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083 最悪で醜悪な方法
「何のことだか、さっぱり分からないですわね」
よくそんなことが言えたものね。嘘って、自分でも分かっているでしょうに。
ルカに渡した手紙という形として証拠を残してしまっているのだから、言い逃れなんて出来るわけもないし。
だけどノベリアの顔に焦りはない。それはどこまでもムカつくほどに、彼女は楽しげで余裕たっぷりだ。
この余裕はどこから来るのかしら。
でもそんなことを確認するまでもなく、すぐにその意味を知ることになった。
もちろん、私が考えていたうちの一番最悪かつ醜悪な方法で――
「そうだ。直接ルカに尋ねたらいいでしょ? あたしのところへ来たのがあの子の意思なのか、それともそうじゃないのか。どちらが母親として適任なのかって」
「馬鹿なこと言わないで」
「あら、もしかして元王女様は自信がない感じですの?」
「そういう問題じゃないでしょう!」
「だったらどういう問題だとでも?」
本当に理解していないのか、それともそれだけが自分が勝つ自信があるからなのか。
ルカのことを考えたら、こんなこと普通提案しないでしょう。
最悪すぎる。
「だってルカは頭も良くて、お利口さんなんですものねぇ。きっと自分で判断できますわよ」
「そういうことじゃなくて。あなたそれでも母親なの? ルカのことを考えたら、そんなことさせないでしょう。状況証拠だけで十分じゃない。子どもを挟む話ではないわ」
「あらそうかしら。子どもだって、自分のことを勝手に決められたら嫌がるものなのよ。生んでない人には分からないかもしれないけど」
いつまでたってもそのセリフ。もう聞き飽きたわ。
私は自分が継母だって自覚はもちろんある。だからノベリアから正当なる母親としての権利を全て奪いたいわけではない。
この人が本当にルカを愛して慈しんでくれるなら、いくらだって私はその橋渡しをしたいと思っているのに。
少なくとも、今までのどの行動にもノベリアからはルカへの愛情なんて感じられなかったし、今回のこの騒動なんて最悪以下じゃない。
「分からなくて結構よ。ルカを自分の欲望のために巻き込まないで」
「負け惜しみ言っちゃって。自信がないならそう言えばいいのに。誰か、今すぐルカをここに呼んでちょうだい」
「ちょっと、待ちなさいって言ったじゃない」
ソファーから立ち上がり制止しようとした私など無視し、控えていた使用人はそそくさとノベリアの意志に従った。
そして数分も経たぬうちに、あの乳母がルカを連れて部屋に入ってくる。
「あ……ビオラ……」
ルカを見た途端、私は泣き出してしまいそうになるのを必死で堪えた。
「ルカ!」
「近づかないでいただけますか?」
手を伸ばした私を、乳母が制止する。
ルカの真後ろにぴったりと乳母は立ち、私を睨みつけている。
「あなたにはなんの権限があって、私にそんな口を聞いているのかしら」
「ルカ様に正式に選ばれた教育係だからですわ」
乳母はそう言いながら、不敵に微笑む。
私はそんな乳母の言葉など無視し、ルカに視線を合わせた。
しかしルカは前の状態に戻ってしまったように、おどおどとしながら私から視線を外す。
そして自分の右手で左手の腕をぎゅっと掴んでいた。
何がルカをこんな風にさせているのか。
そんなのは考えなくとも一目瞭然だった。ほんの数時間でも、ルカをノベリアたちに合わせるべきじゃなかったんだ。
「正式にね。それを公爵の前でもあなたは言えるの?」
「もちろんですわ。優先されるべきは小公爵様でいらっしゃるルカ様の言葉かと」
「脅されて言わされていると証言がとれれば、今度こそ誘拐罪で極刑になるだろうけどね」
私の言葉に、乳母は言葉を詰まらせた。
本当はルカのいる前でこんな話などすべきでもないし、したくもなかった。
だけどもうそんなことを言っていられる状況じゃない。今すぐにでもルカを取り戻さないと。
「元王女様はそんな風に脅されるのですね。怖いわぁ」
どの口が言っているんだか。
平気で子どもを誘い出し誘拐する人間に言われたくないわ。
「ねぇルカ。あたし、その人にいじめられているのよ。お母さまのこと、可哀想だって思うでしょ? あなたはもちろん、その人よりこのお母さまと一緒にいる方がいいわよね」
「え、あ……」
ややうつろなルカの瞳がノベリアを見ていた。
可哀想だと言いつつ、その言葉には言いようのない圧がある。他人の私から見ても、そう思えた。
よくそんなことが言えたものね。嘘って、自分でも分かっているでしょうに。
ルカに渡した手紙という形として証拠を残してしまっているのだから、言い逃れなんて出来るわけもないし。
だけどノベリアの顔に焦りはない。それはどこまでもムカつくほどに、彼女は楽しげで余裕たっぷりだ。
この余裕はどこから来るのかしら。
でもそんなことを確認するまでもなく、すぐにその意味を知ることになった。
もちろん、私が考えていたうちの一番最悪かつ醜悪な方法で――
「そうだ。直接ルカに尋ねたらいいでしょ? あたしのところへ来たのがあの子の意思なのか、それともそうじゃないのか。どちらが母親として適任なのかって」
「馬鹿なこと言わないで」
「あら、もしかして元王女様は自信がない感じですの?」
「そういう問題じゃないでしょう!」
「だったらどういう問題だとでも?」
本当に理解していないのか、それともそれだけが自分が勝つ自信があるからなのか。
ルカのことを考えたら、こんなこと普通提案しないでしょう。
最悪すぎる。
「だってルカは頭も良くて、お利口さんなんですものねぇ。きっと自分で判断できますわよ」
「そういうことじゃなくて。あなたそれでも母親なの? ルカのことを考えたら、そんなことさせないでしょう。状況証拠だけで十分じゃない。子どもを挟む話ではないわ」
「あらそうかしら。子どもだって、自分のことを勝手に決められたら嫌がるものなのよ。生んでない人には分からないかもしれないけど」
いつまでたってもそのセリフ。もう聞き飽きたわ。
私は自分が継母だって自覚はもちろんある。だからノベリアから正当なる母親としての権利を全て奪いたいわけではない。
この人が本当にルカを愛して慈しんでくれるなら、いくらだって私はその橋渡しをしたいと思っているのに。
少なくとも、今までのどの行動にもノベリアからはルカへの愛情なんて感じられなかったし、今回のこの騒動なんて最悪以下じゃない。
「分からなくて結構よ。ルカを自分の欲望のために巻き込まないで」
「負け惜しみ言っちゃって。自信がないならそう言えばいいのに。誰か、今すぐルカをここに呼んでちょうだい」
「ちょっと、待ちなさいって言ったじゃない」
ソファーから立ち上がり制止しようとした私など無視し、控えていた使用人はそそくさとノベリアの意志に従った。
そして数分も経たぬうちに、あの乳母がルカを連れて部屋に入ってくる。
「あ……ビオラ……」
ルカを見た途端、私は泣き出してしまいそうになるのを必死で堪えた。
「ルカ!」
「近づかないでいただけますか?」
手を伸ばした私を、乳母が制止する。
ルカの真後ろにぴったりと乳母は立ち、私を睨みつけている。
「あなたにはなんの権限があって、私にそんな口を聞いているのかしら」
「ルカ様に正式に選ばれた教育係だからですわ」
乳母はそう言いながら、不敵に微笑む。
私はそんな乳母の言葉など無視し、ルカに視線を合わせた。
しかしルカは前の状態に戻ってしまったように、おどおどとしながら私から視線を外す。
そして自分の右手で左手の腕をぎゅっと掴んでいた。
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ややうつろなルカの瞳がノベリアを見ていた。
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