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「……バーベキューぅう? あの、河原とかキャンプでやるやつ?」
「はい! 道具は全部あるので!」

 ニコニコと笑って岬をバーベキューに誘ってきたのは、岬の後輩、篠山愛良だ。
 最近、何故かやたらと岬を色々な催しに誘ってくるのだ。
 とはいっても、岬はラインハルトがいるのでいつも断っているのだが。

「せっかくだし、岬さんも一緒に行きましょうよ!」
「バーベキューねえ……」
「楽しいですよ! それに今の時期だったら紅葉が綺麗ですよ!」
「紅葉……、ねえ……」
「岬さん、外国に行っちゃうんだから、日本の紅葉は見納めじゃないですか。だから、是非!」

 ずいっと身を乗り出して、誘ってくる。
 愛良はキラキラと瞳を輝かせて、何とも楽しそうだ。
 岬は苦笑してしまった。

「でも、他には誰が行くの? さすがに二人だけじゃできないでしょ」
「営業の中村さんとかですね。後は、うちの課の島崎さんとか」

 言われて愛良の後ろを見れば、ちらちらとこちらを窺う島崎の姿がある。
 岬の視線に気づいて、頼みます、といった風に手を合わせてくる。
 そう、島崎は愛良に気があるのだ。
 ちなみに島崎も岬の後輩だ。
 顎に指を掛けて少し悩んだ岬は、ふっと顔を上げて、隣に立つ愛良を見上げた。

「ねえ。それって、他にも人を呼んでいい?」
「…………ラインハルトさん、ですか?」
「あ、うん。ライもそうなんだけど、ほら、うちの課の松江さんとか、友田さんとか」

 岬の言葉に、一瞬愛良が困ったような顔になった。

「……あ、いい、ですけど……」
「ほんと? じゃあ、誘ってくるよ」

 にこっと笑顔を向けた岬は、善は急げとばかりに自席を立って、同じ課の女性陣のもとへと向かった。
 案の定、岬に誘われて最初は非常に驚いた様子の松江と友田だったが、岬の婚約者であるラインハルトも行くことを告げると、二つ返事で了承してくれる。
 婚約者のことは外国出身の年下としか教えなかった岬が、その噂の的のラインハルトを連れて来ると知って、好奇心が沸いたのだろう。
 参加の返事をもらい、バーベキューの幹事が愛良と島崎であることを伝えた岬は、意気揚々と愛良にブイサインを送って見せたのだった。



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