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しおりを挟む3度目も、やはり風呂上りだった。
アイスを口にして、振り返るとリビングに居る。
流石に3度目ともなると、岬も最初のように驚くことはなくなっていた。
「……」
「……」
数秒無言で見詰め合った後で、ふうっとため息を吐く。
するとそれを合図に、男が躊躇いがちに話し掛けてきた。
「……アリヅキ・ミサキ、いや、ミサキ・アリヅキか……?」
「ミサキ、でいいですよ。……そういうあなたは、ラインハルトなんちゃらさん?」
ラインハルトはすぐに覚えたが、普段聞きなれない横文字の名前は一回聞いただけでは覚えられない。
すると、男がムッとしたような顔になった。
「ラインハルト・スティフタフだ」
「ステフ?」
「スティフタフ! 一応これでも、名門子爵家だぞ!」
「はあ。では、ラインハルト・スティふ? タフさん」
「変な所で切るな! ラインハルト、でいい!」
「じゃあ、ラインハルトさん。どうして、またここに?」
名前はわかったが、問題はそこではない。
どうして人の家にいきなり現れるのかが、問題だ。
「……私もわからないんだ。森を歩いていると、何故かここに居る」
「はあ。……『邂逅の森』、でしたっけ?」
「そうだ。一昨日も、その前もそうだ」
二度目にラインハルトと名乗るこの男が現れたのは、一昨日だ。
どうやら、時間の感覚は同じらしい。
しかし、その前に確認しなくてはならないことがある。
「あの、ラインハルトさん」
「何だ」
「一応確認なんですが、あなた、幽霊じゃないですよね?」
「当たり前だ!! 私は死んでなんかいない!!」
まあ、ちゃんと影も足もあるし、こうやってしっかり会話が出来てるあたり幽霊には見えないが、パッと現れてパッと消えるのだ、幽霊でないとしたら何だというのだ。
触って確かめたいところだが、さすがにまだ近づくのは怖い。
一応、それくらいの危機管理意識はある。
「そういうそっちこそ何なんだ! 人を惑わす妖精か何かか!?」
「いやいや、ちゃんと人間ですよ。というか、勝手に人の家に現れておいて、何言ってんですか」
妖精と言われて、内心ちょっと嬉しかったのは秘密だ。
しかし、次の言葉で岬は憮然としてしまった。
「そもそも君は、男なのか、女なのか、どっちだ!? 一応体は女のように見えるが、その格好はどうみても少年だろう!?」
「はあ!? どう見ても女でしょうが!? あんた、ちゃんと目ぇついてんの!?」
「そのしゃべり方も! まるっきり少年じゃないか!」
「何言ってんのよ!? ちゃんとあるでしょうが!! ほれっ!!」
「……っ!!」
岬がパジャマの裾を引っ張って胸を強調すると、ラインハルトが真っ赤になって固まってしまった。
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