸っぱい」

 マナツメよりも魔力の回復が若干大きいようです。
 僅かに回復した魔力を使い、勝手に全身から薄っすらと煙を上げ、傷を癒していきます。

「お待たせしました。行きます」
 全力でナギーさん目掛けて突っ込みます。

「はは、そうこなくっちゃぁ」
 ナギーさんから連続して撃たれる魔術の矢。
 致命の一撃以外、全て無視です。

 肩を穿たれても、脚を穿たれても、止まりません。
 全力で突っ込みます。もう少し。もう少しで届きます。

「怖いなぁ。じゃぁさ、これならどうかなぁ」

 血を吐きながらも四つん這いで立ち上がろうとするロップス殿に指先を向けるナギー。
 指先から放たれた魔術の矢が、ロップス殿目掛けて飛んで行きます。

「……クソがぁ!」

 横っ飛びに飛んで、体を伸ばし、腕を伸ばし、大剣を盾にギリギリ弾けましたが、僕とした事がつい汚く喋ってしまいましたね。

「ぐふぅっ」

 全身を伸ばしたせいで、無防備になったお腹を撃ち抜かれ、再度地に叩きつけられました。
 天を仰ぐように仰向けです。

 ちょっともう、立てそうにないです。

「ナギーの勝ち! 魔獣を使うゲームとしては反則だけど、勝てば良いのよ、勝てば! ははは!」



 ……なんでしょうか。


 二回目に叩きつけられた時にメガネが飛んでいったので、はっきりとは見えませんが、上空を何かが飛んでいます。

 青白い……、なんでしょう、棒状の何か……

 勝ち名乗りを上げるナギーさん、どうやら気付いていませんね。
 棒状の何かが、ちょうど僕らの真上で点状に変化しました。

「ヴァン、トカゲ男、二人とも充分に楽しませて貰ったよ。では、さ――」

 ヒュ…………ドン。

「らば!」

 ……………………

 なんでしょう。

 ナギーさんの頭と胸から、青白い棒が生えています。

 正確に表現しましょうか。

 頭に刺さった青白い棒が、ナギーさんを貫いて胸から飛び出し、そのまま地面に突き刺さりました。

 え?
 なんですか? これ。




「当たったっすよ! ね、見て見て! プックル! 当たったっすよ!」
『タロウ、完璧、ヨクヤッタ』
「だっしょー! もっと褒めて!」

 森の方から賑やかな声が聞こえます。

「ヴァンさん! ロップスさん! 大丈夫っすか!」

 プックルに乗ったタロウが森を飛び出してきました。


 そうですか、トドメはタロウですか。
 そういえば少しだけ魔力を分けていました。
 美味しい所を持ってかれましたか。

「うっわ、狙ったんすけどね、もちろん。でもこんな、いや、こんな、ねぇ。こんなガッツリ刺さるとは……、ナンマンダブナンマンダブ……」

 なんまんだぶ? なんでしょうね。

「二人ともズタボロじゃないっすか!」
「……そんな事は良いんです。ロボはどうなんですか!?」

 少し沈黙。

「タロウ? ロボに何かありましたか?」

「ロボの熱なんすけどね、言いにくいんすけど、あれ……」


 ちょっと、辞めて下さいよ。変な間を取らないで下さい。

「成長痛の一種っす! 放っといても治るっす!」

 長めの沈黙。

「タロウ、どういう事か、分かるように説明しろ」
 胸を押さえ、脚を引きずりながら近付いてきたロップス殿が尋ねます。

「いや、マエンの長が言うには、急激な成長をするタイプの魔獣には良くあるらしいっす」
「霊獣も?」
「霊獣の事は知らないらしいっす。けど、リコの実、あの酸っぱい木の実っす、あれ食べて熱が落ち着いたから間違いないらしいっす」

 ……そうですか。

 僕らは特効薬を長靴一杯分も持ってたんですね。


 ま、とにかく、ロボが無事ならそれで良いです。



 タロウが、うんしょうんしょと、僕とロップス殿をプックルの背に押し上げてくれました。
 メガネもタロウが探して来てくれました。幸いレンズも無事です。

「ロボの所まで! ゴーっす!」

 後ろでドサっと音がして振り返って見ます。
 タロウの飛ばした青白い棒が霧散して、支えの無くなったナギーさんが地に落ちた音でした。

 少し茫然と眺めていましたが、ナギーさんの衣服も、体も、ボフッと音を立てて砂のようになってしまい、そのまま風に吹かれてしまいました。

 後には何も残っていませ、ん? 何か小さな針? の様なものが地面に突き刺さっています。

「おぉ! 大活躍した吹き矢の針ちゃんっす! 回収回収!」

 仲良くなった腐ってないマエンに貰った吹き矢ですか?

「そういえばタロウ、貴方の放った魔法で助かりました。ありがとうございます」
「いやいやいや! 今回たまたま上手くいっただけっすから! いっつもヴァンさんやロップスさんに助けて貰ってっすから!」

 謙虚な気持ちも大切ですね。

「久しぶりにタロウの魔力が混ざっていましたね」
「そうなんすよ! 今回は目で追えたっすから青白いの見たっす! あれってヴァンさんの魔力に俺のが混ざった色なんすよね?」
「ええ、以前、魔力循環で混ざった時よりも青が濃かった様に思いましたよ」

 以前のは僕の白が強かったですが、今回は渡した魔力が少なかったからか、タロウの魔力が多かったからか、青が強いように思いました。

「それにしてもアレ、吹き矢に魔力を籠めたんですか?」
「そうっす! 遠かったし、普通に風の刃飛ばしても当たんないと思ったんす!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...