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しおりを挟む食事を終えて片付けをする頃には、ラインハルトもすっかり今日のメンバーと打ち解けることができていた。
まあ、もちろん篠山は例外だが。
女性陣は洗い物を、ラインハルト達男性陣はテントの片付けを受け持つ。
向うの世界では普段から野営でテント設営をし、扱いに慣れているラインハルトは、あっという間に片づけを終えてしまった。
「ライ君、慣れてるね~」
「殆どライ君にやってもらっちゃって、悪いね」
「別にいいですよ。これぐらいは“朝飯前”なので」
「ははははは! “朝飯前”とか、ほんとライ君日本語上手だよね」
「それ、岬さんがよく使うからでしょ」
男同士、気兼ねなく話をしながら荷物を運ぶ。
なんだかんだ言って岬以外の人間とじっくり話をするのは久し振りで、今回はラインハルトにとってもいい気分転換になったと、今ではラインハルトも感じていた。
「後は私が運んでおきます」
「あ、いい?」
「じゃあライ君、頼むよ」
最後に残った荷物をまとめて担ぎ上げ、駐車場へと運ぶ。
車のトランクに全ての荷物を積み終えて、借りたキーを使ってロックをしたラインハルトは、一息吐いて正面の景色に目を向けた。
駐車場からは、赤や黄色に色づいた美しい山並みが見渡せる。
来たときにも思ったが、本当に美しい景色だ。向こうの世界の紅葉とは、全く違う。
だが、向うに行ってしまったら、この景色を見ることはもう二度とない。
つまり岬がこの美しい故郷の景色を見るのは、これが最後になるのだ。
そのことに思い至ったラインハルトは、ふと、目の前の光景を残しておくことを思いついた。
魔法で記録しておけば、向こうに戻ってからも、いつでもこの景色を見ることが出来る。
こちらに戻ることが叶わないのならば、せめて思い出のよすがくらいは欲しいだろう。
辺りを見回して人が居ないことを確認したラインハルトは、早速手をかざして映像記録の魔法を発動させたのだった。
記録を取り終わって、今度はキャンプ場の隣に広がる木立へと向かう。
ここも木々が鮮やかに色づいて、とても美しいのだ。
それに木立の奥であれば、人目を気にせず魔法を使うことが出来る。
この映像を見たときの岬の反応を想像して、ラインハルトは上機嫌で魔法を発動させた。
かざした手元から、複雑な文様の魔法文字と魔法陣が光りを放ちながら現れる。
小声で呪文を唱えれば、一瞬強い光を放って魔法陣が直径1センチ程度の球体に集束する。
何度もそれを繰り返し、映像を閉じ込めた虹色に光るガラス玉の様なそれを掌に載せたラインハルトは、そっとそれをズボンのポケットにしまった。
「…………ちょっと、……何、今の……」
突然、背後から、驚き狼狽えた声を掛けられる。
ラインハルトが慌てて振り返ると、そこには驚愕に目を見開いた篠山が居た。
「……どういうこと……? 今、君、何したの……?」
どうやら、魔法を使っているところを見られてしまったらしい。
まずい、と固まるラインハルトに、篠山がゆっくりと近づいてきた。
「ねえ、……今の、何?」
「そ、それは……」
「……カメラ……じゃ、ないわよね……」
詰め寄られて後ずさるも、すぐに距離を詰められてしまう。
誤魔化さなくては、と頭ではわかっているものの、思考はぐるぐる回るばかりで言い訳は何も思いつかない。
「……ずっと、おかしいと思ってたのよ……」
「……」
「あのときは酔ってたから、夢でも見たか、自分の記憶違いだと思ってたけど、初めて君に会ったときも、魔法、使ってたわよね?」
「な、なんのことか……」
「岬さんの家に泊まったとき、君、私と岬さんに魔法を掛けたでしょ? 手がキラキラって光ったと思ったら、服に移ったタバコの臭いとか綺麗に消えて、ベタベタしてた体も何故かサッパリしたのよ」
篠山が酔って家に泊まったとき、ラインハルトが浄化魔法を掛けたことを言っているのだろう。
篠山と岬、二人の体から漂う酒とタバコの臭いに閉口して、あのときは思わず浄化魔法を掛けてしまったのだ。
後でしまったと思いはしたが、篠山は泥酔していたしほぼ眠り掛けていたこともあって、覚えてはいまいと思っていたのだ。
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