異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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103「この唐変木」

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 ウメーウメーと叫びながら父が食事しています。

 相変わらず行儀が悪いです。
 スプーンは逆さに握っていますし、フォークが面倒になったのか肉を手掴みで貪り食べています。
 ウメーウメー言う度に口から食べ物が覗いていますし。

 タロウを見習って欲しいですよ、ほんと。

「ロボ、父の食べ方を見習ってはいけませんよ。そう、スプーンはそっち向きが正解です」
「なるほど。こうでござるな」

 人族の姿での初めての食事ですが、ロボも頑張って行儀良く食べています。

「なかなか難しいものでござるな」

 最初に人化した時はあっという間に元の姿に戻りましたから、人族の体を扱うのはほぼ初めてですからね。慣れるまでは大変でしょう。


「どうかしましたか?」

 僅かに頬を染めたロップス殿が、ロボの方でなく僕の方を見てポカンとしていました。

「……いや、さりげなくロボをフォローする様子が勉強になるな、と」
「? そうですか? あまり意識していませんでした」

 でもそう言われるとなんだかやりにくいですね。


「ちょっと気になったんすけど」
「なんですか?」
「ロボって、その姿でも戦えるんすか?」

 あ、鋭い。盲点でしたね。

「ど、どうなんでござろう……。爪も牙もないし、体格的にパワーも落ちてるかも知れんでござる」

「精霊術の力がアップしているとか?」
「うーん、あの覚えられなかった精霊術陣の形、あれはこの姿の方が理解できるでござる。でもアップはしてないでござろうな」

 現実問題として、人化の能力が制御できなければ危険ですね。
 何がキッカケで人化するのかが分かっていませんから。

「なんだオマエら。結婚したのって本当の最近か?」
「ええ。まだ十……三日目です。ロボが人化したのは今日でニ回目ですね」

 はぁーっ、と深い溜め息を吐いた父。

「この唐変木」
「え? 僕ですか?」
「十三日もあってニ回目って……。この唐変木が」
「ちょっと父さん。分かるように言って下さいよ」

「ロボの力はタイタニアと同じ、愛した相手と同じ種族の姿になる、なんだろ?」

 そう言われると少し照れてしまいますね。
 ロボも同じ気持ちなのか頬を染めています。

「そうでござる」
「だったらもっと愛させてやれば良いんだ」

 なるほど。なんとなく分かりますね。でも、愛させてやる、ってどうすれば良いんでしょう?

「ほら、接吻せっぷんしろ。今しろ。すぐしろ」
「「せっ! ぷん!」でござるか!」

 なんとなくは分かります。
 でも今、人前ですることは必要でしょうか。

 と、思ったのは僕だけだったようです。

 ロボが椅子から立ち上がり、僕の肩に手を、逆の手を僕の頬に沿わせました。

「……ロボ?」

 返事はありませんでした。

 ロボの唇が僕の唇へと重なり、そして唇を這い出してきたロボの舌が、僕の口の中へと……。

 ……そんなアツイ口づけが必要なんでしょうか。

 でも、なんでしょう。
 抗いきれない快感が背筋を走ります。

 ロボの舌に、こちらからも舌を絡め――

「あ、あ、あぁ! な、なんでござるか!?」

 薄桃色の精霊力が勢いよくロボを包み、そして一瞬で霧散しました。


 ちょーん、と行儀良く座る狼姿の・・・ロボ。

「がうがうが…………狼の姿に戻ってしまったでござる!』

「あーっはっはっは! ロボは可愛いなぁ。ほんとヴァンにぴったりのお嫁さんだぜ」
『そう言って貰えるのは嬉しいでござるが、お義父さまのせいでござるぞ! 戻ってしまったでござるよ!』

 ロボが父に向かって声を荒げます。
 思った事は口に出した方がギスギスした嫁舅よめしゅうと関係になるより良いですよね。

「何を言う。今のうちから人化に慣らしておかねば、いざ子作りとなった際に困るのはヴァンとロボの方だぞ」
『……なるほど。説得力あるでござる。ところで子作りってどうやるんでござるか?』

 ちょっと長めの沈黙です。

「……いざという時にヴァンに教えて貰えば良い。それが一番良いと思うぞ」
『そういうものでござるか。分かったでござるよ』

 まさかの丸投げです。
 いや、父がロボに対して事細かに説明しだしてもそれはそれで止めますが。

 まぁ、その件については追い追いですね。
 慌てなくても良いですし。




 みんな気持ちいいほどの食べっぷりでした。

 ロボが狼の姿に戻ってしまったので、後片付けをタロウが手伝ってくれました。

「久しぶりに腹も膨れたし、では本題だな」
「本題っすか? まだなんかあったっすか?」
「バカもん。まだもクソも、まだ何にもしてないぞ。俺の証がまだじゃないか」
「あ、そういえばまだ貰ってないっすね」

 僕はちゃんと覚えてましたよ。

「すぐにくれるんすか?」
「ああ、やる」
「もう俺のこと認めてくれてるんすね?」

 少しの沈黙です。

「別にそういう訳じゃぁない。こっちに来てからのオマエの事は知らんからな」

 では、どうしてすぐにくれるんでしょうか?

「ウチの息子がオマエの事を認めているのが良く分かるからな。俺はヴァンの事を疑わない。ヴァンを信じている、唐変木だがな」
「……父さん……」

「なんつってもカノンと俺の子だぜ? 出来る子に決まってるっつうの」

 ……僕を信用してるというよりも、自分とその妻を信用してる、って感じでしょうか。
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