150 / 185
112「ロップスの覚悟」
しおりを挟む「話は済んだのか?」
「済んだ。もうイギーと話す必要はない」
イギーさんに背を向け、ロップス殿に歩み寄るアンテオ様。
イギーさんは話が済んだとは思っていない様ですが。
「アンテオ、僕からも一つ言わせてくれ」
「聞こう」
背を向けたままのアンテオ様が、首を僅かに捻りました。
「……また会えるか?」
ふふ、と少し笑ったアンテオ様が答えます。
「無理だな。今生の別れと思え。最後に今一度お前の為に戦おう」
「……分かった。僕の左腕と共に逝け」
イギーさんが翼を一打ち、空へと舞い上がり、北を目指し飛び去りました。
「さぁ、仕切り直しといこう。どちらかが死ぬまでやるぞ」
飛び去ったイギーさんを目にする事なく、魔力を漲らせたアンテオ様が言います。
この展開でロップス殿は戦えるでしょうか。
しかし、それこそ戦う必要はあるのでしょうか。
ロップス殿が音もなく刀を抜き放ちました。
「叔父上。私も覚悟を決めた。殺してでもイギーの魔術から解放してやろう」
「ふん、出来るならば頼む」
対峙する二人の脇を、ロボが駆け抜けこちらへとやってきました。
『待たせたでござる!』
「ロボ、タロウへ慰撫を使って下さい」
『承知でござる!』
ロボが慰撫を使いタロウを癒しました。
「肉球の形した雲みたいなんに叩きつけられるの……、癖になりそっす!」
タロウが復活、そしてその発言は理解できます。アレは快感ですよね。
「待った!」
ロップス殿が待ったをかけました。
どうしたんでしょう。
「ロボ、すまんが私に守護を」
『え? いらないんじゃなかったでござらんか?』
「頼む。叔父上、良いな?」
それに対してアンテオ様が首肯します。
ロップス殿の体がロボの守護に包まれました。
「次はプックル! アレを頼む」
アレ? 何でしたっけ?
プックルも首を捻っています。
『きっと僕と戦った時に使ってたヤツの事だよ』
あぁ、強クナル魔法、ですか。
確かにウギーさんと戦った時に使っていましたね。
プックルの雄々しい歌声が響きました。
「ぬぅぉぉおお! コレだ! 力が漲る!」
プックルの赤い魔力がさらにロップス殿を覆いました。
しかしどうしたんでしょうか。
先程は一対一に拘っていたロップス殿ですが。
「叔父上は自分の意思でイギーの為に戦う。私も覚悟を決めた。仲間の力を借りてでも、全力で倒す!」
「良かろう。来い、ロップス」
同時に走り出し、二人が中央でぶつかり合いました。
ロップス殿の刀と、アンテオ様の魔力刀がかち合い、お互いに弾かれます。
「真! 烈風迅雷斬!」
踏み止まったロップス殿が迅雷斬を放ち、唸りを上げてアンテオ様に迫りますが、魔力刀で弾かれました。
「ぬぅりゃぁぁぁ!」
しかし回転を上げ、連続して迅雷斬を放ちます。
浅くではありますが、確かにアンテオ様の体を切り裂いています。
先程の戦いでは傷を付けることさえ出来なかった迅雷斬で。
「どうだぁ! 迅雷斬でも効いているぞぉ!」
強クナル魔法での能力の底上げが効いている様ですね。
ロップス殿が突いた刀がアンテオ様の左前腕に突き刺さりましたが、これはどうやら罠だった様です。
「……ふん、調子に……乗るな!」
刀が引き抜けないロップス殿を、アンテオ様が右手の魔力刀で斬りつけました。
ロップス殿が刀を手放し吹き飛ばされ、地面を転がっていきますが、転がる勢いを利用し素早く立ち上がりました。
「危ない危ない。魔力一点集中とロボの守護、このどちらかが欠けていても今ので終わりだったわ」
無傷の様ですが、魔力一点集中ですか。
今までは十のうち九を集めていた筈です。
それは捨て身の戦いですよ、ロップス殿。
『ヴァン殿、ここは許せ。生涯で何度もないであろう、勝たねばならぬ戦いだ』
『貴方はまだ十二歳です。ここで死ぬ事は許容できません』
『……そうだな。肝に銘じよう』
ロップス殿が体に着いた砂埃をパンパンと叩き、アンテオ様に歩み寄ります。
アンテオ様も同様に歩み寄り、ロップス殿の刀を腕から引き抜いて投げ渡しました。
「もう一度いくぞ、叔父上」
「早くしろ。狼殿はともかく、山羊殿の歌には時間制限があろう」
ノーリスクであればずっと使えば良いですものね。さすがに鋭いですね。
「真! 烈火十山斬!」
絡め技なしの、いきなりの奥義。
「さっきよりは良い。だがまだ遅い」
振り下ろした刀の腹を手で抑えられ、体を入れ替えて躱されました。
「ぬぅぅっ! まだ当たらんか!」
闇雲に刀を振って距離を取りました。
「……落ち着いて考えろ」
「ねぇヴァンさん」
「なんです?」
「ロップスさんの奥義って、どうやって速いのとパワーあるのと使い分けてんすか?」
タロウの疑問も尤もですね。
「単純に小さく斬りつけるか、大きく斬りつけるかの違いが一点、ここからは僕の推測ですが、魔力操作による点、もあると思います」
「魔力操作すか? それってガゼルさん仕込みの?」
「いえ、元々無意識に行っていたんだと思います。ガゼル様の教えを受ける前から奥義を使っていましたからね」
迅雷斬は速さに重きを置いた魔力操作、十山斬は威力に重きを置いた魔力操作、具体的には分かりませんが、恐らくそういった技術の集大成なんだろうと思われます。
感覚的に理解しているでしょうから、きっとロップス殿も説明するのは難しいんじゃないでしょうか。
「なんとなく分かった気がする」
「……何がだ」
切り結ぶ二人の動きが止まり、僅かに距離を置いて対峙しています。
「強く速い剣だ」
「ほう。やれるか? そろそろ時間切れが近い様だぞ?」
アンテオ様の仰る通り、ロップス殿を覆っていた赤い魔力が立ち消えそうです。
完全に消えれば、普段のロップス殿よりも弱体化してしまいます。
「やれる。なんとなくだが、理解はした。やれる筈だ」
ロップス殿が刀で天を指し、逆の手の指で地を指しました。
「天も地も私を見よ! 私はたった今、今までの自分を超える!」
「……そうか。ならば見せよ。……行くぞ!」
アンテオ様が上段から大振りに斬りつけた魔力刀を、峰に左手を添えた刀で受け、勢いに逆らわずに受け流したロップス殿。
「技の名は………………、今はまだ無い!」
やや傾いた袈裟斬り、煌めいたロップス殿の刀がたたらを踏んだアンテオ様の左腕に吸い込まれ、左腕を斬り飛ばしながら、そのまま振り抜いて胸を切り裂きました。
「……良いぞ。上出来だ、甥っ子よ……」
「……結局、その『上から目線』を止めさせられなかったな」
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる