勇者アレクはリザ姫がお好き ~わたくし、姫は姫でもトロルの姫でございますのに~

ハマハマ

文字の大きさ
52 / 103

47「唐突にキショい兄」

しおりを挟む

 元のリザの姿に戻り、その上でアレクに気持ちを伝える、そう言ったリザは只今、休憩中です。

 僅かとは言え、リザが取り込んだ森のマナが現代のトロルの精霊力へ変質してしまいましたので、再び癒術を使い、新たにマナを入れ替えたところなんです。

 もちろん一時的なものですが、リザの癒術のおかげでさらに肌艶の良くなったカコナとレミちゃんがリザを見詰めて詰め寄ります。

「ほんっとに誰にも見せずに戻っちゃうの?」

「勿体ない。キスニに見せたら失神するのに」

 二人の気持ち、分かります。
 確かに驚くほどに美しいですもの。

 けれどリザの答えは変わりません。

「ええ、誰にも見せずに戻ります。この姿は……、どう考えてもわたくしではありませんもの」

 それも分からなくもありません。
 ちょっと美しすぎたかしらね。

『まぁ良いじゃありませんか。少々手間ですが、この姿になろうと思えばいつでもなれますし。それに私は元々、リザの気分転換になれば、くらいのつもりでしたし。のでしょう?』

「ええ、とても」

 そう言って、ニコリと微笑むリザの姿が眩しすぎてヤバいですね。私としたことが見惚れてしまいましたよ。

「ん~確かにそっか……。うん、そうだね!」

「理解。リザ姫は変身しなくても素敵」


 マナの状態も良いようです。

「では、もう一度変身します」

 リザがそう言い、膝立ちになって手を組み、何かに祈りを捧げるようなポーズで精霊力を纏い始めました。

 元の姿へと戻るため、精霊力の繭がリザを包み込みます。


 と、その時。

「――! なんか来る! ううん、もう来てる!」

 カコナが鋭く叫びました。


「何を賑々にぎにぎしくやっているのかと、しばらく観察しておりましたが古のトロルに伝わる『変身』でしたか。これは珍しいものを見せて頂きました」

 マナスポットを囲むように取り巻く森の木々の中から、一人の男性が姿を表しました。

「ひっ――、魔族!」

「いかにも。私は魔族、その名もフル・コルト。偉大なる魔王ジフラルト様の執事長――んなっ?」

「今忙しい。死んで」

 レミちゃんの掌から飛んだ氷の弾丸――弾丸と言うには大きい拳大の氷――が、フル・コルトと名乗った魔族の胸をすでに抉っていました。

「――かはっ」

 分かりやすく緑色の血、なんていう事はなく、普通に赤い血がフルの胸や背、さらに口の周りを赤く染めます。

 問答無用ですね、レミちゃん。

「……可愛い顔をして酷いお嬢さんですね。しかしその判断力! excellentえーくさらぁん!」

 ……なんだか懐かしい気分なのは私だけでしょうか。

「そのキショい喋り方! あんた、こないだのレダとか言うキショい魔族の仲間!?」

 たぶん違うと思いますが、『キショい』って標準語なんでしょうか?
 なんとなく伝わるんで別に良いんですけど、キショいキショい言われては死んだレダが報われませんよ。死人に鞭打つのはやめましょうね。


 けれどレダがキショいかどうはどうでも良いとして、リザの変身も先程の変身から言ってまだ数分は掛かるでしょう。
 余計な手出しをさせないようにしませんと。

『フル・コルトと仰いましたね。貴方はここへ何を?』

「……おやおや、トロルのお化けかと思いましたが、どうやらもっと格の高い存在の様ですね。しかし上品なマダム、少しお待ち頂きたい」

 まぁ、上品ですって。
 なかなか見る目のある魔族ですね。

 フルはそう言って、何もない虚空から大きな黒い布を取り出して、バサリバサリと裏と表をこちらに、何もありませんよ、と示します。
 そしてそのまま体の周りに泳がせフワリと羽織ると、なんと胸に空いた穴も血の跡も、全てが元通りになってしまいました。

 途中の動きに必要があったかどうかは別にして、大したものですね。

「まずはそちらのキュートガール」

「わ、ワタシ?」

「私をと一緒にしないで下さいませ。私はレダと違ってこの様に、Élégantえぇぇれがん! なのですから」

 十分にキショいフルがそう言って、香ばしくビシリとポーズをとりました。
 やや上を向いた顔の下半分を片手で押さえ、反対の手を腿の間に挟んで――要らないですね、フルの香ばしいポーズの説明は。

「そしてそちらの上品なマダム」

『私ですね』

「私はここへ、そちらのキュートガールが仰るところのを捜しに馳せ参じたのでございますが、もうそんな事はどうでも良いのでございます」

『と、言いますと?』

 そう言った私へ、フル・コルトは勿体ぶった丁寧なゆったりしたお辞儀。
 分かりますかね。丁寧過ぎてイラッとするお辞儀です。

「貴女を除くそちらの美しい御三方を! 我が親愛なる魔王様への土産に連れ帰る事に致しましたから!」


 その言い方だと私だけ美しくないようにきこえますよ。
 イラッとしますね。

しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

辺境伯夫人は領地を紡ぐ

やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。 しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。 物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。 戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。 これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。 全50話の予定です ※表紙はイメージです ※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

処理中です...