20 / 89
第一章
第十七話 仕立て上げられた悪役令嬢
しおりを挟む
「まぁ」
「あれが……」
「わぁ」
クスクスという笑い声や、いろいろな声が聞こえてくるが私には気にする余裕はない。
私たちは少し進み、会場の中央で立ち止まった。
チェリーがちらりと後ろを振り返り、何か言いたげに微笑みかけてきた。
たったそれだけのことで、ざわりと背筋が寒くなる。
なに? なんなの?
嫌な予感に辺りを見渡せば、他の貴族たちの視線が好意的ではないことに気づいた。
ああ、やられたわ。
まさかこの短時間で、みんながチェリーの味方になっていたなんて。
どおりで、ずっと上機嫌なはずよね。
「それにしてもそのドレスの色もしかして、グレンさまは……」
「ん? ごめん、良く聞こえなかったんだけど」
「姉ぇさま、どうかしたんですの~? 顔色が悪そうですけど」
「そうかしら。少し、人に酔ったのかもしれないわ。どこかで休ませて……」
「大丈夫ですよ、姉ぇさま。もうチェリーは何も怒っても恨んでもいませんから。そんな風になさらなくても」
「それ、どういう意味?」
会話に脈略がなさすぎる。
だいたい、どうして私がそんなことを言われなきゃいけないの?
何にもしていないのに。
そして今ここでそんなことを宣言する意味がどこにあるというの。
「まぁ、チェリー様はなんとお優しいんでしょう」
「本当ですわ。それに比べてねぇ」
「ほーんと。なんというか。嫌ですわ。自分のせいで婚約者を失ったというのに」
「それに皆さま、見えます? あんな、まるで男を漁りに来たようなドレス」
「あはははは。本当ね」
気づけば、私たちは会場の中央近くで他の令嬢たちに囲まれる形となっていた。
そして彼女たちが私に嫌味を並べ立てる様、チェリーの分身かのように思えた。
私は一瞬何が起きたのか分からず、言葉を失った。
なんで……。
社交界では確かに友だちなんていなかった。
そして今みんながチェリーに吹き込まれていたというのも分かる。
でもそれでも。
なんでこんな場所でこんな大人数から、ありもしないことを言われないといけないの。
「皆様、そんなに姉ぇさまを責めないで下さいな。わたしがいけないんですの。だって、姉ぇさまの婚約者であったグレンさまのことを愛してしまったんですもの」
「ですが、所詮婚約は親同士が決めたことではないですか。本物の愛には勝てるわけがないんですよ」
「そうですよ。それなのに嫉妬した挙句に、実の妹に手を上げるなんて」
「こんなにお優しい妹だというのに、姉はなんとも残念な方ですわね」
「ほーんと。大違いだわ」
「でもチェリーは、姉ぇさまのことも大好きだったのです」
「まぁ。だからって、こんな方を許すことなどないのですよ、チェリー嬢」
「そうですわ。やっていいことと悪いことがありますわ」
「ほんとに。だから婚約者に捨てられるんですよ」
「あはははは」
チェリーはこうなることを知っていたのね。
というよりも、こうなるように他の令嬢たちを味方につけた。
こんな大きな、王家主催の夜会で私を悪役令嬢に仕立てたまま、いろんな人に罵らせるのはさぞ気分がいいでしょうね。
家族とほんの少し打ち解けて、全部うまくいくような浮かれてた自分がバカみたい。
私の味方がいないことなど、前世からずっと知ってたじゃないの。
いつだってそう。
期待するから……うまくいくかもしれないと思うから苦しくないる。
だからずっと最悪になる未来ことしか考えてこなかったのに。
そうすれば、当たったってダメージが少ないから。
私は作った拳に力をこめ、唇を噛みしめた。
「このドレスはグレンさまが送って下さったもので、男漁りのためのモノではありませんわ。それも私はチェリーをいじめたこともありません」
「まぁ。この期に及んでシラを切るなんて」
「ホントね。嫌ですわ」
「私はそんなつもりなどありません。していないことはしていない。ただそう主張しているだけで」
「でも元婚約者からいただいたドレスを着るなど、未練があるということでしょう?」
「だから、そうではなくて」
「チェリー嬢はホントに可哀想ですわね。こんな方が姉だなんて」
「!」
私だって、好きで姉になったわけじゃない。
むしろ、こっちから願い下げよ。
いい加減、本当に開放してよ。
もういいじゃない。
ずっとあの子の下で苦しんできたんだから。
全部が裏目に出てしまっている。
このドレスを着てきたことも。
どれだけ今ここで話しても、言い訳をしているとしか聞こえないのでしょうね。
ああ、ホント最悪だわ。
「あれが……」
「わぁ」
クスクスという笑い声や、いろいろな声が聞こえてくるが私には気にする余裕はない。
私たちは少し進み、会場の中央で立ち止まった。
チェリーがちらりと後ろを振り返り、何か言いたげに微笑みかけてきた。
たったそれだけのことで、ざわりと背筋が寒くなる。
なに? なんなの?
嫌な予感に辺りを見渡せば、他の貴族たちの視線が好意的ではないことに気づいた。
ああ、やられたわ。
まさかこの短時間で、みんながチェリーの味方になっていたなんて。
どおりで、ずっと上機嫌なはずよね。
「それにしてもそのドレスの色もしかして、グレンさまは……」
「ん? ごめん、良く聞こえなかったんだけど」
「姉ぇさま、どうかしたんですの~? 顔色が悪そうですけど」
「そうかしら。少し、人に酔ったのかもしれないわ。どこかで休ませて……」
「大丈夫ですよ、姉ぇさま。もうチェリーは何も怒っても恨んでもいませんから。そんな風になさらなくても」
「それ、どういう意味?」
会話に脈略がなさすぎる。
だいたい、どうして私がそんなことを言われなきゃいけないの?
何にもしていないのに。
そして今ここでそんなことを宣言する意味がどこにあるというの。
「まぁ、チェリー様はなんとお優しいんでしょう」
「本当ですわ。それに比べてねぇ」
「ほーんと。なんというか。嫌ですわ。自分のせいで婚約者を失ったというのに」
「それに皆さま、見えます? あんな、まるで男を漁りに来たようなドレス」
「あはははは。本当ね」
気づけば、私たちは会場の中央近くで他の令嬢たちに囲まれる形となっていた。
そして彼女たちが私に嫌味を並べ立てる様、チェリーの分身かのように思えた。
私は一瞬何が起きたのか分からず、言葉を失った。
なんで……。
社交界では確かに友だちなんていなかった。
そして今みんながチェリーに吹き込まれていたというのも分かる。
でもそれでも。
なんでこんな場所でこんな大人数から、ありもしないことを言われないといけないの。
「皆様、そんなに姉ぇさまを責めないで下さいな。わたしがいけないんですの。だって、姉ぇさまの婚約者であったグレンさまのことを愛してしまったんですもの」
「ですが、所詮婚約は親同士が決めたことではないですか。本物の愛には勝てるわけがないんですよ」
「そうですよ。それなのに嫉妬した挙句に、実の妹に手を上げるなんて」
「こんなにお優しい妹だというのに、姉はなんとも残念な方ですわね」
「ほーんと。大違いだわ」
「でもチェリーは、姉ぇさまのことも大好きだったのです」
「まぁ。だからって、こんな方を許すことなどないのですよ、チェリー嬢」
「そうですわ。やっていいことと悪いことがありますわ」
「ほんとに。だから婚約者に捨てられるんですよ」
「あはははは」
チェリーはこうなることを知っていたのね。
というよりも、こうなるように他の令嬢たちを味方につけた。
こんな大きな、王家主催の夜会で私を悪役令嬢に仕立てたまま、いろんな人に罵らせるのはさぞ気分がいいでしょうね。
家族とほんの少し打ち解けて、全部うまくいくような浮かれてた自分がバカみたい。
私の味方がいないことなど、前世からずっと知ってたじゃないの。
いつだってそう。
期待するから……うまくいくかもしれないと思うから苦しくないる。
だからずっと最悪になる未来ことしか考えてこなかったのに。
そうすれば、当たったってダメージが少ないから。
私は作った拳に力をこめ、唇を噛みしめた。
「このドレスはグレンさまが送って下さったもので、男漁りのためのモノではありませんわ。それも私はチェリーをいじめたこともありません」
「まぁ。この期に及んでシラを切るなんて」
「ホントね。嫌ですわ」
「私はそんなつもりなどありません。していないことはしていない。ただそう主張しているだけで」
「でも元婚約者からいただいたドレスを着るなど、未練があるということでしょう?」
「だから、そうではなくて」
「チェリー嬢はホントに可哀想ですわね。こんな方が姉だなんて」
「!」
私だって、好きで姉になったわけじゃない。
むしろ、こっちから願い下げよ。
いい加減、本当に開放してよ。
もういいじゃない。
ずっとあの子の下で苦しんできたんだから。
全部が裏目に出てしまっている。
このドレスを着てきたことも。
どれだけ今ここで話しても、言い訳をしているとしか聞こえないのでしょうね。
ああ、ホント最悪だわ。
1
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
辺境伯に嫁いだので、可愛い義息子と楽しい辺境生活を送ります ~ついでに傷心辺境伯とのぐずぐずの恋物語を添えて~
空野 碧舟
ファンタジー
父が作った借金返済の代わりに、女好き辺境伯ヒューバートの後妻として差し出された子爵令嬢エメリーン・オルクス。
父と義母と義姉とに満面の笑顔で見送られたエメリーンだったが、ヒューバートは初夜ですら花嫁の元を訪れることはなく、その翌日エメリーンだけを辺境伯領へ向かう馬車に乗せた。
ーー過去に囚われている眉目秀麗な女好き辺境伯と、義賊の記憶持ちで口やかましい元子爵令嬢の、少し変わった子育てとぐずぐずな恋物語。
「私の言っていること聞こえていますか。耳はまだ腐っていませんか。とにかく何が言いたいかって言うと、今すぐ屋敷に戻ってきやがれ、ってことです。分かりましたか、このクズ旦那様」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる