異世界の騎士は風呂上がりのアイスをご所望です

碧 貴子

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 ジュウジュウと炭火で肉を焼きながら、ラインハルトは周りに悟られないよう、ふうっとため息を吐いた。
 ちらりと斜め前方を見れば、楽しそうに島崎とかいう後輩の男と楽しそうに話をしている岬がいる。
 岬が笑顔を見せる度、チリチリと胸が嫉妬で炙られるかのようだ。
 だがあの男は、岬ではなく篠山に気があるらしい。
 ここに来てからずっと、何度も篠山の顔を窺い、なにくれとなく声を掛けているのだ、間違いない。
 何度もそのことを自分に言い聞かせ、必死に湧き上がる独占欲を抑え込む。
 すると、そんなラインハルトの心情がわかったのか、隣で野菜を焼いていた篠山が、ニヤリと笑った。

「ふふふ。気になるんでしょう?」
「……」
「ま、君もわかってると思うけど、岬さんは意外にモテるから」

 すっと近づき、周りに聞こえないように言ってくる。
 本当、嫌な女だ。

 今回のバーベキューなる催しは、この篠山が岬を誘ったのだという。
 きっと、岬に気がある男と岬をくっつけようとでも思ったのだろう。
 くっつかないまでにしても、ラインハルトと岬の仲を引っ掻き回すために画策しただろうことは、間違いない。
 しかし、そうは問屋が卸さない。
 まさか岬がラインハルトを、会社の人間の催しに連れて来るとは彼女も予想外だったはずだ。
 当てが外れて、さぞかし内心地団太を踏んだであろうことを思えば、少しは胸もすく。
 それに意外なことに、島崎が篠山に気があることを、本人は気付いていないらしい。
 多分、篠山以外は全員彼の気持ちに気付いていると思うが、どうやら篠山は、島崎は岬に気があると思っているらしいのだ。
 しっかりしているように見えて、存外鈍い。
 まあ、さすが岬の後輩、とでも言うべきか。

「それに君だったら、女の人は選び放題でしょ。わざわざ岬さんでなくてもいいんじゃない?」
 そう言って、ちらりと先程から一緒に調理を手伝ってくれている女性達に視線を送る。
 何とも腹の立つその仕草に、ラインハルトはピキリと額に青筋が浮かぶのがわかった。

「……私の運命の相手は、ミサキだけだ。それは、ミサキも一緒だ」
「ふーん? あ、そ」

 鼻で笑われて、既に血管はブチ切れる寸前だ。
 しかし騎士たる者、こんな安い挑発ごときで冷静さを失うわけにはいかない。
 しかもきょうは、岬の職場の人間の集まりなのだから、尚更だ。
 一度大きく深呼吸して気持ちを落ち着けたラインハルトは、挑発する篠山にもかかわらず、ニコリと微笑んで見せたのだった。

 とかく人目には分からないよう絡んでくる篠山を躱し、岬の同僚達に失礼のないよう、変に思われないよう対応する。
 今日の為に、出身国の設定になっているノルウェーという国について色々と調べてきたが、それでもやはり答えるときには気を使う。
 元々嘘を吐くのが苦手なラインハルトは、すっかり気疲れしてしまっていた。

 さらには、岬と同期だという中村という男が、どうやら職場で岬と恋仲であると思われていたと知って、流石にラインハルトの我慢も限界に達した。
 岬の態度からして、周囲が言うように二人が付き合っていたということはないだろうにしても、それでもやはり面白くないものは面白くない。
 しかも中村は、随分と落ち着いた雰囲気の大人の男だ。
 岬よりも年下であることを気にしているラインハルトの、まさにコンプレックスを刺激するタイプだ。
 きっと彼の様な男は、自分のように見境なく嫉妬するような真似はしないのだろう。
 せめて、みっともない真似だけはするまいと、ラインハルトは敢えてその場から席を外すことにしたのだった。
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