62 / 185
48「一緒に横を」
しおりを挟むプックルの背に乗せて頂いて楽させて貰っています。
「ヴァンさんもロップスさんもボロボロっすね」
いや本当にボロボロですね。
ロップス殿の胸の穴も、癒しの魔法を使ったとは言え、表面の穴が閉じているだけですし、僕も体中が穴だらけです。
吸血鬼の能力による回復も、魔力が足らないせいで、煙が完全に止まったままです。
「ロボは本当に無事なんですか?」
「長の所を離れる時には、熱も下がり始めてスヤスヤ眠ってたっすけど、じきに目を覚ますらしっす」
早く会いたいですね。
プックルの背で揺られて森を進みます。
こちらから広場へ戻る向きでも分かりにくくなっています。プックルは自信満々に進んでいますが、迷子になりはしないでしょうか。
『着イタ』
ちゃんと広場に戻って来られました。プックル、疑ってすみません。
『ヴァン殿! 心配かけたでござる!』
ロボが元気いっぱいに駆け寄ってきました。
良かった、本当に元気そうです。
プックルから降りて、僕も駆け寄りたいですが、ちょっと走れません。両手を広げてロボを迎えます。
あ、あれ?
遠近感がおかしいですね。
激しい戦いだったからメガネがおかしくなったでしょうか?
『ヴァン殿!』
ロボが僕の胸を目掛けて飛びました。
は、迫力が……
ガシッと受け止め…………、受け止め切れませんでした。
ズンっという重い衝撃を受けて、踏み止まれずに仰向けに倒れてしまいました。
『ヴァン殿! ヴァン殿! 会いたかったでござる!』
ペロペロと僕の顔を舐め回すロボ。もう既に顔がベットベトです。
「ちょ、ちょっと! ロボ! ちょっと待って下さい!」
『は! すまんでござる! 大丈夫でござるか!?』
タロウの手を借りて立ち上がり、すまなそうにチョコンと座るロボへ顔を向けます。
「ロボ、すっかり元気そうで良かったです。しかし、貴女、大きくなってませんか?」
『え? そんな事ないと思うでござるが……』
四本足で立ち上がって、自分の尾を、足を、クルクル回って眺め回すロボ。
『デカくなってるでござる!』
気付いてませんでしたか。
四本足で立った状態で、これまでは僕の膝くらいまでだったのが、今は股下くらいあります。
二本足で立てば、僕の首くらいまではあるでしょうか。
ブラムの石がついたベルトは、留め具を受ける穴が開いてしまってぶら下がってるだけになっています。危うく絞め殺してしまう所でした。ゾッとしますね。
『ついさっき目を覚ましたところじゃよ』
マエンの長が教えてくれました。
「成長期って、そんな突然に成長するんですか?」
『魔獣にはそういう連中もいるな』
そういうものですか。
『これならすぐにでもヴァン殿のお嫁さんになれるでござる!』
それはまだ保留ですよ。
しかし、はっきり言って美しい。
しなやかな体付きに、美しい白の毛並み。ロボの愛くるしさはそのままに、気品溢れる姿です。
「ヴァンさんヴァンさん、何見惚れてるんすか」
……はっ、僕とした事がぼんやり見惚れていました。
『自分でも分かるでござる。今までとは比べ物にならない精霊力を感じるでござるよ。これならもう足を引っ張らなくてすむでござる!』
そうかも知れません。
もう胸元に入れては動けませんが、頼もしいですね。
『あ、こんなに大きいとヴァン殿の胸には入れんでござる』
ロボも気付いた様でしょんぼりしています。
「ロボ、胸には入れませんが、一緒に横を歩ける様になりましたよ。これからは僕と一緒に歩いてくれますか?」
『そっ、それ! そ、それは勿論でござる! こちらこそよろしくでござるよ! ……ま、まさかヴァン殿が早くも……、それがし、嬉しいでござる!』
あれ? そんなに喜ぶこと言いましたか?
「ヴァンさんヴァンさん、それ、プロポーズに聞こえなくもないっす」
え? 本当ですか?
…………ホントですね。
聞こえなくもない内容でしたね。
ま、まぁ、何も明言はしていません。あえて水を差す事もないでしょう。
タロウとロップス殿がコソコソと何か言っていますが、あえて無視です。
首のベルトを外し、穴を変えて巻き直します。
『ヴァン殿……』
「マエンの長殿、ありがとうございました」
『なに、我は何もしておらんよ。リコの実を与えただけじゃ』
「それでも十分に助かりました。ありがとうございます」
『良い良い。お主らは腐ったマエン供を一掃してくれた。さらに翼をもった輩までな。十分すぎる見返りじゃ』
ター村長に負けず劣らずの素晴らしい長ですね。
『しばらくはこの森で休んで行かれよ。どちらにしても、その体では動けんじゃろうが』
お言葉に甘えて休ませて頂きましょう。僕の魔力は一晩でほぼ回復しますが、怪我の治療に魔力を取られますから丸三日。
さらにロップス殿の治療も同時に行う必要がありますから、四、五日は滞在させて頂きましょうか。
「すみません、しばらくご厄介になります」
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる