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053 離婚と決断
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「だってそうとしか思えないじゃない」
「マリアンヌ様、どこをどう見たらそうなるんですか」
「んー。全部?」
「えええ」
「じゃあ、お互いが好き同士ってだけってことね」
「ですから、どこをどうしたらそうなるんです!」
「だって、アンリエッタ。見てみなさいよあれを」
「あれって?」
必死に抗議する私に、マリアンヌは顎をクイっとさせて目の前の人物をさした。
言われるままに、そこに座るブレイズを見れば、彼は困ったように咳ばらいをしている。
しかし確かにその顔というか、耳は真っ赤になっていた。
えええ。
じゃあ、本当なの?
だ、だってマトモに会ったのなんて二回くらいなのよ。
しかも一回目何て、酷いもんだったじゃない。
私の態度も最悪だったし。
アレのどこに好きになる要素があったっていうのよ。
前回と展開が全然変わってきているのは分かっていても、これはさすがに想定外よ。
私はただあの人と離婚して、商会さえ手に入れたら一人でずっと生きていくつもりだったのに。
いやでも、やっぱり勘違いだってこともあるし。
一人浮かれていたらバカみたいじゃない。
あり得ない。絶対、あり得ない。
何かの間違いよ。
「あの、ブレイズ様、マリアンヌ様が言っていたことなど私は気にもしていませんので」
きっぱりと言い切れば、なぜかそっちの方が残念かのように絶望的な顔をしている。
これはどういう反応なのよ。
わざわざ気にしないって、こっちから宣言したのに。
「まぁ、他人の色恋はどうでもいいけど。でもね、今回の夜会であたしも思うことがあって。それで彼に協力してもらうことにしたのよ」
「協力?」
マリアンヌとダミアンが出席したという夜会。
前回もそうだったけど、ダミアンはきっと引き裂かれた純愛をうたっていたはず。
今回はマリアンヌは私のことがあったから参加に前向きになれてなかったのよね。
でも今のまっすぐな彼女を見ていると、迷いはどこにも感じられない。
答えを見つけられたのかな。
「それはダミアン様とのことよね」
「それもあるけど、それだけじゃないわ。あたし、あなたには離婚してもらうつもりなの」
まっすぐに私を見るマリアンヌの瞳を、私は見た。
ダミアンと離婚するのは初めからの計画だった。
でもそれはマリアンヌも知っているはずよね。
それにどうしてこの話にブレイズが関わってくるの?
「元より離婚は計画のうちだったじゃない」
「ええ。だけどあなたの計画では白い結婚を三年って話だったでしょう?」
「ええ。それはそうね。だって、三年経たないと認められないから」
貴族の離婚は少し複雑だ。
跡取りや家同士の繋がりもあるせいか、基本的には離婚は認められていない。
今のこの国の決まりで言えば、白い結婚が三年続いたことを教会に訴えれば、離婚が成立する仕組みなのだ。
「それはそうでもないのよ。白い結婚が公然の事実であり、かつ二名以上の貴族の証人がいれば一年で離婚を成立させることが出来るの」
「そうなの? それは初めて聞いたわ」
貴族系の決まり事なんて、基本的に平民には関係のない話だし。
今回、ダミアンと別れるためだけに調べたようなものだものね。
「ああ、でもそれなら」
「ええ。そうなの。今回の夜会で彼は今の妻である貴女とは白い結婚で真実の愛はあたしとだけなのだとみんなの前で公表したわ」
つまりそれが公然の事実となる。
ダミアンと結婚して、今何か月目だっけ。
でも長くとも、あと半年もしないうちに離婚が出来る。
「ああ、だからブレイズ様なのですね」
「彼はあたしとダミアンが付き合っていることに大層激怒されていたからね。これだって思ったというわけ」
「でも待って。それでは、マリアンヌ様は……」
私の言いかけた言葉に、マリアンヌはただ少し悲し気に微笑んだ。
そして一度自分の膝の上に作った拳を見たあと、また私に視線を戻す。
「ずっとね、夢だったの。知っているでしょう、アンリエッタ」
「ダミアン様と、何もないところで二人で暮らすことがですか?」
「ええそうよ。ずっとずっと夢だったの。分かっているわ、自分でも。もうこれは意地なのかもしれないって。両親に結婚を反対されて、あの人はお金のために貴女と結婚をした」
「……」
「それでも、諦めきれなかったの。バカだって分かっているし、軽蔑してくれてもいい。だけどどうせいつか諦める日が来るのなら、最後まで……ね」
泣きそうになりながらも笑うマリアンヌは、誰よりも綺麗だった。
どうして笑うことなど出来るのだろう。
むしろ彼女のその決断に、泣き出しそうになるのを堪えるのに私はただ必死だった。
「マリアンヌ様、どこをどう見たらそうなるんですか」
「んー。全部?」
「えええ」
「じゃあ、お互いが好き同士ってだけってことね」
「ですから、どこをどうしたらそうなるんです!」
「だって、アンリエッタ。見てみなさいよあれを」
「あれって?」
必死に抗議する私に、マリアンヌは顎をクイっとさせて目の前の人物をさした。
言われるままに、そこに座るブレイズを見れば、彼は困ったように咳ばらいをしている。
しかし確かにその顔というか、耳は真っ赤になっていた。
えええ。
じゃあ、本当なの?
だ、だってマトモに会ったのなんて二回くらいなのよ。
しかも一回目何て、酷いもんだったじゃない。
私の態度も最悪だったし。
アレのどこに好きになる要素があったっていうのよ。
前回と展開が全然変わってきているのは分かっていても、これはさすがに想定外よ。
私はただあの人と離婚して、商会さえ手に入れたら一人でずっと生きていくつもりだったのに。
いやでも、やっぱり勘違いだってこともあるし。
一人浮かれていたらバカみたいじゃない。
あり得ない。絶対、あり得ない。
何かの間違いよ。
「あの、ブレイズ様、マリアンヌ様が言っていたことなど私は気にもしていませんので」
きっぱりと言い切れば、なぜかそっちの方が残念かのように絶望的な顔をしている。
これはどういう反応なのよ。
わざわざ気にしないって、こっちから宣言したのに。
「まぁ、他人の色恋はどうでもいいけど。でもね、今回の夜会であたしも思うことがあって。それで彼に協力してもらうことにしたのよ」
「協力?」
マリアンヌとダミアンが出席したという夜会。
前回もそうだったけど、ダミアンはきっと引き裂かれた純愛をうたっていたはず。
今回はマリアンヌは私のことがあったから参加に前向きになれてなかったのよね。
でも今のまっすぐな彼女を見ていると、迷いはどこにも感じられない。
答えを見つけられたのかな。
「それはダミアン様とのことよね」
「それもあるけど、それだけじゃないわ。あたし、あなたには離婚してもらうつもりなの」
まっすぐに私を見るマリアンヌの瞳を、私は見た。
ダミアンと離婚するのは初めからの計画だった。
でもそれはマリアンヌも知っているはずよね。
それにどうしてこの話にブレイズが関わってくるの?
「元より離婚は計画のうちだったじゃない」
「ええ。だけどあなたの計画では白い結婚を三年って話だったでしょう?」
「ええ。それはそうね。だって、三年経たないと認められないから」
貴族の離婚は少し複雑だ。
跡取りや家同士の繋がりもあるせいか、基本的には離婚は認められていない。
今のこの国の決まりで言えば、白い結婚が三年続いたことを教会に訴えれば、離婚が成立する仕組みなのだ。
「それはそうでもないのよ。白い結婚が公然の事実であり、かつ二名以上の貴族の証人がいれば一年で離婚を成立させることが出来るの」
「そうなの? それは初めて聞いたわ」
貴族系の決まり事なんて、基本的に平民には関係のない話だし。
今回、ダミアンと別れるためだけに調べたようなものだものね。
「ああ、でもそれなら」
「ええ。そうなの。今回の夜会で彼は今の妻である貴女とは白い結婚で真実の愛はあたしとだけなのだとみんなの前で公表したわ」
つまりそれが公然の事実となる。
ダミアンと結婚して、今何か月目だっけ。
でも長くとも、あと半年もしないうちに離婚が出来る。
「ああ、だからブレイズ様なのですね」
「彼はあたしとダミアンが付き合っていることに大層激怒されていたからね。これだって思ったというわけ」
「でも待って。それでは、マリアンヌ様は……」
私の言いかけた言葉に、マリアンヌはただ少し悲し気に微笑んだ。
そして一度自分の膝の上に作った拳を見たあと、また私に視線を戻す。
「ずっとね、夢だったの。知っているでしょう、アンリエッタ」
「ダミアン様と、何もないところで二人で暮らすことがですか?」
「ええそうよ。ずっとずっと夢だったの。分かっているわ、自分でも。もうこれは意地なのかもしれないって。両親に結婚を反対されて、あの人はお金のために貴女と結婚をした」
「……」
「それでも、諦めきれなかったの。バカだって分かっているし、軽蔑してくれてもいい。だけどどうせいつか諦める日が来るのなら、最後まで……ね」
泣きそうになりながらも笑うマリアンヌは、誰よりも綺麗だった。
どうして笑うことなど出来るのだろう。
むしろ彼女のその決断に、泣き出しそうになるのを堪えるのに私はただ必死だった。
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