さくらんぼの恋

碧 貴子

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第二章

21-3

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「……この場合、助けて下さってありがとう、と言ったらいいのかしら?」
 ロキという男と二人きりになって、リディアーヌは微笑んでお礼を言った。
 ただし、警戒はしたままだ。
 それにこの男は、明らかに先程の男達よりも腕が立つ。男の目的がわからない今、警戒を解くわけにはいかない。

「ははは! あんた、凄えな! この状況でそんなこと言えんのかよ!?」
「そう? だって、助けて下さったんでしょう?」
 にっこりと笑うリディアーヌに、ロキと呼ばれた男が、楽しそうに笑った。

「あんた良いねえ! 気に入ったよ!」
「あら、ありがとう。それより、私、もう行かなきゃ」

 言いながら男の隣を通り抜けようとしたリディアーヌだったが、壁に片腕をつける形で通せんぼされたために、通り抜けることはかなわなかった。

「おいおい、つれないことを言いなさんなって」
「……どいて下さる?」
「キスしてくれたら、どいてやるぜ?」
 そう言って、顔を近づけてくる。
 パッと飛び退いて距離を取ったリディアーヌを見て、男が楽しそうな顔になった。

 あのまま倒してしまっても良かったのだが、この先のことを考えると、慎重に行動した方がよい。
 この男の場合、気が付いた後でリディアーヌに報復をしかねない。今みたいに道に迷ったところで、再び襲われても厄介だ。
 それよりは、なんとか懐柔する方が得策だろう。

「はは。あんた、どうして攻撃しなかった?」
「攻撃だなんて。か弱い乙女がそんなことできるわけないでしょ?」
 つんと澄まして素っ呆ける。
 この男の実力がわからない今、手の内は明かさない方がいい。
 そんなリディアーヌに、男がますます楽しそうな顔になった。

「あんた、本当に良いねえ。……俺は、ロキだ」
「リディよ。……それより、ロキ。助けついでに、道を案内してくださらないかしら?」
 ダメもとで頼んでみる。
 しかし意外なことに、ロキはあっさりと頷いた。

「いいぜ。じゃあ、ついてきな」

 顎をしゃくって踵を返したロキに、リディアーヌは拍子抜けしてしまった。
 返答如何によっては、何とかすり抜けてロキを巻こうと思っていたのだ。
 そんなリディアーヌの考えていることが分かったのだろう、ロキがクツクツと笑った。

「安心しな、あんたに何かする気はねえよ。つか、出来ねえだろ」
「……どうして?」
「だってあんた、相当の手練れだろ? 俺は、勝ち目のない戦はしないことにしてんだ」
「ふーん」

 見ただけでリディアーヌの実力がわかるということは、やはりこの男も只者ではない。
 少し後ろをついて歩きながら、リディアーヌはロキを検分していた。
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