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6-2(ラインハルト)

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 初めて岬を見た時、ラインハルトは森の妖精に出会ったのかと思った。
 濡れて艶めく黒髪に、上気した透ける象牙色の肌。
 切れ長の、光る黒曜石の瞳に見つめられて、魔法に掛けられたのかと錯覚した。
 声も出せずに魅入られて、しかしそのときは、気付いたら再び森に戻っていた。
 いったい今のは何だったのだと、しばらく呆然とした後で、幻か何かを見たのだとラインハルトは結論付けた。
 しかし、目を丸くしてこちらを見詰める儚げな妖精の様な姿が脳裏に焼き付いたまま離れない。
 冷静になってよく考えると、スプーンを咥えてなにかを食べている最中で、向こうも自分の存在に驚いているような様子だったようにも思うが、あんな変わった格好をした人間はいない。そもそも、女なのか男なのかもわからない。
 やはり、あれは森の妖精だったのだと、自分は誑かされたのかもしれないと考えたが、何故かラインハルトは、もう一度会って確かめてみたくてしょうがなかった。
 まあ結局、妖精などではなく、異世界の、日本という国の女性だったわけだが。

 そして知れば知るほど、その神秘的で儚げな外見と掛け離れた岬の性格と行動に、ラインハルトは振り回されることになった。
 妙齢の女性だというにもかかわらず、あり得ないことにいつも脚を見せた格好をし、自分が居るというのに、下着もつけずに薄い部屋着でウロウロする。
 ちなみに下着をつけていないとわかるのは、ふとした時に服の上から胸の尖りがわかるからだ。
 前かがみになると、部屋着によってはかなり際どい所まで胸が見えるということを、岬は知らない。
 まあ、知っていたとしても、気にしなさそうだが。
 挙句に、ソファーの上でだらしなく座り、あろうことか寝そべりまでする。
 ラインハルトの世界では、密室で未婚の女性が男性の前で、ソファーというか長椅子に座ることはあり得ない。何故なら、二人きりの状態でソファーに座るということは、性的に誘いを掛けているという意味になるからだ。
 ただ、岬の世界ではこちらと常識が違うのだろうということは容易に想像がついたため、流石に誘われているとは思っていないが、それでも見る度ドキリとしてしまう。

 なだらかに緩急を伴ったほっそりと滑らかなふくらはぎ。
 キュッと引き締まった足首から続く形の良い素足。
 それらを惜しげもなく晒し、気怠気にソファーにもたれるその姿に、何度淫欲が沸くのをこらえたことか。
 本来なら夫だけが目にしていいはずのその足が目の前にあって、ふらふらと思わず口付けそうになったこともある。
 その度に、騎士訓戒を必死になってそらんじた。
 騎士たるもの、劣情に流されて女性を襲うなど、絶対にあってはならない。

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