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020 増える悩みの種
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「奥様のそばは本当に心地いいです。でも……劇団のためにはしかたないんです」
「……いくらくらい必要なの?」
「でも……奥様にはずっと援助してもらっていますし。そんなことを頼むなんて心が……」
「いいのよ、そんなこと。いまさらじゃない。わたしは貴方の力になりたいのよ。そのためなら、惜しいコトなどないわ」
「奥様……」
あー、つまり姑はいいカモ……体よく言えば、パトロンってことね。
もしかしたら他の貴族の夫人たちも、彼に投資しているのかもしれない。
そうじゃなきゃ、あんなに豪華な馬車になんて乗れやしないもの。
むしろ劇団が困窮しているってこと自体、嘘だって可能性もあるし。
だいたいちょっと怪しいわよね、この子。
確かに演技は上手いと思うけど、本当に劇団員なのかしら。
なんかただ資金を貴族のマダムたちからかき集めているようにしか思えないんだけど。
だけど、それにしても本当に困ったものだわ。
仮にこの男爵家が大金持ちならいいのよ。
でも没落寸前までいっているというのに、いまだにこんな風に散財を続けるだなんて。
よほど自分からこの家を潰したいとしか思えないわね。
「ですがこの男爵家は……その……」
「ああ、お金のことを心配しているのね」
「だってもしものことがあったら、ボクはもう奥様に会えなくなるじゃないですか!」
奥様じゃなくて、貢がせ先が一個なくなるって誰か教えてあげればいいのに。
没落させずに、細くながーく甘い蜜を提供してもらった方が、相手もいいでしょうからね。
「それなら大丈夫よ。うちの息子がダントレット商会の娘と結婚したのよ。本当は貴族ではない娘をここに入れるのは嫌だったのだけど、どうしてもって頼み込まれてね」
うわぁ。よく言うわ。
あの父が頼み込むなんてこと、するわけないじゃないの。
ただチラつかせた金に目がくらんだだけでしょう。
「ダントレット商会! それはすごいじゃないですか!」
「まぁ、規模は大きいからね」
うちの商会は、大陸一と言われる大きさだ。
各国との取引もあり、王家の覚えもいい。
たかが商人と言える規模ではないのよね。
貴族からも一目置かれる存在だし、その資産が半端ないことも有名だ。
その分、裏では行き場のない者たちを拾ってきては、安く雇用しているからなんだけど。
うちの商会が黒か白かと言われたら、間違いなく真っ黒だと自信もって言えるわね。
「確かに貴族の中に平民の血を入れるのは嫌かもしれませんが、でもすごいですよ! この男爵家がこの国一番のお金持ちになれるかもしれないですよね」
「まぁ、そうねぇ」
「ボク、本当に奥様と知り合えてよかったです」
「そう?」
「そうですよ! ボクが奥様の家の子になりたいぐらいです」
「まぁまぁ、可愛いコト言って」
いやいや、それ可愛いの?
お金があると分かった途端、手のひら返したようにしか見えないんだけど。
でもそれに、そうは簡単にいかないのよね。
この男爵家がお金持ちになるなんてことは、残念ながら一生ないのよ。
むしろあなたにつぎ込んでなくなるって感じよね。
「アンリエッタ様、どうされます?」
義母たちが部屋を出たのを確認すると、そっと窓をしめた。
どうします、か……。
「どうするもこうするも……今のところ、全容を把握するまでは手の出しようがないわね」
相手の顔も素性も分からなかったし。
お金の流出を止めるには、引き離した方が得策なのだろうけど。
あの役者は他の貴族とも繋がっているみたいだし。
少し慎重に対応しなくてはね。
んー。一度、あとを付けてみるのも手かもしれないわね。
あの真っ白く大きな馬車は街中では目立つだろうし。
彼が本当に劇団員なのか、調べてみないことには何も始まらないわ。
「まったく、考えるコトだらけね」
「離れの様子は分かったのですか?」
「ええ。それでなんだけど、明日少し外出したいだけど大丈夫かしら」
「屋敷の中のことはあたしたちがやっておけますが、むしろお一人で外出なんて大丈夫なんですか?」
ミーアが心配そうに顔をのぞき込む。
「今までだって一人で外出してきたんだから平気よ。いくら貴族の家に嫁いできたからって、中身は変わらないわ」
「それならいいんですが、あまり無理はしないでくださいね」
「ええ。むしろ中のこと、よろしくね」
とりあえずあの役者のことを調べつつ、少しお金も稼がないとね。
持参金の一部はまだあるけど、でもそれだって使い続ければなくなってしまうから。
やれることはやっておかないとね。
「……いくらくらい必要なの?」
「でも……奥様にはずっと援助してもらっていますし。そんなことを頼むなんて心が……」
「いいのよ、そんなこと。いまさらじゃない。わたしは貴方の力になりたいのよ。そのためなら、惜しいコトなどないわ」
「奥様……」
あー、つまり姑はいいカモ……体よく言えば、パトロンってことね。
もしかしたら他の貴族の夫人たちも、彼に投資しているのかもしれない。
そうじゃなきゃ、あんなに豪華な馬車になんて乗れやしないもの。
むしろ劇団が困窮しているってこと自体、嘘だって可能性もあるし。
だいたいちょっと怪しいわよね、この子。
確かに演技は上手いと思うけど、本当に劇団員なのかしら。
なんかただ資金を貴族のマダムたちからかき集めているようにしか思えないんだけど。
だけど、それにしても本当に困ったものだわ。
仮にこの男爵家が大金持ちならいいのよ。
でも没落寸前までいっているというのに、いまだにこんな風に散財を続けるだなんて。
よほど自分からこの家を潰したいとしか思えないわね。
「ですがこの男爵家は……その……」
「ああ、お金のことを心配しているのね」
「だってもしものことがあったら、ボクはもう奥様に会えなくなるじゃないですか!」
奥様じゃなくて、貢がせ先が一個なくなるって誰か教えてあげればいいのに。
没落させずに、細くながーく甘い蜜を提供してもらった方が、相手もいいでしょうからね。
「それなら大丈夫よ。うちの息子がダントレット商会の娘と結婚したのよ。本当は貴族ではない娘をここに入れるのは嫌だったのだけど、どうしてもって頼み込まれてね」
うわぁ。よく言うわ。
あの父が頼み込むなんてこと、するわけないじゃないの。
ただチラつかせた金に目がくらんだだけでしょう。
「ダントレット商会! それはすごいじゃないですか!」
「まぁ、規模は大きいからね」
うちの商会は、大陸一と言われる大きさだ。
各国との取引もあり、王家の覚えもいい。
たかが商人と言える規模ではないのよね。
貴族からも一目置かれる存在だし、その資産が半端ないことも有名だ。
その分、裏では行き場のない者たちを拾ってきては、安く雇用しているからなんだけど。
うちの商会が黒か白かと言われたら、間違いなく真っ黒だと自信もって言えるわね。
「確かに貴族の中に平民の血を入れるのは嫌かもしれませんが、でもすごいですよ! この男爵家がこの国一番のお金持ちになれるかもしれないですよね」
「まぁ、そうねぇ」
「ボク、本当に奥様と知り合えてよかったです」
「そう?」
「そうですよ! ボクが奥様の家の子になりたいぐらいです」
「まぁまぁ、可愛いコト言って」
いやいや、それ可愛いの?
お金があると分かった途端、手のひら返したようにしか見えないんだけど。
でもそれに、そうは簡単にいかないのよね。
この男爵家がお金持ちになるなんてことは、残念ながら一生ないのよ。
むしろあなたにつぎ込んでなくなるって感じよね。
「アンリエッタ様、どうされます?」
義母たちが部屋を出たのを確認すると、そっと窓をしめた。
どうします、か……。
「どうするもこうするも……今のところ、全容を把握するまでは手の出しようがないわね」
相手の顔も素性も分からなかったし。
お金の流出を止めるには、引き離した方が得策なのだろうけど。
あの役者は他の貴族とも繋がっているみたいだし。
少し慎重に対応しなくてはね。
んー。一度、あとを付けてみるのも手かもしれないわね。
あの真っ白く大きな馬車は街中では目立つだろうし。
彼が本当に劇団員なのか、調べてみないことには何も始まらないわ。
「まったく、考えるコトだらけね」
「離れの様子は分かったのですか?」
「ええ。それでなんだけど、明日少し外出したいだけど大丈夫かしら」
「屋敷の中のことはあたしたちがやっておけますが、むしろお一人で外出なんて大丈夫なんですか?」
ミーアが心配そうに顔をのぞき込む。
「今までだって一人で外出してきたんだから平気よ。いくら貴族の家に嫁いできたからって、中身は変わらないわ」
「それならいいんですが、あまり無理はしないでくださいね」
「ええ。むしろ中のこと、よろしくね」
とりあえずあの役者のことを調べつつ、少しお金も稼がないとね。
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やれることはやっておかないとね。
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