60 / 89
第四章
第五十五話 見え隠れする本音
しおりを挟む
「この国初の精霊使いっていうなら、冒険者なんかよりも教会に保護されるべきではないんですか?」
「まぁ、チェリー嬢。いくらご自分の姉だからといって、そのような優遇を申し出るなんて」
「そうですわ。少し図々しいのではないんですの?」
「でもぉ、精霊ってようは神の使いですよね。他国では、精霊使いは神の遣いとされるところもあるってグレン様から聞きましたよ~」
「そ、それはそうかもしれませんが」
「皆さまは神をないがしろになさるんですのぉ? わたしはそんなのバチが当たりそうで怖いですわぁ」
畳みかけるようなチェリーの言葉に、令嬢たちは黙り込む。
言っていることが正論なだけに、言い返すことは出来ないだろう。
精霊使いと、魔法使いとでも一緒にしようと令嬢たちは思っていたのかな。
冒険者に~なあたりから、無理なこじつけしようとするから、言い返されるのよ。
「でも、でもだからといって、精霊使いだからキース様の婚約者にだなんて」
王妃に一番近い令嬢は、自分の言葉を言い放った後に固まった。
そして自分の口を抑え、真っ青になりながらゆっくりと王妃の顔色を伺う。
眉間にシワをよせ、王妃は不機嫌さを隠そうとはしない。
「あ、あの。王妃様、わたしは……その」
「姉が、キース様の婚約者に決定したわけではありませんわ」
「そうね、まだ、報告はされていないものね」
チェリーの言葉に、王妃はやや不満そうに答えた。
「いいのではないかしら、教会に保護してもらえば」
「そ、そうですね。王妃様の言う通りですね」
令嬢たちが王妃を持ち上げる姿は、滑稽に思える。
王妃が右と言えば、右。
たとえそれが間違っていたとしても。
そんな風に思えて仕方ない。
彼女たちはそれで楽しいのかな。
ううん。それよりも王妃様こそ、イエスしか言わない者たちに囲まれてそれで幸せなのかしら。
自分が間違ってても、誰も正してくれないなんて。
私なら虚しくなりそう。
「でも例え教会に保護されたところで、お妃教育も受けていないようなぽっと出の令嬢がなれるようなモノではないわ。王妃という立場は、ね」
「ええ、本当ですわ。次期王妃が精霊使いだなんて、聞いたことないですわ」
「王妃という者は、威厳と博識があり、尚且つ全ての令嬢たちの見本となれるような方でないと」
「今の王妃様のような方はこの国にはいらっしゃらないですわ」
私がキースから婚約を打診されているから。
だから次期王妃には向かない。
そう釘を刺したいがための、このお茶会だったのね。
初めから、これを言いたくて呼んだってことか。
精霊使いを馬鹿にしするのも、冒険者を馬鹿にするのも全部、このため。
次期王妃にはなれやしない。
それこそが王妃の本音なのだろう。
あの謁見の時から感じてた嫌な感じはこれだったのね。
王が退位し、王妃と仲睦まじくという話かと思ってたら、全然違うじゃない。
王妃は王の退位に納得してないっていうか、自分の地位を譲る気はなさそう。
「そうですね。私では次期王妃という立場は重いかもしれません。今までそういった教育を受けてきてはいませんし」
「では、お断りするのかしら」
私の返答に、王妃は急にご機嫌を取り戻す。
露骨すぎるでしょう。
仮にも一国の王妃のする態度ではないわね。
「ただ、でしたら王妃様は誰は次期王妃にと思いになりますか? 私ではなくとも、他にお妃教育を受けてきた者などいなかったはずですが」
そう。この国に、未婚の公女はいない。
身分としては、今侯爵家が一番王族に近い。
しかし退位の話は私たちにとっても寝耳に水だったから、お妃教育など受けてきた者はいないはずなのだ。
王妃はそのことも知っている上で、誰を押すというのだろう。
「まぁ、チェリー嬢。いくらご自分の姉だからといって、そのような優遇を申し出るなんて」
「そうですわ。少し図々しいのではないんですの?」
「でもぉ、精霊ってようは神の使いですよね。他国では、精霊使いは神の遣いとされるところもあるってグレン様から聞きましたよ~」
「そ、それはそうかもしれませんが」
「皆さまは神をないがしろになさるんですのぉ? わたしはそんなのバチが当たりそうで怖いですわぁ」
畳みかけるようなチェリーの言葉に、令嬢たちは黙り込む。
言っていることが正論なだけに、言い返すことは出来ないだろう。
精霊使いと、魔法使いとでも一緒にしようと令嬢たちは思っていたのかな。
冒険者に~なあたりから、無理なこじつけしようとするから、言い返されるのよ。
「でも、でもだからといって、精霊使いだからキース様の婚約者にだなんて」
王妃に一番近い令嬢は、自分の言葉を言い放った後に固まった。
そして自分の口を抑え、真っ青になりながらゆっくりと王妃の顔色を伺う。
眉間にシワをよせ、王妃は不機嫌さを隠そうとはしない。
「あ、あの。王妃様、わたしは……その」
「姉が、キース様の婚約者に決定したわけではありませんわ」
「そうね、まだ、報告はされていないものね」
チェリーの言葉に、王妃はやや不満そうに答えた。
「いいのではないかしら、教会に保護してもらえば」
「そ、そうですね。王妃様の言う通りですね」
令嬢たちが王妃を持ち上げる姿は、滑稽に思える。
王妃が右と言えば、右。
たとえそれが間違っていたとしても。
そんな風に思えて仕方ない。
彼女たちはそれで楽しいのかな。
ううん。それよりも王妃様こそ、イエスしか言わない者たちに囲まれてそれで幸せなのかしら。
自分が間違ってても、誰も正してくれないなんて。
私なら虚しくなりそう。
「でも例え教会に保護されたところで、お妃教育も受けていないようなぽっと出の令嬢がなれるようなモノではないわ。王妃という立場は、ね」
「ええ、本当ですわ。次期王妃が精霊使いだなんて、聞いたことないですわ」
「王妃という者は、威厳と博識があり、尚且つ全ての令嬢たちの見本となれるような方でないと」
「今の王妃様のような方はこの国にはいらっしゃらないですわ」
私がキースから婚約を打診されているから。
だから次期王妃には向かない。
そう釘を刺したいがための、このお茶会だったのね。
初めから、これを言いたくて呼んだってことか。
精霊使いを馬鹿にしするのも、冒険者を馬鹿にするのも全部、このため。
次期王妃にはなれやしない。
それこそが王妃の本音なのだろう。
あの謁見の時から感じてた嫌な感じはこれだったのね。
王が退位し、王妃と仲睦まじくという話かと思ってたら、全然違うじゃない。
王妃は王の退位に納得してないっていうか、自分の地位を譲る気はなさそう。
「そうですね。私では次期王妃という立場は重いかもしれません。今までそういった教育を受けてきてはいませんし」
「では、お断りするのかしら」
私の返答に、王妃は急にご機嫌を取り戻す。
露骨すぎるでしょう。
仮にも一国の王妃のする態度ではないわね。
「ただ、でしたら王妃様は誰は次期王妃にと思いになりますか? 私ではなくとも、他にお妃教育を受けてきた者などいなかったはずですが」
そう。この国に、未婚の公女はいない。
身分としては、今侯爵家が一番王族に近い。
しかし退位の話は私たちにとっても寝耳に水だったから、お妃教育など受けてきた者はいないはずなのだ。
王妃はそのことも知っている上で、誰を押すというのだろう。
1
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
辺境伯に嫁いだので、可愛い義息子と楽しい辺境生活を送ります ~ついでに傷心辺境伯とのぐずぐずの恋物語を添えて~
空野 碧舟
ファンタジー
父が作った借金返済の代わりに、女好き辺境伯ヒューバートの後妻として差し出された子爵令嬢エメリーン・オルクス。
父と義母と義姉とに満面の笑顔で見送られたエメリーンだったが、ヒューバートは初夜ですら花嫁の元を訪れることはなく、その翌日エメリーンだけを辺境伯領へ向かう馬車に乗せた。
ーー過去に囚われている眉目秀麗な女好き辺境伯と、義賊の記憶持ちで口やかましい元子爵令嬢の、少し変わった子育てとぐずぐずな恋物語。
「私の言っていること聞こえていますか。耳はまだ腐っていませんか。とにかく何が言いたいかって言うと、今すぐ屋敷に戻ってきやがれ、ってことです。分かりましたか、このクズ旦那様」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる