異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

文字の大きさ
120 / 185

90「髭モジャのムキムキ」

しおりを挟む

「こんなに可愛いですやん! プックルもロボも!」

 ボルビックから半日ほど離れた先で野営です。

 タロウの憤りも分かりますけどね、しょうがありませんよね。

「またその話か。もういい加減にしろ、タロウ」
『そうでござる。色んな人がいるでござるよ。みんな違ってみんな良いでござるぞ』

 まだ十歳のロボの方が大人ですね。
 お忘れかも知れませんが、レイロウは十歳で成人らしいのでロボも大人なんですけどね。

「でもだからってあんなにビビらんでも良くないっすか?」
「しかしああ言われたらしょうがないでしょう? 押し通って村に入る程の用事もないですし」
「……まあ、そっすか、そういや用事ないすね」

 当時の様子を知るという老婆、おそらく先程のチノ婆と呼ばれていたお婆さんでしょう、彼女の話には興味がありましたが、大体はパンチョ兄ちゃんから聞けましたしね。

「食糧もありますし、みんなすっかり野営にも慣れたものでしょう? 良いじゃないですか、機嫌よく先を目指しましょう」
「おす! 分かったっす!」


 それから十日と少し、明るい内は歩き、夜は食後に各々の訓練を少し、いつも通りの旅を続けます。
 森を抜け小さな川を二つ越えて、八月に入った頃タイタニアの街が遠くに見えてきました。

「ブラムとーちゃんの城からこっち、平和っすねー」
「ただの魔獣程度では体がなまっていかんわ」

 食糧確保にちょうど良い程度には魔獣との遭遇があって、僕としては大変助かっています。
 だって皆さん良く食べるんですもん。

「それこそ『神の影』とやらが入り込んだ魔獣であれば戦い甲斐もあるのだがな」
「それって数倍から十倍強くするってやつっしょ? それはちょっと遠慮したいっす」

 僕も遠慮したいです。
 倒しても食糧に回せるかどうか分かりませんし。

「しかしな、ただのマロウが十倍の強さになったとしても、あのナギーやウギーなんかより強くなると思うか?」
「……思わんすね。ウギーの方が断然強いっす」
「であろう。なら少しでも強い相手と普段から戦わねばなるまいよ」

 一理ありますね。
 ただ、昏き世界から来た神と共に現れた『神の影』は駆逐されています。出会う事はないでしょう。

 あ、今気づきましたが、アギーさん達と共にこちらに来ている可能性があるかも知れません。
 『神の影』とはどういった存在なんでしょう。今度タイタニア様に伺ってみましょうか。



「着きました、ここがタイタニアの街です」
「街……っすか? これ村じゃないんすか?」

 アンセムの街とは比べるべくもなく、ボルビックの町よりもさらに侘しい、どちらかと言えばペリエ村の様な雰囲気です。

「落ち着くっすねー」
「僕もそうですね」

 衛兵どころか門や塀さえありません。

「いらっしゃい、旅の方」

 背の小さな男性に声を掛けて頂きました。

「こんにちは。タイタニア様の下へ伺う途中なんですが、確かこちらには宿屋といったものは無いんでしたっけ?」

 最後に訪れたのは地図作りの際の三十年ほど前、確か宿屋はなかったはずです。

「無いなぁ。街とは言うけど、完全に自給自足の小さな農村だ。宿なら街長の所で泊めてもらうと良い」

 男性にお礼を告げ、街の中心部を目指します。

「ねぇヴァンさん、さっきの人めっちゃ背低いっすね」
「彼は精霊の血を受け継いでいる人族の様ですね。ここタイタニアの街には彼の様な人が多くお住まいですよ」

 タロウが怪訝な表情、というか納得の行かない顔、というんでしょうか、様子がおかしいですね。

「どうかしましたか?」
「いや、別に良いんすけどね、精霊ってもっとこう、なんてーんすか? ちっさくて可愛いとか美しいって感じちゃいますのん?」
「? 精霊でしたらそうですね。可愛いとか美しいは個人の感覚なので一概には言えないと思いますが」

「だってさっきのおっちゃん、ちっさいすけど、髭モジャのムキムキですやん!」

 ああ、そういう意味でしたか。

「混血ですからね、色々ですよ」
「ドワーフってんですかね。そんな感じのおっちゃんだったんで精霊もあんな感じなんかと思ったっす!」

 どわーふ、と言うのはこちらには無い言葉ですね。

「この街には精霊は住んでいませんよ。タイタニア様のお屋敷か、その周囲の森にお住まいですね」
「じゃあまだ期待して良いんすね!?」
「そうだ。期待して良いんだな!?」

 ロップス殿まで加わりましたか。
 若いって素晴らしいですね。

「良いんじゃないでしょうか」

 出来るだけ、僕は興味ありませんよ、という風に聞こえる様に努めて平静に。
 ロボの視線が痛いですからね。


 街長のお宅で泊めて頂きました。
 アンセムの街長と違って寡黙な方でした。

「街長さんは『五英雄の誰推し』なんすか?」

 随分と久しぶりの話題ですね、それ。

「特にありませんが、誰かを挙げるならタイタニア様ですね。タイタニアの街の街長ですし」

 アンセムの街長にも見習って頂きたいですね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...