大嫌いな双子の妹と転生したら、悪役令嬢に仕立て上げられました。

美杉日和。(旧美杉。)

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第二章

第二十六話 婚約申し込み

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 二人の会話がイマイチ分からないが、何かを賭けていたか何かだろう。

 もしかして私を賭けの対象にしていたんじゃないでしょうね。

 それだったら、かなり失礼なんだけど。

 王族じゃなければ、とっくにツッコんですんだけど。
 
 なんか腹が立つわ。

 ただそれにしても、今の税の話からどこに繋がるというのか。

 脈絡がなさすぎる気がするんだけど。


「アイリス、君に婚約を申し込みたい。いいだろうか」

「は?」


 隣にいたキースが手を取り、見つめてくる。

 今まで見たチャラチャラした表情は微塵もなく、真剣そのものだ。

 その茜色の瞳に吸い込ませそうな感覚を覚える。

 いやいや、そうではなくて婚約って。

 ここまでくると、脈絡云々じゃないわよ。

 何をどうしたらこんな展開になるの。


「え、急に何なのですか、婚約って。グレン、これは一体どういうことなの!」

「キースが女の子は可愛いけど、結婚を考えるような相手はいないと前々から言っていてね。今の立場上、そういうわけにもいかないだろうと言っていたんだ。それで、どんな人となら結婚を考えれるんだと聞いたら、僕を女にしたような子がいれば考えてやると言ったものだからね」


 もしかしてこれが賭けってこと? 

 でもそれにしたって。なんかいろいろ酷いんだけど。


「ちょっと待って、それって私がグレンの女版ってこと? 私、そんなに腹黒くもないけど」

「ちょっと待ってくれ。僕は知識のことを言っていたんだが、これは少し話し合いが必要かな」


 ああいけない、つい本音が。

 だってあの言い方だと褒められているのか、どうなのか分かりづらいし。

 それに腹黒いっていうのは、絶対に間違ってはないと思うのよね。

 裏でコソコソコソコソ。

 グレンは一体、何がしたいのかしら。

 チェリーと一緒になって私を断罪したときは、絶対に敵だと思ったのに。

 今はこうやって、私と殿下の仲をもとうとしてる。

 この前の言い方だと、目的があるのは分かっているけど。

 イマイチそれが何なのか分からないのよね。


「君みたいに美しく、そして聡明な人は今までに会ったことがない」


 興奮するあまり、キースに手を握られていることをすっかり忘れていた。

 だめだ。

 まずグレンのことを考える前に、今置かれた状況をどうにかしないと。


「あのですね、まだお会いしたのは二度ほどしかないではないですが」

「時間の問題ではないんだよ。君となら、良きパートナーとなれるはずだ。もしそんなに時間が気になるなら、毎日でも口説きに行くよ」

「な、あの、殿下そういう問題ではありません」


 鏡を見なくても、自分の顔が赤くなっているのが分かる。

 つい最近、婚約破棄されたばかりで、しかも仕立て上げられた悪役令嬢。

 そんな人間にもう婚約を申し込む人間などいないと思ったのに。
 
 何がなんだか、展開が早すぎてついていけないわ。


「急にあれこれ言われてはアイリスも混乱していますよ、キース」

「ああそうだな。だが、前向きに検討して欲しい。俺は本気だ。侯爵には今朝のうちに手紙でおおまかな一報を入れてはあったが、近いうちに正式に挨拶へ行かせてもらう」

「正式、に」

「ああ、そうだ。きちんと婚約を結んで欲しいと思っている」

 
 お父様がここに入る前に、何か言いたげだったのはこれなのね。

 その一報で、なんとなく私が置かれるだろう状況を理解していた。

 だからもし嫌だったら、絶対に断ってもいいって。

 苦手なタイプの人間だったはずなのに、急に、それもこんなに真剣に言われると断りづらい。

 そして何より、この瞳を見ていたいなと、ほんの少しだけ思う自分がいることに自分が一番驚いた。

 私、どうしてしまったんだろう。

 らしくない。うん。ホントにどうしちゃったのかな。


「ですが、別に私ではなくても良かったでしょう」

「いや、君しかいないんだ。なんせ、知識だけではなくその強さに惹かれたのだから」

「強さって」


 ああ、昨日のあのことね。

 確かに普通の令嬢だったらきっと泣いていたでしょう。

 でも私は最後まで侯爵令嬢としてキースたちの前で振る舞った。

 それが良かったのか知れない。


「それとも、口説かれることは迷惑だろうか。まだグレンに気があるとか、新しい恋人がもういとか」

「どちらも絶対にあり得ません」

「アイリス、絶対って。さすがの僕でも傷つくんだが」

「そうかしら。散々なコトをしてくれた上に、何を考えてるのかも全く分からないような人はちょっとねぇ」

「一度聞いてみたかったんだが、アイリスにとってグレンはどんな人物に見えるんだい?」

「腹黒インテリメガネ以外に、何があるんですか」

「くくくくくっ。まさか、貴女からそんなことを言われるなんて。腹黒メガネか、これはいい」

「アイリス……」

「あはははは。グレン、残念だったな。腹黒メガネ、腹黒」

「キース、いい加減笑いすぎです」


 よほどツボなのか、キースは拳でソファーを叩きながら笑い転げている。

 だってそれ以外に、何があるというのよ。

 グレンの視線が突き刺さるように痛いが、あくまでも無視を決め込んだ。 
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