大嫌いな双子の妹と転生したら、悪役令嬢に仕立て上げられました。

美杉日和。(旧美杉。)

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第一章

第十七話 仕立て上げられた悪役令嬢

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「まぁ」

「あれが……」

「わぁ」


 クスクスという笑い声や、いろいろな声が聞こえてくるが私には気にする余裕はない。

 私たちは少し進み、会場の中央で立ち止まった。

 チェリーがちらりと後ろを振り返り、何か言いたげに微笑みかけてきた。

 たったそれだけのことで、ざわりと背筋が寒くなる。

 なに? なんなの? 

 嫌な予感に辺りを見渡せば、他の貴族たちの視線が好意的ではないことに気づいた。

 ああ、やられたわ。

 まさかこの短時間で、みんながチェリーの味方になっていたなんて。

 どおりで、ずっと上機嫌なはずよね。


「それにしてもそのドレスの色もしかして、グレンさまは……」

「ん? ごめん、良く聞こえなかったんだけど」

「姉ぇさま、どうかしたんですの~? 顔色が悪そうですけど」

「そうかしら。少し、人に酔ったのかもしれないわ。どこかで休ませて……」

「大丈夫ですよ、姉ぇさま。もうチェリーは何もいませんから。そんな風になさらなくても」

「それ、どういう意味?」


 会話に脈略がなさすぎる。

 だいたい、どうして私がそんなことを言われなきゃいけないの?

 何にもしていないのに。

 そして今ここでそんなことを宣言する意味がどこにあるというの。


「まぁ、チェリー様はなんとお優しいんでしょう」

「本当ですわ。それに比べてねぇ」

「ほーんと。なんというか。嫌ですわ。自分のせいで婚約者を失ったというのに」

「それに皆さま、見えます? あんな、まるで男を漁りに来たようなドレス」

「あはははは。本当ね」


 気づけば、私たちは会場の中央近くで他の令嬢たちに囲まれる形となっていた。

 そして彼女たちが私に嫌味を並べ立てる様、チェリーの分身かのように思えた。

 私は一瞬何が起きたのか分からず、言葉を失った。

 なんで……。

 社交界では確かに友だちなんていなかった。

 そして今みんながチェリーに吹き込まれていたというのも分かる。

 でもそれでも。

 なんでこんな場所でこんな大人数から、ありもしないことを言われないといけないの。


「皆様、そんなに姉ぇさまを責めないで下さいな。わたしがいけないんですの。だって、姉ぇさまの婚約者であったグレンさまのことを愛してしまったんですもの」

「ですが、所詮婚約は親同士が決めたことではないですか。本物の愛には勝てるわけがないんですよ」

「そうですよ。それなのに嫉妬した挙句に、実の妹に手を上げるなんて」

「こんなにお優しい妹だというのに、姉はなんとも残念な方ですわね」

「ほーんと。大違いだわ」

「でもチェリーは、姉ぇさまのことも大好きだったのです」

「まぁ。だからって、こんな方を許すことなどないのですよ、チェリー嬢」

「そうですわ。やっていいことと悪いことがありますわ」

「ほんとに。だから婚約者に捨てられるんですよ」

「あはははは」


 チェリーはこうなることを知っていたのね。

 というよりも、こうなるように他の令嬢たちを味方につけた。

 こんな大きな、王家主催の夜会で私を悪役令嬢に仕立てたまま、いろんな人に罵らせるのはさぞ気分がいいでしょうね。

 家族とほんの少し打ち解けて、全部うまくいくような浮かれてた自分がバカみたい。

 私の味方がいないことなど、前世からずっと知ってたじゃないの。

 いつだってそう。

 期待するから……うまくいくかもしれないと思うから苦しくないる。

 だからずっと最悪になる未来ことしか考えてこなかったのに。

 そうすれば、当たったってダメージが少ないから。

 私は作った拳に力をこめ、唇を噛みしめた。


「このドレスはグレンさまが送って下さったもので、男漁りのためのモノではありませんわ。それも私はチェリーをいじめたこともありません」

「まぁ。この期に及んでシラを切るなんて」

「ホントね。嫌ですわ」

「私はそんなつもりなどありません。していないことはしていない。ただそう主張しているだけで」

「でも元婚約者からいただいたドレスを着るなど、未練があるということでしょう?」

「だから、そうではなくて」

「チェリー嬢はホントに可哀想ですわね。こんな方が姉だなんて」

「!」

 
 私だって、好きで姉になったわけじゃない。

 むしろ、こっちから願い下げよ。

 いい加減、本当に開放してよ。

 もういいじゃない。

 ずっとあの子の下で苦しんできたんだから。

 全部が裏目に出てしまっている。

 このドレスを着てきたことも。

 どれだけ今ここで話しても、言い訳をしているとしか聞こえないのでしょうね。

 ああ、ホント最悪だわ。
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