1 / 1
〜ある中年女性の愚痴というか何というか〜
しおりを挟むわたし?
いやいや、わたしの事は良いじゃない。今日は貴女の愚痴を聞くんでしょ。
参考までに、って……ならないと思うわよ。
え~……、……えっとね、わたしは旦那から……『昆布』って、呼ばれてるけど?
いや、なんでって言われても。
ほら、わたし達って小中学校の同級生じゃない?
昔はお互いに苗字呼び捨てで呼び合ってたからさ、結婚して苗字が一緒になったらなんとなく小っ恥ずかしくってさ。
わたしが旦那を『旦那さん』、旦那がわたしを『お嫁さん』って呼び始めたわけ。
そしたらちょっとずつどんどん派生していってね、『お嫁さん』から『昆布』になったのよね。
どんな派生の仕方やねんって?
あはは。ホントよね。
でも一年か二年かけて、それはもう自然と派生していったのよね、いつの間にか。
あ、でもね、『昆布』って呼ばれるのは全然良いのよ。すっかり慣れちゃったし。
それ自体は良いんだけど、こないだスーパーでウチの旦那がね――
『ねぇ昆布、もう菜の花売ってるよ。春だね』
――とか言っちゃうわけよ。
うっかり普通に『ホントねー』とか返事しちゃったわたしもわたしだけど、それってやっぱり変じゃない。
実際ね、周りのお客さんがこっち見たんだから。
どこの世界に『昆布』って呼ばれる嫁がいるのって感じじゃない。
嘘だぁ~。
外で『昆布』って呼ばれるの、大した事じゃないって言うの?
そりゃ貴女は『昆布』って呼ばれた事ないからだわ。
呼ばれたつもりで空想してみ?
お外で呼ばれたら流石にちょっと恥ずかしいから。
………………。
ほら!
ね? 思ったより恥ずかしいでしょ?
え?
うん、まぁ仲は良いよね。
同い年ってのもあると思うけど、なんと言っても旦那がわたしの事、大好き過ぎるからね。
そうなのよ。
それはもう常軌を逸したレベルなのよ。
だってね、結婚して十年ちょっとたってお互いにもう中年。わたしも旦那もお腹ずいぶん丸くなり始めてさ。
なのに、相変わらずわたしの顔を見る度に――
『今日も可愛いね』
――なんて口走るの。
間違いなく本音で言ってるらしい事も分かるし、そりゃ嬉しくない訳じゃないけど、ちょっと頻度がね。
朝起きて『今日も可愛いね』、仕事から帰ってきて『今夜も可愛いね』、ちょっと目が合ったら『いつも可愛いね』、それじゃちょっと多すぎるのよ。
あんまり言われ過ぎたものだから、ちょっと言われ慣れちゃったのね。
もうちょっとほら、タイミングとかさ、あるじゃない。
ところ構わずひっきりなしじゃあさ、有り難みがないってものよ。
逆にわたしの方はベタベタするのそんなに好きじゃないのも大きいのよね。
そんな一日に何回もしなくても良いじゃないって感じ。
え、何をって……嫌ぁね、キスよキス。ちゅうよ。
行ってきますのキスに、おやすみのキス、一秒くらい目が合ったらさ、『キスしよ』なんて言うのよ。
おっさんがおばさんによ。
そりゃ旦那はさ、わたしが初恋で未だに大好きでさ。分からなくもないんだけど。
そうなのよ、初恋らしいのよ。
残念ながら当時わたしは全然そんな事なかったんだけど。あはは。
けど朝にバタバタしながらさ――
『電車遅れる遅れる!』
――とか言ってるクセに『キスして』ってアホか! と思わない?
しかもわたしだって仕事行く前の洗濯とかしてるわけよ?
ちょっとね、日本人離れした愛情表現だからね、あの人。
『世界一可愛い私の昆布』なんて真顔で言っちゃうような人だから。
……もちろん拒みもするけど、まぁ、それなりにするんだけどさ、キス。
その、応えてあげたいという思いとね、アホか! っていう思いとね、半々……四:六くらいなのよ。
それでも、四:六でもね、わたしのわたしなりで精一杯応えてるつもりなんだよ。
だからって訳じゃないと思うけど……、まぁ、夫婦円満、かな。
あ、そろそろ下の子のお迎え行かなきゃ。
ごめん、私の愚痴――愚痴かしら? ばっかりになっちゃった。
今度またゆっくり愚痴聞いたげるね。
え?
今夜はお帰りなさいのキスするかって?
……そうねぇ。
シュークリームでも買って帰って来たらしてあげよっかな。
あはは。
なんて、ね♫
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
|ェ)・`)チラックマ🌟
微笑ましい夫婦ですな🤣
昆布、、、シブい。噛めば噛むほど味が出ますね( ̄∀ ̄)
面白かったですヽ(´o`;
青空さん!
なんだかよく分からない小説に(笑)感想ありがとうございます!
嬉しいです!
この夫婦、めっちゃ仲良いでしょ〜♪