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第五章
第七十三話 ヤンデレ
しおりを挟むバラけていたピースがなんとなく埋まっていく。
それぞれがそれぞれの方を向いていたために、交わることもなかった答え。
グレンが勘違いをしているというのはこのことだったのね。
ずっと唯花だった時と同じように、いじわるだけをされてると思い続けていたのに。
実際はまったくの真逆だったなんて。
なんとも皮肉というかなんというか。
ただそうね、悪いとこがあるとしたらきっとこれよね。
「全部、グレンが悪い。これで一件落着です」
「どうしてそうなるんだ、アイリス」
「まぁ。そうだろうな。姉を想う妹の気持ちを利用し、さらに自分の計画を進めようとしていたんだ。そう言われてもおかしくないだろう」
「キースまで! すべては国のためにだなあ」
「グレンさま、国なんてもののために大切なものを奪おうとするなどサイテーです」
「な、ま……それは……」
全員からの攻撃を受け、グレンはたじろぐ。
次期宰相としての判断としては、間違っていなかったのかもしれない。
ただ人としては完全にアウトだろう。
「そうまでして、グレンが望んだことは国を守りたかったの?」
「それもある。キースが治める、優しくも強い国を見たかったから。ただもう一つは、チェリーの瞳を独占したかった。いつでも姉ばかりを求める、その強い瞳を。僕だけで埋め尽くしたかった」
「「ヤンデレだ」」
思わず私とチェリーの言葉が重なる。
チェリーもずいぶんな人に好かれたものね。
ただチェリーの瞳を独占したいだなんて、猟奇的にとはまだ行ってないけど、病的な気はする。
「な、なんだいその言葉は。もしかしてそれもココではない世界の言葉なのかい?」
未知の物を求める探求心なのか、グレンのその瞳は輝きに満ちていた。
そういえばそうね。
グレンはいつも自分の知らないことを知るということに喜びを感じてたっけ。
学園でもそう。
自分の知らないことがあることがダメだと言わんばかりに勉強をし、首席で卒業。
きっとチェリーに目を付けたのも、前世の記憶があったからかもしれない。
いつも言葉の節々や態度に、あの子は出してしまっていたし。
うん。やっぱり病んでるわね。
ある意味、グレンをチェリーに譲れてよかったわ。
「ヤンデレっていうのは、病的なまでに相手のことを愛してる人のことよ」
「全然、いい言葉に聞こえないんだが」
「そうでしょうね。だって、そういう意味だもの」
私はふと後ろを振り返る。
キースは前世の記憶がある私たちをどう思うのだろうか。
普通ならば、チェリーの言う通り私たちは異質だ。
化け物と思われても仕方がない。
「キース様、私たちは……」
「前世の記憶があろうと、俺は気にしないさ。グレンのようには、な」
おどけたように、キースはウインクをした。
三対一で、グレンのヤンデレ認定は通ったわね。
「グレンさま、婚約は考えさせてください」
「な、どうしてだチェリー」
「自業自得ね。グレン、あなたはもう少し他人の気持ちを考える力を身につけないとね。特に女心も必須で」
「元より、グレンさまは姉さんの手には負えないと思っていましたが、わたしも無理そうですので」
百歩譲って、グレンは悪い人間ではないのかもしれない。
でも十分、人を思いやる心とか欠落してる気がした。
「さてさて。グレンのことはいいとして、あとはチェリーの濡れ衣を晴らさないといけないわね」
「証拠がそろってしまっている以上、中々覆すのは至難の業だそ」
「そうですね……。まずは、あ、そうだ。キース様、私とした約束覚えていますか?」
「約束? 約束とは、たしかあの日の借りにしてもらったヤツのことか?」
「ええ、あの日の約束です。ちゃんと1つ貸しにしましたよね? キース様は何でも私の頼みを聞いてくれるって」
切り札は効果的に使用しましょう。
こんな日のために取っておいて、正解だった。
にこやかにほほ笑むと、キースはやや困ったような顔をした後、左手で頭を抱える。
「まあ大変、頭痛ですか? それならばすぐにでも宮廷医を呼ばないと」
わざとらしくキースにぴたりとくっつく。
「この頭痛の原因を、君の口から教えて欲しいんだが」
「そうですね、とりあえず邪魔な証拠さんにはさよならしたいのです。その上で、一緒に伏魔殿に住む魔物を退治しちゃいましょ」
「アイリス、魔物っていうのはもしかして」
「今回の首謀者サンですよ。この国のためにも、ご退場願わないとね」
「姉さん、危険すぎるわ」
「大丈夫よ。いい方法があるわ。それよりも、どうやってあのお茶の中に毒が混入していたのか教えてちょうだい」
もうこの方法以外には、チェリーをココから出す方法はないだろう。
今まで私もチェリーも、そして他の令嬢たちもやられてきた分はきっちりお返ししてあげないと。
いつまでもこの国にしがみつき、王妃という地位にいさせるのは危険すぎるもの。
そして今だからこそ、きっと効果的に彼女にやり返せる自信が私にはあった。
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