大嫌いな双子の妹と転生したら、悪役令嬢に仕立て上げられました。

美杉日和。(旧美杉。)

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第四章

第六十六話 入り混じる夢

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――通りゃんせ 通りゃんせ ここはどこの――


 信号が青に変わる音がして、前を向いた。

 数歩先を、母と手を繋いだ唯奈が歩いている。

 それはある意味いつもの光景だった。

 私が信号を渡らなくても、母が振り返ることはない。

 ただ母は唯奈だけを見つめ、二人で楽しそうに信号を渡っていく。

 母は決して、私のすべてを嫌悪していたわけではなかったと思う。

 ただ不器用な人で、同時にいくつものことをこなすというのが苦手は人だった。

 そして甘え上手な唯奈は、常に母にべったり。

 そんな関係性から、母は唯奈の面倒を甲斐甲斐しく見た。

 だからこそ、私が自然と自分のことを自分でこなすようになるのに、さほど時間はかからなかった。

 迷惑をかけなければ、自分で全て終わらせれば、母が褒めて可愛がってくれると信じていた。

 でも現実は、あの子は何でも自分一人で出来るからいいのよと、捨て置かれた。


「お母さん……」


 動けずにいる私は声を上げた。

 振り向いたのは、母ではなく唯奈だった。

 口角を上げてにたりと笑い、繋いでいる手を大きく揺らす。

 まるでこれは自分のものだと見せつけるように。



 泣きそうになるのを堪えて、横を向くと今度は父が家の中にいた。

 父は大きな会社の課長まで昇りつめた人。

 仕事人間と言っても過言ではないくらい、家にあまり寄り付かない人だった。

 いつも帰ってくるのは時計が12時を過ぎ。

 朝は私たちが起きる頃に出社してしまっていた。

 たまの休日に家にいたとしても、眉間にしわを寄せ居間で新聞を読んでいるだけだった。


「お父さん、あのね……これなんだけど」

「もうお前も大きいんだから、そんなもの自分で何とかしなさい」


 やっとの思いで、聞いて欲しくて声をかけてもいつも答えは一緒だ。

 父は愛想も会話の仕方も、全て会社に置いてきてしまっているんだと言い聞かせる。


「おとーさぁーん」

「……」


 さすがの唯奈にも父は無反応だった。

 しかし唯奈は少し考えた後、新聞を読む父の懐に潜り込む。

 父は眉間のしわをさらに深くしたものの、膝にちょこんと座る唯奈に何も言おうとはしない。

 そしてまた勝ち誇ったような唯奈と目が合った。


「!」


 私は走ってそのまま玄関から飛び出す。




「お嬢様、行かれるんですか?」

 振り返った先に、今度はルカがいた。

 そして目の前にはあの日、見た店がある。

 進みたくない、見たくないと思うのに体が勝手に進み出す。

 小窓からはキースの腕に自分の腕を絡め、商品を楽しそうに選んでいる二人がいた。


「いやだ」


 大粒の涙がぽとぽと落ちる。

 何もかも、欲しいものは全て自分の物にはならない。

 そんな現実。

 過去も未来も、また私は……。


「姉さんがいけないのよ、ちゃんと欲しいものは欲しいと言わないから」


 小窓から唯奈とチェリーの声が聞こえた気がした。

 そしてまた大嫌いなあの勝ち誇ったような笑みを浮かべている。

 大嫌い。大嫌い。みんな消えて。

 私には、誰一人必要ない。
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