魔伝士ネイラーラ・ゾフィープ

随想アルファ

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箱庭異端 終章

終章初回

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「え?一緒には戻らないって!」

今俺はカルテットと暫定的な異空間でちょっと揉めている。

「うむ。
しかし、心配は無用。
現在の儂は此処の時間軸からは少し先の位置。つまり未来に居る。

引き継ぎ業務の関係でな。

同時進行しておる方はひとまず先に元の位置に戻り色々と調整中よ。
ああ、現代日本の我が町じゃ。
林原一と洋学浩生には気を付けよ。
お主と仲の良い者達、それ故、何かしら嫌疑を向けられるからの。

で。
今回は箱庭の件と同時になすべき事柄が二つあってのう・・・。
一つはお主が戻れば、解決に至るんだじゃが。
もう一つは、戻った後に結構な力を使い、先に果たした事象をなぞらねば、ならなくてのう」

「それって俺自身に携わる事で不可避って事?」
「そうじゃ」

・・・・

「ひとつ聞いてもいい」
目を閉じながら訪ねる俺

「よいぞ」

少し間を置き応えるカルテット。
それを受けて、俺も少し間を置く。

「しなければいけない事・・・先に果たした事象・・・って事は過去に跳ぶ必要が・・・有るって事だよね」

・・・・

カルテットは黙ったままで、ほんの僅かに俯く動作で肯定する。

「そう・・・なんだ・・・」

それは自身の記憶に立ち返る事であり・・・。
今は外されている記憶が、復元する事を意味している。

「いやか」

「ちょっとね」

「どうしてもなら、次善策も有るが・・・」
「手も有るんだろうけど・・・さ」

・・・・

「「取り戻すよ」」
自分だけど自分では無い声と共に答える。


「術式の発動はお主の許可で発動される」
「分かった。・・・あ・・・今までありがと・・・」
「別に今生の別れでは無いぞ。それに戻ったら娘に叱る必要が有るんじゃぞ?」

「ひぇ!  ?    むしゅめ?」
「噛むな・・・。長く生きておるんじゃ、魔導の力を持った子供がいても、遠い過去に産んでいても不思議ではなかろう?」
「そうかも・・・しれないけどさ・・・」

いや。
待て・・・。

「産んで・・・て・・・男だよ?俺」

「何回産まれて死んでたと思う?」
「?」

「男の方が圧倒的に多いが女子もあるんじゃ、儂もじゃがのう」

「女の時に産んだ?   まあ、それなら?   ・・・・実感ないけど」
「類い稀な力を持ち。無事に成長してもいる。
 今も尚、傍に居るほど懐いとるのは一人だけじゃ」

唐突に
  顔が浮かぶ

    いや。

慕情?

なつかしさ


いとしさ
か。

記憶のリンクの繋がりを感じる。

それ程の・・・
「大切な存在・・・か」


もし。娘を生んだのなら。

そうなるんだろうか。

・・・

自分の央に有るのは。
やはり。家族に対する・・・深い愛情なのだろう。
家族・・・か。

居なかったな・・・と思う。

生きていて。
幸せな時間なんて。
ほんの僅かで。

繰り返していて。

何度も
何度も・・・。


大切な家族は自分の身テイル前デ
ツギからツギに

コロサレテ行った!

ぶわっと怒気が膨れ上がる。
一瞬飲まれて。

ぬくもりを感じる。

「すまんの。
自分に自分で触れても
効果は半減じゃな」


右頬と右手に触れるのはカルテットの両手。

「いや。
返って良かったと思う。
何方にせよ

チカラに与えた疑似人格は模倣のハズだから・・・」

俺はカルテットに浮かぶ憐憫の表情を見て
不思議に思う・・・。

「あれ?」

右頬に触れていたカルテットのかぼそくて華奢な掌は
俺の目元を拭って

「この傷はの
儂も共有している

時間では解決せず。

眷属でも癒せず。

身内ですら
打つ手の無い・・・
儂とお前の
いや
自分自身・・・俺の

傷。

重ねて詫びる。
すまんかったの」

「え?   いや・・・
だ・・・だ大丈夫?だから・・・」

兎に角・・・戻ろう。

そう言えば。
兎に角って・・・仏教用語の兎角亀毛が由来だとか。
ウサギの角と、亀の毛。
妖怪やUMAで画像は有るけど。実質見た事の無い現象では無くて。昔の人が体験した事なんだろう。
亀の毛って水草とかが正体とされ。
兎の角って固有の腫瘍で。ジャッカロープは兎乳頭種が角だと誤認されたとされている。

現代日本のあの場所に帰って。
それから?

「どうするんだろ?」
「先ずは時間じゃが、」
「え?」
「・・・続けるぞ?
失踪扱いとなっておるが。
その”一週間後”に戻る。時間軸なんぞ意味がないぞ?よいな?」

「ああ。うん・・・わかった」
まあ。そうだよな。

「場所はあの教室。あの瞬間に体感時間的には復元されるが、実質は一週間経っておるので、規制線は勿論の事、状況は異なっているんじゃ」
 まあそうなるよな。

「状況・・・つまり異世界に転移した事は隠さず伝え、お主の管理する世界であることは信じてはくれぬ故、任意に任せる。
これは大した事では無いからの。
要は。
お主が帰還し、何をするかを悟らせぬ故」
「え!!なにかするの?」

溜息をつくカルテット。そんなにか?

「消えたクラス単位の失踪。
大事になっておる・・・まあ、それを今回利用するがの」

あ・・・

「原因の収集・・・」
「そ。元の世界でのバトルじゃな」

けど

「むしろ・・・無理なんじゃ?・・・監視・・・付くよね?」
「それ込みじゃな。覚悟しとけよ?」

「いやな感じしかしないけど」

「身内の仕出かした事の跡始末なのでな」

う・・・貧乏くじを引いたか。

「あれ?  でもその後の方が本命だっけ?」
「そうじゃな。起源の一つに辿り着く事、過去に手を加える事。
 が、
 目的・・・故に多少のパラドックスやら影響やら気にするべきではない」

「おおい・・・」

「これはの?
 失われた
 お主の・・・儂の・・・
 願いだ

心せよ。よいな?」


う・・・迫力が違う?

何で

「わ かっ  た・・・よ」


・・・・

「理不尽じゃと感じていてもの。
 従ってくれんと。
 皆の気持ちを裏切れんでのう」


うん
なんとなくだけど
解るんだよね。


胸の中。
奥の深い場所で。
疼く。

不快感と。
希望?

義務感も。

「なんだろう・・・これ?」


戻る事で解決する事って。
時間稼ぎ?
陽動のほうか?

なら。

成すべき事って・・・」


「戻る」

口に出した言葉に応えて。

一瞬で俺の姿は消えて。

残されたカルテットは口角を少し上げる。


失踪と「された現場」
規制線の張り巡らされた教室は夜だったこの時間では明かりは無く。
例え点灯しようとしても
此処への電源線は切断されて、5日間以上経過している。

其処に

俺は実体化を果たして。

帰って来た。

「え?  うぉえ?   なんじゃこれ?」

其処は。
あの時とは
あまりに違っていた。


床には散乱した机とその中身だろう雑多な物・・・教科書やらノートやら筆記具やら。
特に隅に追いやられた状況が凄まじい。

しかも。
様々な状況で床に潜り込んでいる。

物によっては壁と床とに跨っている・・・。

その壁にも。
ノートや紙切れ?・・・まあ、プリントだろうけど突き刺さっている。
もちろん机と椅子も。

凄いのは黒板やホワイトボードの刺さり方だ。

「たわんでいる」

それだけじゃ無くて。
「同化?しているんか・・・コレ」

ガラスに埋め込まれた机と袋?・・・なんか衣類の一部だろう物まで。

教卓が足の一本で窓に固定されてガラスにヒビ一つも入っていない。
しかも。
ガラスによっては溶けていたり、かなり大量の赤い・・・血液だよな・・・これ・・・固まっていないで・・・現在進行形で垂れているんですけど???
で。
数か所、廊下側と外側のガラスにあるし・・・。

何か

布どころか

有機質感の凄い・・・つまり・・・にくだよな。

だってさ?
ぴくぴくと、ピンク色と赤くて・・・白っぽいのが。動いてんだよ?


お化け屋敷の・・・スーパー超リアルバージョン?

頭に浮かんだ日本語としちゃ壊れたフレーズだけど。
他に浮かばないし。
それ以外に表現できない。

とりあえず、そこには・・・行きたくない…かな?

で。
慌てているけどさ?

割と平静な自分にビックリだよ。


グルっと見渡して・・・。
気が付いたんだよね。

全く最初はさ?
動転していて。

観えなかったんだけど。

カメラだよね・・・あれ?


何か所も。
しかも・・・。
動体感知式とか、熱源探知式に。
定点監視も?

ああ、危険だろうから遠隔監視なのか・・・。

って事は。
誰か来るよね?
団体様でさ・・・。

つんだ?


はああ・・・。


けど。
一般被害者だよね?俺は・・・。

事前の打ち合わせの通りに振舞いますか。

クラスの皆・・・此処に戻るのは俺より後。
何か巻き込まれなければ全員無事。

さすがに俺が送還したとは言えない。

まあ。
失敗した召喚術式と言えばいいか?
思考を巡らせていると、不意に何かが嘲笑う気配が包む。

なにか不快感に襲われる。

そうして。

団体様がやって来た。

同時に・・・。
とんでもない異常な気配が湧きたって、振動と目映い光が断続的に、次第に強く。

「近づいて来る?」
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