魔伝士ネイラーラ・ゾフィープ

随想アルファ

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亜空間「箱庭」異譚

箱庭行脚 第陸話

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更地には人がすっぽりと入る溝が縦横に走っていて、所々が広かったり段差が作られていた。

其れとは別に強化魔法や固定魔法が掛けられたトンネルが有り、場所によっては巨大になっていて魔法解除して落とし穴にしたり、或いは重ね掛けで避難所にするそうだ。

又、とても長い構造体が骨組みだけで置いてあったが、作戦開始で立ち上げ始めた。

それもかなりの数。円周状に配置されやはり岩山を中心に取り囲んでいた。
二重にだ。

魔法兵器の一種で反射の魔法のみを厳重に仕掛けられていて・・・。
多少は角度と言うか反射の向きを変えられるそうだ。
つまりドラゴンブレス対策。

最終防御兵器。無人の対G兵器を彷彿とさせるな。
しかし、岩山を突破した竜が地上を進むだけで済むのかと思う。
それよりも、こいつは岩山が発射源だとそこに向かって反射する。
構造体が持つのかは分からないが、初撃のブレスが岩山を貫通したらそのまま反射して直撃する事になる。

突入班が犠牲になる前提の仕掛けだ。
エグイ。と思うがそこまで必死なんだ。

皆を守る為に。

どうにか・・・ならないだろうか。
ハッピーエンドでなくていい。
せめて報われて欲しい。


突入開始!
援護部隊が土魔法で岩山の各所にある穴に届く階段や斜面を5か所に設置。
岩山の強化も兼ねている。
恐らく遠目からは爪で咥えられた・・・宝石?指輪?に見えるかもしれない。
この世界にも有るのだろうか・・・あるかも知れないな。

そんなことを思っていると土魔法が終わり、全員が駆け出す。
「行くよ!君は身の危険を感じたら下がって」
ダマさん。
「いえ。頑張ります」
「分かった」

地上からの突入班が一足先に突入。
ほどなくこちらも中段に在る穴に続く斜面を急いで登り、配置に付く。

その時。

轟音と振動が足元を不安定にする。
煌めく光とスゴイ熱量が沸き起こる。

「ブレス?こちらの攻撃かなリーダー」
「先制攻撃は指示されていない。前倒しのつもりで中に入る」

「賛成だ。俺も可能な限り戦う、使ってくれ。騎士団だからと遠慮するなよ」
「ツインビーム殿。感謝する。遠慮なんてできるものか。これより、二方向に分かれる」
「「「「おお」」」」

「土魔法の使える奴は強化を兼ねた足場を作り突入できるようにしろ!」
「ああ!任せて置け」「出番だ」
「その為少しここで待機の事。ポーションを使え!・・・俺と一緒に飛び降りるのはいつものメンバーだ。マギ、一緒に来い。先発隊の救護を頼む」
「りょ…了解」
まさかの突入員だった。

サブリーダーのベルベルさんとダマさんが残って後方支援。
リジッド兄弟が土魔法を行使。

降下突入するのはリーダーのハワードさんとクラフトさん。フィリップさんと俺が救護担当だが戦闘を前提。
騎士団で同行するのはツインビームさん。遊撃と状況に応じてフリーに行動。

体制を整えて準備が終わった次の瞬間。
二発目のブレスだろう、さっきのと同様の衝撃が来た。

「先行二人!救護員は土魔法後にすぐに突入。待機組!焦って突っ込こんで来るなよ」
「おう!」
力強いクラフトさん。
「始めるぞコイル!」「はい!兄さん」
兄弟も息ぴったりだ。
「フィリップさん!」「うむ。任せろ」
俺も意気込む。
「ベルベル殿、行ってくる」「ああ、援護する」
実はこの二人は面識が有って、良い喧嘩相手だったそうだ。

ハワードさんとクラフトさんがいきなり無造作に飛び降りる。
驚いているとツインビームさんが続いて飛び込む。
「躊躇ないんだ」
思わず声に出ていた、ダマさんが。
「魔法や魔道具で減速と衝撃吸収が出来る。大丈夫だ」
と言ってくる。

土魔法の完成も早い。さすがだ、すぐにポーションを服用。
完成と同時に三人が着地した。
俺達も中に入る。

中に入るその刹那。
見えた守護者の姿。
と。
破損を・・・。

その破損の状況は確かに酷くて。何故、生きているのか分からない。
生物を模した存在だから、生きている訳では無いのだけれど。

怒りが沸き上がる。

穴に入り一気に駆け降りる。
多分、怒気が・・・魔力の本気が、漏れ出ていたと思う。
ダマさんの気配が変わり、フィリップさんが警戒を込めた目で見てる。
でも、それらには気が付いていても。
無視していた。
いや、無視しざるを得なくて。

負傷者の先行隊員は居なかった。
残っていたのは僅か2名。
意外と小さい傷で済んでいた。
それでもポーションを渡して離脱準備をする。
もはや戦闘は始まっていて、様子を見るなんて目的どころでは無くなっていた。

他の人は?だって・・・。
残骸を残すか、影を壁に焼き付けて・・・もはや存在していなかった。
聖魔法だとは知っているけど、守護者のドラゴンブレスだ。
この威力は制御不能のせいだろうか?

見送りに来ていた人達の・・・別れ際の光景がダブる。
「誰の所為だ」
思わず声に出していた。

守護者と呼ばれた守護聖獣で精霊が、護るべき存在に対して、遠慮のない殲滅攻撃。
僅かに残された自己防衛なのか。
それとも怒りか、呪いか。

「報われない」

ハワードさんとフィリップさんは魔力を込めて槍とメイスを投擲する。
これらは突入時に支給された投擲用に調整された魔導具。
今で言えばグレネードやロケットランチャーだろう。
目的は足止め。行動を少しでも阻害する為に多重魔術を施して有る。

そして自分のは召喚魔法か収納魔法で装備する他に補給・支援部隊まで下がれれば可能な限り配給される。
でも、そこに居る人たちも決して安全なんかじゃ無い。
流れ弾や誤射されたら・・・無事では済まないだろう。

だけど。
俺は忘れる事も見ない振りも出来ない。
あの破損を。
怪我だとかのレベルでは無かった。

頭頂部の鱗と表皮鱗は失われて残骸が垂れ下がって、首を動かすとぶらぶらと揺れる。
頭蓋骨も大きく失われて、脳が・・・露出・・・では無く基根部を残して消失。
出血は無く組織再生も起きているらしいが、損なわれた脳は全く再生していない。

竜の生命力か、守護者として存在が失われないからか・・・死なない。
違う!
そう違う。死ねないんだ!死にたくとも。
ゾンビどころじゃない酷さだ。

槍とメイスの投擲は命中。魔法が開放。
しかし、レジストされた。

「やはり」「仕方が無い。自前ので行くぞ!」
ハワードさんとフィリップさんが一旦退く。
それに合わせて上の穴からストーンバレットやウィンドカッターが飛んでくる。
ファイヤアロー、ファイヤボールも破損部を目指す。

もはや討伐を前提とした行動に切り替えていた。

けれども、効果は無いだろう。
イモータルオブジェクトに近いんだ。
もっと残酷だけど。
強制干渉がどんなものなのか?
それよりも打開策が存在するのか?

『聞こえるかね?』
「え?」

この声は。魔伝士だよな。こんな時に?いやこんな時だからか。

『伝える事は一つ。ティムの使用を准将する、それと自分の身を護るために竜人化をして置く様にね』
・・・分かった。有難う。ぼそっと呟く。
傍に人が居るんでね。

戦いは混沌。
足止めと牽制で地上からの突入班を退避させる。
同時に連絡員を外に脱出させて、こちらも離脱する。
そうしないと総攻撃が出来ないし、いずれはここに色々と飛んで来て、巻き添えになる。

その為にもテイムで鈍くさせて時間を稼ぎたい。

普通のテイムでは無いから。

竜人化なら人のサイズのまま、ブレスに耐えてテイムを仕掛けられるだろう・・・問題は見られる事。
せめて騎士団は今後の為にも逃がしたい、ダマさんのチームは巻き込まれてもらおう。
場合によっては相手にしなくて済むかもしれないし。

しかし。悩ましいのが守護者の攻撃と威圧だ。
バリアでこちらの攻撃が効かないし、凄い威圧のプレッシャーで内壁も崩れ出している。
そこにブレスを中心に指向性の攻撃が来る。
おまけに火属性の浮遊する地雷みたいなのが同時多数展開。近づけず、迎撃が必須の厄介さはさすがだ。
どうにか突入班の生き残りと連絡員を利樽で来たけど、上から援護していたベルベルさんとリジッド兄弟がブレスの余波に巻き込まれた。

本当にギリギリでダマさんが促して飛び降り、ほとんど落ちる様に躱せたけど状況は悪化し続けている。
先ず、岩山の崩落が始まった。
どうにかダマさんが回復させたけど降りた二人は負傷が大きい。
余波の呷りを受けたんだけど、普通じゃ無い効果が出て。
はっきり言えば腐敗を始めた。
後方に逃げないと命に係わるのが明白だ。

最前線で踏ん張っていた二人も限界が近い。
俺もフィリップさんも皆のケアで離れる事が出来ない。

最大の被害はベルベルさんだ。
魔導具を使った反射と吸収のデフェンスシールドが一瞬持ち堪えて飛び降りる事が出来たけど、彼は左腕の大部分を吹き飛ばされて体勢が変わりもろにブレスを浴びた。
無防備に落下して地上に叩き付けられて動けなくなった。

それでも、鎧の特殊効果で生きている。
だけど、そのままでは・・・。
それに、もう近づけられない。
守護者がベルベルさんと俺たちの間に居るんだ。
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