大嫌いな双子の妹と転生したら、悪役令嬢に仕立て上げられました。

美杉日和。(旧美杉。)

文字の大きさ
12 / 89
第一章

第十一話 ひと時の休憩

しおりを挟む
「つ……、疲れた」


 貴族の買い物とは、こんなにも疲れるものなのだろうか。

 しかしそこまでふと考えて、自分でウインドウショッピングとかしたことなかったなぁと思い出す。

 いつもうちの一族が買うという、お店にまずは連れて行かれた。

 そこで母とルカがいいと行った何十着ものドレスを着せられ、いくつものコーディネートを合わせたことか。

 結局オーダーメイドは間に合わないので、既製品をいくつか購入したものの夜会に出るのに合格出来たドレスはなかった。


「まだ二軒しか回ってないのに、ソレでどうするのよ。体力なさずぎよ」

「まぁまぁ奥様。お嬢様はあまりこういったコトがお好きではないみたいなようなので」

「そーは言っても、夜会のドレスが決まらないと困るでしょ」

「それはそうですね」


 ああ、二人ともなんだかんたと言って容赦はない。

 既製品でいいんじゃないかと言っても首を縦に振ってくれなかった。

 めんどくさくなった私がチェリーのドレスを直して着たいと言った時の二人の表情など、まさに鬼。

 そんなに怒らなくてもいいと思うのに。

 確かにチェリーのふわふわしたドレスが似合わないことは分かっているけど。


「ともかく、ここで一旦休憩してからもう一軒行くわよ」

「ですね」

「えええ」

「なにその返事は、アイリス」

「ナンデモアリマセン」


 私のドレスを決めるだけで、どうして二人はこんなにもノリノリなのだろう。

 今までこんな風に他人と関わったことがないから、楽しいという前にまだ不安の方が大きい。

 自分のリアクションも、相手の顔色も。

 これで本当に合っているのか。

 すぐにそんなコトを考えてしまっている自分がいる。


「ここはなんの店なんですか?」


 母に連れてこられた店は、貴族専門店が立ち並ぶ店の一番中央に位置し、黒い外壁がシックな造りのお店だった。

 入り口にはボーイさんが立っているあたりからして、飲食系のような気はするのだが。


「あら、アイリスはこのお店初めてだった? 最近流行っているのよね~」


 そう言いながら中に通されると、店内には甘い焼き菓子の匂いが充満している。

 お店は結構な賑わいをみせており、どうやら一階の半分がテイクアウトとイートインスペースになってるようだ。

 しかし母の顔を確認したボーイは、迷うことなく私たちを二階へ案内した。

 二階は一階と違い、静かに音楽が流れ客はほとんどいない。

 猫足のテーブルには金の模様が描かれていた。


「一階と二階とでは、ずいぶん違うのですね」

「もちろんでございます。こちらは大切なお客様専用のスペースとなっております」


 ぽつりとこぼした私の言葉に、ボーイは親切に答える。

 ああ、二階は貴族専用ってことね。

 おそらく入り口でボーイが立っていて、そこで客を判断しているのだろう。

 特別扱いされるのが好きな貴族たちに人気というのも頷ける。

 私たちは外が良く見える、日当たりのいい窓際の席に通された。


「アイリスは何にする?」

「ん-、どれがいいのか……」

「とてもたくさん種類があるんですね」

「ホントね。これは迷うわね」


 メニューにはケーキやタルト、クッキーに紅茶やお茶が数種類書かれていた。

 値段は大体、食べ物が銀貨2枚で飲み物が銀貨1枚なので転生前のお金に換算するとどれぐらいなのかな。

 まぁまぁ、貴族の店だから高いとは思うんだけどね。

 どちらにしても、こういうお店はなんだか落ち着かない。


「あー、いつもの席空いてないじゃないですのぉ」

「ホントね。どーします~?」


 やや大きな声を出しながら、女性二人を両脇に侍らせた男性の貴族が階段を上がってくる。

 ジロジロ見るつもりはないのだが、身分の高そうな男性を囲みキャッキャと騒ぐ様は、あまり気持ちのいいものではない。

 あきらかにこの席に座りたくて、私たちが邪魔と言っている気もしなくないが気にしない。

 いちいち気にしていたら、きっとダメなヤツだと思うから。


「アイリスそんなに眉間にしわ寄せると、しわしわになっちゃうわよ」

「奥様、お嬢様はまだぴちぴちですよ」

「はいはい。二人ともそんな話はいいから、もう決まったの?」

「もちろん本日のオススメよ」


 初めから決まっているとばかりに、母がメニューを指さす。

 ああ、確かにオススメというぐらいなのだから、下手に分からずに考えるよりは美味しいのかも。


「あのぅ、わたしも同じものをいただいても本当によろしいのでしょうか?」

「当たり前でしょ、ルカ。今日一日お買い物に付き合ってもらっているんだから、いいに決まっているじゃない。すみません」


 軽く手を上げると、すぐに店員が注文を取りに来る。


「本日のおススメのセット三つとあとコーヒーも三つお願いします」

「かしこまりました、すぐご用意させていただきます」

「あ、そうそう。お土産に焼き菓子をいくつか見たいのだけど、それもお願いできるかしら」

「はい、もちろんでございます。しばらくお待ちください」


 手際よく注文を聞くと、店員は下の階へ降りて行った。

 さすがにお土産用の焼き菓子は下でも売っているものだろうから、値段は変わらないはず。

 自分たちの分に、使用人たちの分を買うとして30個も買えば数は足りるかな。

 ざっくりと私は使用人たちの数を指折り数えた。

 すると、奥の席からクスクスと笑う声が聞こえてくる。

 顔を上げれば先ほどいた男性は席を立ったのか、女性が二人でこちらをちらちら見ながら会話していた。


「やだぁ、お金の計算しているのかしら」

「ここの持ち合わせ、足りないんじゃない? あなた、貸してあげたら」

「こんな店でも足りないような貧乏な人、いるのー?」

「クスクスクス」

「恰好からして、田舎から出てきた貴族じゃないの」

「貴族じゃなくて、どっかの商人の娘でしょ」

「商人の娘も、この2階へ通されるわけ?」

「店なんて、お金を持ってればみんな同じなのよ」

「やだぁ」


 どうやら二人組の女性は私が人数を数えていたのを見て、お金の計算をしていると勘違いをしているようだ。

 二階が貴族席だと分からない時点で、なんとも残念な人たちね。

 相手にするのもバカバカしいけど、うちは一応は侯爵家。

 さすがに格好は買い物に来るために簡素なワンピースを着ているものの、そこまで言われることもないんだけど。

 ルカを見れば、今にも文句を言いに行きそうな顔をしている。

 ここは一応店の人から注意をしてもらった方がいいのかもしれないわね。

 私は先ほど注文を受けたボーイが帰ってくるのを待つことにした。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

悪役令嬢の物語は始まりません。なぜならわたくしがヒロインを排除するからです。

霜月零
恋愛
 わたくし、シュティリア・ホールオブ公爵令嬢は前世の記憶を持っています。  流行り病で生死の境を彷徨った時に思い出したのです。  この世界は、前世で遊んでいた乙女ゲームに酷似していると。  最愛のディアム王子をヒロインに奪われてはなりません。  そうと決めたら、行動しましょう。  ヒロインを排除する為に。  ※小説家になろう様等、他サイト様にも掲載です。

処理中です...