素直になれないツンデレ王女はこわもて護衛騎士に恋をする。年の差20歳はダメですか?

美杉日和。(旧美杉。)

文字の大きさ
7 / 12

007

しおりを挟む
 部屋へ戻っても、寝る気にはなれなかった。寝台へと腰かけて、メイが押し花にと言って紙に折りたたんでくれた先ほどの花を見つめる。

 この城で今までのような生活を続けていくのはもう長くはないとは思ってはいたが、こんなに早いとも思ってはみなかった。

 どうしたら、どうすればいいのかしら。きちんと私が想いを伝えたら、シリルはどう思うかしら。迷惑なのか、喜んでくれるのか。考えたくないことばかりね。

 でも正式に申し込むのならば、兄か父から婚約を申し込んでもらわなけれないけない。私はどうあがいても王女なのだから。

 自分の気持ちだけで、どうにかならないのも分かってはいる。でもそれでも……。嫌だな。このまま何もしないで終わってしまうのは。


 ふいに、部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。


 誰かしら。ん-。もしかして私が先ほどの父との食事で気を落としていたのを気にしていた、メイが戻って来たのかもしれないわね。


「どうぞ」

「遅くに失礼します、王女殿下」


 部屋を訪ねてきたのは、メイではなくシリルだった。最近は幼い頃とは違い、部屋になど来てくれることはなかったというのに。


「ちょうど寝れなくて暇してたから、いいわ。こちらへ。今侍女を呼んで、お茶を入れさせますわ」


 部屋に置かれたソファーを勧める。


「いえ。このままで」


 そう言ってシリルは扉の前に立ち、座ろうとはしない。もう。真面目だというか、融通が利かないというか。昔なら駄々をこねて大泣きをして、寝るまで側にいてもらうことも出来たのに。

 シリルに近づきたくて早く大人になりたかったのに、大人になったらままならないことの方が多くなった気がする。本当に不便、ね。何もかも。


「いいから座って。そんなとこに立っているなら、話など聞かないわ」


 私がむくれると、シリルは観念したようにソファーへ腰かける。そして私は少し考えた後、シリルの隣へ座った。


「な、な、な、お、王女殿下!」

「何かしら? ソファーはこれしかないのだから仕方ないでしょう」


 隣に座るシリルの顔を見上げる。驚いてはいるものの、少なくとも怒ってはいない。立ち上がろうとするシリルの手を掴み、無言のまま行かないでと告げる。

 今の私にできる、精一杯のアピールだ。

 隣に座るくらい、いいじゃないの。ここには誰も私たちの関係性など咎める人もいない。だからせめて今だけは……。


「……国王様から話は聞かれましたか?」


 シリルは諦めたように大きなため息をつくと、私から視線を外し、真っすぐ前を見ながら話しだした。話とはどれのことかしら。

 先ほどはお兄様が結婚をしてという話はしたのだけれど、そんなことを言うためにわざわざこんな時間にシリルが来るなんて思えないし。

 あーでも、その先の私の輿入れの件で、気を落としていたのをメイから聞いたのかもしれないわね。それでなぐさめにでも来てくれたのならば、嬉しい。

 あくまで嬉しさを顔に出さないように、冷静を装う。


「ええ」


「申し訳ありません。本来でしたら、わたしの口から王女殿下には一番に言わなければいけないことだとは思ったのです。このような形で約束を違えるなど……」

「待って、待って、シリル。一体何の話なのです? 私は先ほど王より、兄の結婚の話をされただけです」


 約束を違える? それはどういう意味?

 だって、私とシリルが交わした約束は、ただ一つだけ。どんな時でも、いついかなる時でも側で護るというあの幼い頃の約束なのに。


「どういうことなの? シリル、私との約束を違えるとは、どういう意味なの!」


 私が父から話を聞いていないことに、シリルは一瞬驚いたような顔をする。そしてシリルは一度下を向いた後、まっすぐ私を見据えた。


「父が足を悪くしまして、爵位を継承することとなりました。次の月には引継ぎを終わらせ、領地へ戻る予定です」

「次の月……」

 次の月まで、あと何日あるというのだろう。先ほどの父の言った期限など、比べ物にならないほど短い。

 父が言いかけた悪い話とは、これのことだったのだと私は理解した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』

星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】 経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。 なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。 「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」 階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。 全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに! 「頬が赤い。必要だ」 「君を、大事にしたい」 真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。 さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!? これは健康管理?それとも恋愛? ――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。

お転婆令嬢は、大好きな騎士様に本性を隠し通す

湊一桜
恋愛
侯爵令嬢クロエは、二度も婚約破棄をされた。彼女の男勝りで豪快な性格のせいである。 それに懲りたクロエは、普段は令嬢らしく振る舞い、夜には”白薔薇”という偽名のもと大暴れして、憂さ晴らしをしていた。 そんな彼女のもとに、兄が一人の騎士を連れてきた。 彼の名はルーク、別名”孤高の黒薔薇”。その冷たい振る舞いからそう呼ばれている。 だが実は、彼は女性が苦手であり、女性に話しかけられるとフリーズするため勘違いされていたのだ。 兄は、クロエとルークのこじらせっぷりに辟易し、二人に”恋愛の特訓”を持ちかける。 特訓を重ねるうちに、二人の距離は少しずつ近付いていく。だがクロエは、ルークに”好きな人”がいることを知ってしまった…… 恋愛なんてこりごりなのに、恋をしてしまったお転婆令嬢と、実は優しくて一途な騎士が、思い悩んで幸せになっていくお話です。

女嫌いな騎士団長が味わう、苦くて甘い恋の上書き

待鳥園子
恋愛
「では、言い出したお前が犠牲になれ」 「嫌ですぅ!」 惚れ薬の効果上書きで、女嫌いな騎士団長が一時的に好きになる対象になる事になったローラ。 薬の効果が切れるまで一ヶ月だし、すぐだろうと思っていたけれど、久しぶりに会ったルドルフ団長の様子がどうやらおかしいようで!? ※来栖もよりーぬ先生に「30ぐらいの女性苦手なヒーロー」と誕生日プレゼントリクエストされたので書きました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

今、女嫌いとウワサのイケオジ騎士団長に求婚されている・・・のだが

めっちゃ犬
恋愛
パン屋で働く平凡な町娘のマリー。ある日、女嫌いとウワサの騎士団長に突然プロポーズされます。そのイケオジっぷりに恥じらったりトキめいたりのマリーですが、話をするうちに団長の○○な一面が明らかになって・・・。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。 ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。 邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。 「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」 そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...