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27「アレクの実力」
しおりを挟む若い魔族から高らかに叫ばれた声が木々に木霊し――、
『エクセレーントォ――セレーントォ――ェーントォ――ントォ――トォ、ォ、ォ……』
――すっかりと聞こえなくなると同時くらい、リザとアレクがデルモベルトのお化けへ向かってキツめの視線を投げつけました。
視線に乗せた気持ちを私なりにイメージして文字に起こしますね。大体合ってると思いますのよ。
(……こいつ、なに? 僕、聞いてないよ?)
(いや俺も知らん。こいつは俺の策とは関係ない)
(ど、どうしますの? わたくしはこのまま斧を構えていれば良いのですか!?)
(えっと……えっと、どうするロン!?)
(と、とにかくエリザベータ姫は警戒を、アレクと俺はとりあえず進めるぞ)
(なんとなく分かった!)
叫び終えた後の魔族の青年、筋肉量で言えばバルク派とは言い難いスリムな体型。
それでも脱げばそこそこ引き締まってそうな、なんとなくそう思わせる様な良い姿勢。
彼は感極まったかご自分の体に腕を巻きつけ自分で自分を抱く様にし、恍惚とした表情で立ち尽くしたまま微動だにしません。
どうやら三人はその隙に寸劇を進める事にした様ですね。
「彷徨える魔王デルモベルトの魂よ! 再び僕があの世に送ってやる! 喰らえ!」
アレクは高く跳び上がり、回転しながら腕輪をタッチ、取り出したレイピアを手にデルモベルトへと急降下。
『ぐぅっ……ぐわぁぁぁああ!』
アレクはデルモベルトの背後にシタッと着地すると同時、レイピアを腕輪へと仕舞って言います。
「ばいばい、魔王デルモベルト」
『さ、さらば、勇者アレックスよ……』
ピカーっ! と光を放ったデルモベルトの体。
その一瞬のち、光の消えたそこにデルモベルトの姿はありませんでした。
何度も言いますけどね。
ホントに二人の芝居、学芸会レベルなんですよ。
分かってて見てる私は笑い転げるのを我慢しているぐらいですから。
同じように分かってる筈のリザなんですけれど、なぜかカコナやチヨさんと一緒になって手に汗握っているのが微笑ましいです。
そしてさらに――
「ここにいたのか! 探したぞアレク!」
「ロン! やっと追いついたか!」
息急き切って木立の中から現れたロンが、しれっとアレク一行に合流を果たしてみせます。
もうコレ、私には面白すぎてどうしましょうね。
しかし一転、お芝居感のなくなったアレクが口を開きました。
「さて、と。じゃ僕はこの魔族を殺さなきゃだから、リザたちは下がっててくれる?」
「……え、あ、そうなのですか? けれど何かわたくし達にお話しがあって見えられたのでは――」
「あるかも知れないね。でも魔族だからね、聞かずに殺すのが一番だよ」
ニコリ、と曇りも一つの屈託もない笑顔でそう言ったアレクが、腕輪に触れてさらに言います。
「下がってて。危ないよ」
いつもの声音と全く変わりませんが、有無を言わせぬ迫力がありました。
これが大国アネロナ擁する勇者の迫力なんですね。
僅かにビクリとしたリザを誘うようにロンが手を引き言いました。
「エリザベータ姫、こちらへ。我々ではアレクの足手まといになってしまう恐れが」
「リザ、ロンの言う通りにして」
アレクの力を仮に百としたら、リザで良いとこ十くらい、今のロンではせいぜい八、チヨさんで四か五というところでしょうか。
この若い魔族はどれほどでしょうね?
「勇者アレックス・ザイザール、よくも前魔王さまの魂を……!」
芝居がかった素振りで若い魔族がそう言うのへ、アレクがあっさり言ってのけます。
「良いよ、無理しなくて。デルモベルトに対してそんな気、さらさらないんでしょ?」
「バレましたか? それは失礼を致しました」
若い魔族は優雅なポーズと共に頭を下げ、そして不意に頭を上げて続けました。
「では改めまして、私の名はレダ・コルト――」
ヒュンっと音を立ててアレクがレイピアの剣先を振り上げ、そしてそれが振り下ろされた時にはもう、レダと名乗った若い魔族の背後にアレクの姿がありました。
「――新たな魔王ジフラルト様付きの執事……あ、あれ?」
「だから、悪いんだけどお話し聞かないってば」
レダの左肩から反対の脇腹、左肘、斜めに走ったアレクの剣尖がレダの体を上下に分けました。
魔王レベルでもない限り、アレクの実力で一人きりの魔族相手に手こずる事はほぼあり得ないんですよね。
久しぶりのバトルシーン。今回は見逃しませんでしたよ。
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