異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

文字の大きさ
77 / 185

59「助っ人」

しおりを挟む

 おはようございます。
 ヴァンです。

 シュタイナー村までお詣りに来る信者用のベッドがあるという事で、昨夜はランド神父の教会に泊めて頂きました。

「おはようヴァン殿」
「ああ村長、早いですね」

 教会の広間に行くと、村長を始め、矢に射られた男性みんなが詰めていました。

「いつ起きるか分からんからな。数人は起きたが、いまいち状況が分からん様だわ」

 その後、それぞれ起き出してきた村人たちにふんわりと説明しつつ、怪我などがないか確認しました。あまり細かく説明して、虫の恐怖を思い起こさせても困りますからね。

 幸いに擦り傷程度の怪我しかなく、気持ちの方も割りと落ち着いているようです。安心しました。

「錯乱状態の人はいないようですね」
「ああ、安心したよ」

 昼食はまたしても、レシピを教える意味でハヤシライスです。
 難しい料理でもないですし、女性陣はさすがに普段から料理されているので簡単に覚えてくれました。

 ロップス殿もプックルもロボも、みんな気に入ってくれたようですね。タロウは二日続けて何度もおかわりしていました。

「ところでヴァン殿達はどこへ向かっているんです?」
 昼食後、ランド神父に尋ねられました。

「ファネル様の下へ向かわなければならないんですが、とりあえずはガゼル様が次の目的地です」
「そうなると、ガゼルの街まで七日程ですね」
「ええ」

 シュタイナー村から北へ向かって山を下り、そこから北東方向へ四日ほど登ればガゼルの街、この世界で最東端の街です。

「ランド神父はガゼルの街のご出身でしたね」
「ええ、先祖代々ガゼルで教会の神父です」
「あれ? ねぇヴァンさん、ガゼルの街の教会ってどこかで聞かなかったっすか?」

 そう言えば、マエンの森の長が、ガゼルの街の教会に住んでいたと仰っておられましたね。

「むかし猿住んでなかったっすか?」
「猿、ですか? 私が住んでいた頃はいませんね。父や祖父の代にも居なかったと思いますが。それが何か?」
「ロッコ村の北の森で、物凄く賢い老マエンと出会ったんですよ。そのマエンが昔、ガゼルの街の教会に住んでいたと」

「ほう、マエンが。襲われなかったんですか?」
「それはもう、とても理知的な方でした。助けて頂いたぐらいですよ」
「そうですか、魔獣にも色々いるんですな」

 最初も襲われたというより警戒されただけです。本当にお世話になりましたね。

「私は知りませんが、父や祖父なら知っているかも知れません。ガゼルの街に教会は一つしかありません、着いたら寄ってみて下さい」

 明き神や昏き世界の者どもについて何か分かるかも知れません。

「はい、寄らせて頂きます」

 もう一泊泊めて頂き、明朝の出発としました。



「また寄ってくれ。その時には旨いハヤシライスをご馳走するよ」
 村長の横の奥さんが、村長のお尻に手を回しました。
「痛っ! ……女房がご馳走するからよ」

 つねられた様です。仲の良いご夫婦で羨ましいです。
 ソッと僕の隣で体を寄せるロボ。ロボも羨ましかったようですね。

「左腕は無くなっちまったが、命があっただけめっけもんだ。本当に世話になった。ヴァン殿、タロウ殿、ありがとうな」
「え? 俺っすか? 俺、寝て起きてハヤシライス食っただけっすけど?」
「……有翼人を倒したのはタロウ殿だって、ヴァン殿が……」

 少し沈黙。

「……ああ、俺倒したっす! ハヤシライスのせいで忘れてたっす!」

 タロウらしいですけどね。


 シュタイナー村の皆さんに見送られて出発です。

「ヴァンさん、またハヤシライス作って欲しいっす!」
「機会があればね」
「それにしても、ヴァンさんに弱点があるとは思わなかったっす!」

 弱点? 何のことですか?

「あれ? 脚の多い虫嫌いだったんじゃ?」
「大っ嫌いです! 思い出ささないでくださいよ! そんな事言ってタロウは平気なんですか?」
「いや、得意じゃないっす」
「私も得意じゃない」
『それがしは平気でござるが』
『プックルモ、平気』

 統計が取れました。
 男女の差です!



 シュタイナー村を離れて三日が経ちました。
 今日までは下りでしたが、明日からは登りです。ここはシュタイナー村から明き神のわす山頂へのルートでは最も標高が低く、鬱蒼とした森が広がっています。

 夕方早目に野営を始め、ロップス殿とプックルには、また食材調達に出て頂いています。この森で確保できなければ、ガゼルの街まで手持ちの食料だけとなります。
 森を抜ければ、岩だらけの荒れた道のりを登りますので、普通の獣どころか魔獣さえもそうそう出会でくわす事はないでしょう。

「ヴァンさん質問!」
「はい、タロウくん」
「じゃあ、同じ種類の魔獣は、一種類の同じ魔法しか使わんのっすか?」

 タロウとロボはお勉強です。

「種族による固有の魔法というものが確かにあります。先日のマチョは牙を魔法で伸ばしましたが、あれはマチョ固有の魔法ですね。ただし、あれ一つしか使えないとは限りません。どの魔獣にも個体差がありますからね」

「なるほどっす」
『ヴァン殿が思う一番強い魔獣ってなんでござるか?』

 一番強い、ですか。

「そうですね。獅子の魔獣……、いや、やはり竜の魔獣・マリョウですね」
「竜っすか? それってもしかして竜の因子持ってんすか?」
「どうなんでしょうね。僕も竜の因子については今回初めて知りましたから」
「あ、そういやそうっすね」

 僕もさすがに出会でくわした回数はあまりありません。まともに戦ったのは一回だけですね。倒しましたが、あの時は魔力全開で一対一でした。今やれば苦戦は免れませんね。

「アンセムさんの竜バージョンって見てないんすけど、竜! って感じなんすか?」
「竜! て感じの事がどんなか分かりませんが、正に竜ですね」

 アンセム様を訪ねた時には、片腕だけしか竜化しませんでした。

「そっすか。会ってみたいけど、会うの怖いっすね」
「僕はマリョウと会いたいとは思いませんけどね」
『それがしも竜に会った事ないでござる』

 ロップス殿たちが戻ってきたようですね。

「ヴァン殿! 食糧は少ししか取れなかったが、頼もしい助っ人を連れてきたぞ!」

 助っ人ですか? こんな所で?

「こちらは私の叔父、アンテオだ。父の弟になる」

 アンセム様の弟……。こんな所で一体なにを?

「ブラムの子、ヴァンか。はじめまして、アンテオと申す」
「はじめまして、ヴァンです」

 青年の姿、なかなか美形ですね。細身ながら引き締まった体躯、黒いズボンに黒の袖なしのシャツ、腰まで届く長い髪、纏う雰囲気は確かに、アンセム様と似たものを感じますね。

「こんな所で一体どうされたんですか?」
「いや、特にどうという事もない。我はあちこちフラフラとしているのだ。ロップスに会うたのも偶々たまたまだな」
「叔父上は放蕩者でな。私も小さい頃に二、三回しか会った事がないほどだ。まぁ、竜族には珍しい事でもないが」

「そうですか。簡単な物しか出来ませんが、ご一緒に夕食でも如何ですか?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...