大嫌いな双子の妹と転生したら、悪役令嬢に仕立て上げられました。

美杉日和。(旧美杉。)

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第一章

第二話 思いがけない事故

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「なんなの、まったく。馬鹿にしてるのもいいところだわ。私が何をしたというのよ」


 私はいら立ちを隠すことなく小走りに学園を抜け、来た時と同じように一人馬車に乗る。

 本来、婚約者のいる者たちはその婚約者と共に来場し、二人そろって帰るというのが常だ。

 来た時も一人なら、帰りには婚約者をとられ一人という始末。

 挙句、してもいない妹へのいじめで婚約者から断罪されるなんて……。

 なんていう日だろう。

 行くときも、うっすらとグレンが迎えに来てくれないことには寂しさを覚えてた。

 でも今はそれ以上だ。

 こんなめでたい日に、こんなことになるなんて。

 私のことが嫌いだったのなら、憎かったのなら、直接言ってくれればいいのに。

 少なくとも私はグレンのことを、ちゃんと婚約者として見てきたつもりだった。


「ああ、もう元婚約者か……」


 感情が溢れ、独り言が口からこぼれ落ちる。

 もちろん、私のこの言葉に反応する者は誰もいない。

 馬車の外の流れる景色さえ寂しく思えるのは、たぶん私の心の中そうだからだろう。


「あーあ、なんか、バカみたいね」


 別に好きという感情がグレンに対してあったことは一度もなかった。

 幼馴染であり、家族間もとても仲のよい友人。

 そんな立ち位置でしか私は捉えてなかった。

 ただ性格は私もグレンも、とても似ていたと思う。

 基本群れることなく、学園の主席だったグレンと次席の私。

 多くを語り合うことはなくても、お互いに勉学に励みこの国の未来を思ってきた。

 女である私はこの国では大した職につけないとしても、次期宰相となるグレンを側で支えられたら。

 ただそう思ってきた。

 そう思って来たのに。


「そう思ってきたのは、私だけだったってことか……。なんか、ね。馬鹿みたい」


 私が、だ。

 まぁ結婚する前で良かったと思おう。

 結婚した後に不倫をされたのだったら、きっと目も当てられない。

 そうね。そうでも思わないと、なんかモヤモヤが止まらなくなってしまうもの。

 でもそれにしたって、私と婚約破棄してから付き合えばいいものを。

 ああいうのを、脳みそがお花畑というのかしら。

 恋って、そんなものなのかもしれないわね。

 私には無縁すぎて、アレだけど。


「はぁ。だとしても、こんな巻き込み方はないわよね。婚約破棄をするにしたって、私を悪役にする意味がどこにあるのかしら」


 ただ、思えばあの子チェリーは私のモノを欲しがる子だったわね。

 服でも人形でも。

 私が持っているものは、なんでも自分のモノにしたがった。

 そのくせ、自分のモノになった途端興味をなくすからたちが悪い。

 でもまさか、婚約者までとは思ってもみなかった。

 ただ今回は服や人形のように、興味がなくなったからとはいかないだろうけど。

 
「あーーーー、帰ったらなんて説明すればいいのかしら」


 ため息ばかりが零れ落ちる。

 特にすごく両親との仲が悪いワケではない。

 でも妹よりは、両親との仲は良くない。

 あの子が両親に泣きつけば、もしかしたら私がいじめたなんてでっち上げすら本気にしてしまうんじゃないかな。

 そうしたら私はどうなるのだろう。

 良くて、おじい様たちのとこに送られるわね。

 悪ければ勘当か。

 勘当されたらどうなるのかしら。

 平民となるか、どこかの教会に入れられるか。そんな感じなのかな。

 なんだかなぁ。私はなにもしてないのに。


「でももう……どうでもいいかな……。信じてももらえない人たちのとこにいても、私が苦しくなるだけだし。平民になったって、教会に入れられたって……ココに残るよりはマシかもしれない」


 落とした視線を馬車の外に向けた。

 暑くなってきた初夏の日差し。

 行き交う街の人々は皆足早だ。

 中央広場を抜け、道がガタガタとし始める。


「ガタガタ? んんん? こんなにこの道、揺れたかしら」


 郊外に出たわけでもないのに、馬車が大きく横に揺れる。

 思わず椅子から転げそうになり、ドアの持ち手を掴んだ。

 明らかにいつもと何かが違う。


「な、わ、ちょっと、何かあったの?」


 外の御者ぎょしゃへ大きく声をかける。


「お嬢様それが……馬車が制御不能で!」

「制御不能って! どうしてそんなことになってるの」

「分かりません。このままだともう……」

「もうって、もうってなに?」


 聞きたいようで、聞きたくもない話の続きを御者へ問いかける。


「ああ、お嬢様、頭を低くしてどこかに掴まって下さい! ああ、ダメだ!」


 その言葉も終わらぬうちに、馬車が横倒しになる。

 ガタガタと耳をつんざくような大きな音。


「きゃーーーー」


 誰の声ともいえぬ叫び声と共に、体中に痛みが走り身動きが取れない。

 そんな状況でも、どこか冷静な自分がいた。


「あれ……なんだっけ?」


 おかしいな。いつだっただろうか。

 ついさっきのような気もする。

 こんな場面。こんな痛み。

 私は、知ってる。ああ、でも思い出せない。

 でも確かにこの感じ、二回目だ。

 動かない体も落ちていく体温も、そうすべて。

 そんなことを意識がなくなるまで、ぼんやりと考えていた。
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