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第四章
第五十四話 かすかな怒り
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私と同じ髪と瞳の色へと姿を変えたリンは、昔本でみたウンディーネそのもの。
チェリーがたとえ、同じ本を読んでいたとしてもこの世界の精霊を知らないのだから問題はないだろう。
「すごい」
「初めて見ましたわ」
「これが精霊」
さすがに王妃の顔色を窺うことを忘れ、感嘆が漏れた。
この国初というだけあって、おそらく精霊を見ることすら初めてなのだろう。
実際、学園での授業でさえ、精霊の話はほどんどなかったし。
この国においては、研究すらされてないのかもしれないわね。
「本当に、いたんですわね」
あまりに棘のある王妃の言葉に、令嬢たちはバツの悪そうに視線をリンからパッと外した。
そして先ほどまでと同じように王妃と口をそろえ、ご機嫌取りに勤しむ。
こういう世界って、本当に大変ね。
あちら側じゃなくて、ある意味良かったわ。
「そうですね、いなければ今回のように助けることも出来ませんでしたし」
リンの力を嘘だって言われているようで、腹が立つ。
これくらい言い返しても、文句ないでしょ。
本物の精霊がココにいるんだから。
「そうですわね……精霊を使って人を助けるなんて、まるで冒険者みたいですわよね」
「まぁ、王妃様お上手ですこと」
「アイリス嬢は冒険者のように勇猛果敢なのですね~」
「婚約者もいないことですし、いっそ冒険者になったらいかがかしら」
「王妃様、それは名案ですね」
クスクスと、王妃に賛同した令嬢たちが笑い出す。
職業差別もいいところね。
貴族にとって、冒険者の地位が低いことはわかっていたけど。
でも今回の災害だって、彼らがまず迅速に動かなけれなどれだけの命が亡くなっていたことか。
それに国の平和に人役買っているのも、彼らだ。
増えていく魔物を退治することで、国の兵たちの仕事を軽減してくれるというのに。
どんな職業であったって、不必要なものなどないのに。
私を馬鹿にしたいのなら、それはいいけど。
でも、こういう考えの人たちは嫌いだ。
「冒険者がなんなのかを知っているなんて、皆さまは物知りなのですね~」
チェリーの言葉に、令嬢たちが固まる。
まぁ、それもそうだろう。
直訳したら、貴族令嬢や王妃のくせにそんなことまで知ってるのね。
私は生粋の令嬢だから、そんなもん興味ないし~と言っているようなものだ。
ナイスと言いたいところだが、さすがに王妃に向かってこの言葉はダメでしょう。
でも、なんでチェリーは自分の特にもならないこんな言葉を言ったのだろう。
「そ、それぐらい常識ですわ。それに王妃様は誰よりも博学でいらっしゃって、この国の事なら知らないことはないのですよ」
「そうですわ。何をおっしゃってるんですの、チェリー嬢」
「ん-。だってぇ、精霊は見たことないのに、冒険者は見たことあるんだなぁって思って。でもそうですね、王妃様は博学でいらっしゃいますものね」
うん。誰がどう聞いても、馬鹿にしてるのが分かるでしょうに。
「チェリー」
さすがにこれ以上はまずいと思い止めに入ろうと、隣にいるチェリーの服の裾を小さくテーブルの下で引っ張る。
一瞬だけチェリーは私を見た。
しかしどこか怒ったような顔をした後、チェリーは再び前を向いて話始めた。
チェリーがたとえ、同じ本を読んでいたとしてもこの世界の精霊を知らないのだから問題はないだろう。
「すごい」
「初めて見ましたわ」
「これが精霊」
さすがに王妃の顔色を窺うことを忘れ、感嘆が漏れた。
この国初というだけあって、おそらく精霊を見ることすら初めてなのだろう。
実際、学園での授業でさえ、精霊の話はほどんどなかったし。
この国においては、研究すらされてないのかもしれないわね。
「本当に、いたんですわね」
あまりに棘のある王妃の言葉に、令嬢たちはバツの悪そうに視線をリンからパッと外した。
そして先ほどまでと同じように王妃と口をそろえ、ご機嫌取りに勤しむ。
こういう世界って、本当に大変ね。
あちら側じゃなくて、ある意味良かったわ。
「そうですね、いなければ今回のように助けることも出来ませんでしたし」
リンの力を嘘だって言われているようで、腹が立つ。
これくらい言い返しても、文句ないでしょ。
本物の精霊がココにいるんだから。
「そうですわね……精霊を使って人を助けるなんて、まるで冒険者みたいですわよね」
「まぁ、王妃様お上手ですこと」
「アイリス嬢は冒険者のように勇猛果敢なのですね~」
「婚約者もいないことですし、いっそ冒険者になったらいかがかしら」
「王妃様、それは名案ですね」
クスクスと、王妃に賛同した令嬢たちが笑い出す。
職業差別もいいところね。
貴族にとって、冒険者の地位が低いことはわかっていたけど。
でも今回の災害だって、彼らがまず迅速に動かなけれなどれだけの命が亡くなっていたことか。
それに国の平和に人役買っているのも、彼らだ。
増えていく魔物を退治することで、国の兵たちの仕事を軽減してくれるというのに。
どんな職業であったって、不必要なものなどないのに。
私を馬鹿にしたいのなら、それはいいけど。
でも、こういう考えの人たちは嫌いだ。
「冒険者がなんなのかを知っているなんて、皆さまは物知りなのですね~」
チェリーの言葉に、令嬢たちが固まる。
まぁ、それもそうだろう。
直訳したら、貴族令嬢や王妃のくせにそんなことまで知ってるのね。
私は生粋の令嬢だから、そんなもん興味ないし~と言っているようなものだ。
ナイスと言いたいところだが、さすがに王妃に向かってこの言葉はダメでしょう。
でも、なんでチェリーは自分の特にもならないこんな言葉を言ったのだろう。
「そ、それぐらい常識ですわ。それに王妃様は誰よりも博学でいらっしゃって、この国の事なら知らないことはないのですよ」
「そうですわ。何をおっしゃってるんですの、チェリー嬢」
「ん-。だってぇ、精霊は見たことないのに、冒険者は見たことあるんだなぁって思って。でもそうですね、王妃様は博学でいらっしゃいますものね」
うん。誰がどう聞いても、馬鹿にしてるのが分かるでしょうに。
「チェリー」
さすがにこれ以上はまずいと思い止めに入ろうと、隣にいるチェリーの服の裾を小さくテーブルの下で引っ張る。
一瞬だけチェリーは私を見た。
しかしどこか怒ったような顔をした後、チェリーは再び前を向いて話始めた。
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