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第二章
第二十八話 キースの立ち位置
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外に出ると、すでに日はやや傾きかけていた。
あっという間だと思っていた時間も、結構経っていたらしい。
それにしても、あの空間はいろんな意味で初めてだった。
敬語もほぼ使わず論議をすることは楽しかったけど、まさか求婚されるなんて。
うわの空の私は、父にそのまま馬車のに乗せられる。
先ほどのやり取りが気に障ったのか、父は少し不機嫌だった。
「アイリス、いつから殿下とは知り合っていたんだ」
沈黙を先に破ったのは、父だった。
父はいまだに眉間にシワを寄せたままだ。
キース様のこと、あんまり好きではないのかな。
まぁ、私も第一印象はアレだったけど。
「いつと言われても、この前カフェで一度。昨日、夜会からの帰り際に一度。今日、登城するように言われてやっとマトモに会話したぐらいです」
「で、今日婚約を申し込まれたと」
「そうですね。でもお父様は知っていたのでしょう? もしかしたら、今日婚約を申し込まれるかもしれないことを」
「今朝の手紙に、それらしことが書いてあったからなぁ」
「そうなんですね……。お父様、一つお聞きしてもよろしいですか?」
「ああ、なんだ?」
「先ほど、お父様は殿下のお立場をとおっしゃられましたが、あれは王族としてのお立場ということですか?」
「……」
父は考えるように、片手で額を押さえる。
ああ、もしかして聞いてはいけない質問だったのかしら。
さっきから何度もそんな風な会話だったから、つい引っかかってしまったんだけど。
「ああ、お父様。言えないようなことならば、大丈夫ですわ」
「ああ、いや……そうだな……。王族としてという意味ではないんだよ」
肩を落とし、小さくなる私を見た父が慌てて答える。
「これは、まだ内々の話だから誰かに言ってはいけないよ。知っているのは王宮でもごくわずかな人間だけだ。現国王が退位を願っていてね、そう遠くないうちにキース殿下が王位を継承をすることになるだろう。今はその調整段階で、国王が退位した後に混乱がないように、継承と同時にキース殿下は婚姻をという形を取ることになるはずだ」
現国王の体調不良は前々から貴族間では噂になっていた。
しかも国王夫妻には子どもはいない。
そうなれば、自然的に王位継承権第一位のキースが次期国王となる。
次期宰相候補であるグレンが、常にサポートしているところを見ると、確かな現実味がある。
しかし、問題はその先。
王位継承の後すぐに婚姻ということは、キースと結婚する人間は自動的に次期王妃となるということ。
「ちょっと待って下さい。もしかして、私がキース様の婚約をお受けした場合」
「アイリスが次期王妃ということだ」
「な、バ……」
口を押え、言いかけた言葉を噤む。
令嬢として言ってはいけない言葉が出かけてしまった。
記憶を取り戻してから、どうも性格が唯花だった頃に引っ張られてしまっている気がする。
チェリーに気付かれないためにも、もっと慎重にならないと。
「侯爵家としては娘が王妃となるということは、これほどない名誉なことだとは思う。だがお前の父としては、何もそんな苦労することが目に見えている所へなど行かせたいとは思わない」
侯爵家の立場としては、王家が望むのならば娘を差し出すのが普通だ。
それに本来ならば、こちらに拒否権など存在しない。
しかし、キースはちゃんと父に許可を取ろうとしてくれた。
それが当たり前であるかのように。
そして父も、父としての意見をキースに言ってくれた。
それだけでも、みんな私のことを考えてくれていることが分かる。
たったと言ってしまえばそうなのかもしれない。
でもみんながそれぞれの立場をおしても私のことを一番に考えてくれている。
それだけで泣きそうになってしまう。
「お父様」
「今回はいろいろありすぎた。お前はまだゆっくりでいいと思う」
「ありがとうございます。そうですね……全部、グレン様が悪いということにしておきましょう」
私はその結論へ至る。
こうなるなら、さすがに前もって情報を共有してくれてもいいはずだ。
そうすれば、もう少し心構えやキースへの接し方を考えたものを。
あっという間だと思っていた時間も、結構経っていたらしい。
それにしても、あの空間はいろんな意味で初めてだった。
敬語もほぼ使わず論議をすることは楽しかったけど、まさか求婚されるなんて。
うわの空の私は、父にそのまま馬車のに乗せられる。
先ほどのやり取りが気に障ったのか、父は少し不機嫌だった。
「アイリス、いつから殿下とは知り合っていたんだ」
沈黙を先に破ったのは、父だった。
父はいまだに眉間にシワを寄せたままだ。
キース様のこと、あんまり好きではないのかな。
まぁ、私も第一印象はアレだったけど。
「いつと言われても、この前カフェで一度。昨日、夜会からの帰り際に一度。今日、登城するように言われてやっとマトモに会話したぐらいです」
「で、今日婚約を申し込まれたと」
「そうですね。でもお父様は知っていたのでしょう? もしかしたら、今日婚約を申し込まれるかもしれないことを」
「今朝の手紙に、それらしことが書いてあったからなぁ」
「そうなんですね……。お父様、一つお聞きしてもよろしいですか?」
「ああ、なんだ?」
「先ほど、お父様は殿下のお立場をとおっしゃられましたが、あれは王族としてのお立場ということですか?」
「……」
父は考えるように、片手で額を押さえる。
ああ、もしかして聞いてはいけない質問だったのかしら。
さっきから何度もそんな風な会話だったから、つい引っかかってしまったんだけど。
「ああ、お父様。言えないようなことならば、大丈夫ですわ」
「ああ、いや……そうだな……。王族としてという意味ではないんだよ」
肩を落とし、小さくなる私を見た父が慌てて答える。
「これは、まだ内々の話だから誰かに言ってはいけないよ。知っているのは王宮でもごくわずかな人間だけだ。現国王が退位を願っていてね、そう遠くないうちにキース殿下が王位を継承をすることになるだろう。今はその調整段階で、国王が退位した後に混乱がないように、継承と同時にキース殿下は婚姻をという形を取ることになるはずだ」
現国王の体調不良は前々から貴族間では噂になっていた。
しかも国王夫妻には子どもはいない。
そうなれば、自然的に王位継承権第一位のキースが次期国王となる。
次期宰相候補であるグレンが、常にサポートしているところを見ると、確かな現実味がある。
しかし、問題はその先。
王位継承の後すぐに婚姻ということは、キースと結婚する人間は自動的に次期王妃となるということ。
「ちょっと待って下さい。もしかして、私がキース様の婚約をお受けした場合」
「アイリスが次期王妃ということだ」
「な、バ……」
口を押え、言いかけた言葉を噤む。
令嬢として言ってはいけない言葉が出かけてしまった。
記憶を取り戻してから、どうも性格が唯花だった頃に引っ張られてしまっている気がする。
チェリーに気付かれないためにも、もっと慎重にならないと。
「侯爵家としては娘が王妃となるということは、これほどない名誉なことだとは思う。だがお前の父としては、何もそんな苦労することが目に見えている所へなど行かせたいとは思わない」
侯爵家の立場としては、王家が望むのならば娘を差し出すのが普通だ。
それに本来ならば、こちらに拒否権など存在しない。
しかし、キースはちゃんと父に許可を取ろうとしてくれた。
それが当たり前であるかのように。
そして父も、父としての意見をキースに言ってくれた。
それだけでも、みんな私のことを考えてくれていることが分かる。
たったと言ってしまえばそうなのかもしれない。
でもみんながそれぞれの立場をおしても私のことを一番に考えてくれている。
それだけで泣きそうになってしまう。
「お父様」
「今回はいろいろありすぎた。お前はまだゆっくりでいいと思う」
「ありがとうございます。そうですね……全部、グレン様が悪いということにしておきましょう」
私はその結論へ至る。
こうなるなら、さすがに前もって情報を共有してくれてもいいはずだ。
そうすれば、もう少し心構えやキースへの接し方を考えたものを。
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