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054 二度目
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「軽蔑なんてするはずがないじゃないですか」
「こんなバカみたいな決断をしても?」
「ええ。マリアンヌ様は、ココで出来たはじめての友だちですから」
「ありがとう、ごめんねアンリエッタ」
そう言いながら、マリアンヌは私に抱きつく。
私はただ彼女の背をそっとなでた。
「ブレイズ様、一つ聞いてもよろしいですか?」
私はそう言いながら、ブレイズに尋ねる。
マリアンヌの目的は分かった。
私の離婚が、私のためであり自分のためでもあると。
始めからマリアンヌとは利害が一致していたから、ある意味当然の流れとも言えるだろう。
だけど、この人は?
私たちのために白い結婚の証人になったところで、何のメリットがあるというのだろう。
むしろこうやっていろんなことに巻き込まれている時点で、めんどくさいだけじゃない。
「ああ」
「どうしてブレイズ様は今回のこの騒ぎに介入して下さるのですか?」
「それは……」
「少しもメリットなんてないじゃないですか」
「メリットか」
私の言葉に彼は顎に手を置き、考え込む。
まさかメリットもナシに協力していたってこと?
見かけによらず、お人好しなのかしら。
なんか固いヒトってしか、イメージなかったけど。
実はそう見えて、情に厚いみたいな感じなのかしらね。
考えたまま固まるブレイズを横目に、私は目の前にあった紅茶に口をつけた。
「そうだな……、純粋なる好意というのではダメだろうか」
「は!?」
あまりにも素っ頓狂で大きな私の声が、部屋に響き渡る。
しかしなぜか私の隣では、マリアンヌが口許に手をやりながらクスクスと笑っていた。
「え、え、え? 本気で言ってます? 先ほどの冗談ではなくて?」
状況が飲み込めず、私は二人を交互に見る。
私のあまりの挙動不審さに、マリアンヌが先に口を開いた。
「だから言ったじゃない。貴女、気づいてなかったの?」
何がと言いかけて私も止まる。
好意でってことよね。
普通、気づかないでしょう。
どこにそんな要素があったというの。
そこまで考え、今までのブレイズの行動を振り返ってみる。
普段社交界に顔を出さなかった彼。
浮わついた話もなければ、特定の女性との話も聞かない。
だけどそんな彼が私をお礼だと言って自宅に招いてくれた。
しかもその後だって、広場でのお礼と言うには多すぎるほど贈り物をくれた。
ただの同情だって思っていたけど、そうじゃなかったってこと?
「マリアンヌ様は気づいてたんですか?」
「なんとなくはね。だけど確信を持ったのは、この前の夜会の時で、だけどね。だいたい、ただの知り合いなだけの人の旦那が愛人を持っていたからと言って、ここまで激怒する?」
「……しない……ですかねぇ?」
「しないでしょーよ」
何こいつとは思っても、激怒まではしないか。
だけど、だけどよ。
本当に好意なの……かな。
「そうだとしてもですよ。接点なんてなかったですし、まだ会ったばかりではないですか」
「恋に落ちるなんて一瞬よ。理屈ではないことくらい、分かるでしょ?」
マリアンヌを見ていれば、それだけは恋愛に疎い私でも分かる。
分かるけども、それが自分に当てはまるかと言われたら、分からないのよ。
「会ったばかりではないんだ。君に助けられたのは、あの広場で二回目なんだ」
「え、二回目?」
記憶になんてないけれど、私は前にもブレイズを助けたってこと。
でも、どこでだろう。
だいたい、前の人生では出てこなかったような人なのに。
もしかして、どこかで私見落としていたのかしら。
「ずいぶん前だからな。覚えていないのも当然かもしれない。昔、子どもの頃に地下に迷い込んでしまった時に、君に助けられたんだ」
「地下……」
ブレイズのその言葉に、私は記憶の端を辿った。
「こんなバカみたいな決断をしても?」
「ええ。マリアンヌ様は、ココで出来たはじめての友だちですから」
「ありがとう、ごめんねアンリエッタ」
そう言いながら、マリアンヌは私に抱きつく。
私はただ彼女の背をそっとなでた。
「ブレイズ様、一つ聞いてもよろしいですか?」
私はそう言いながら、ブレイズに尋ねる。
マリアンヌの目的は分かった。
私の離婚が、私のためであり自分のためでもあると。
始めからマリアンヌとは利害が一致していたから、ある意味当然の流れとも言えるだろう。
だけど、この人は?
私たちのために白い結婚の証人になったところで、何のメリットがあるというのだろう。
むしろこうやっていろんなことに巻き込まれている時点で、めんどくさいだけじゃない。
「ああ」
「どうしてブレイズ様は今回のこの騒ぎに介入して下さるのですか?」
「それは……」
「少しもメリットなんてないじゃないですか」
「メリットか」
私の言葉に彼は顎に手を置き、考え込む。
まさかメリットもナシに協力していたってこと?
見かけによらず、お人好しなのかしら。
なんか固いヒトってしか、イメージなかったけど。
実はそう見えて、情に厚いみたいな感じなのかしらね。
考えたまま固まるブレイズを横目に、私は目の前にあった紅茶に口をつけた。
「そうだな……、純粋なる好意というのではダメだろうか」
「は!?」
あまりにも素っ頓狂で大きな私の声が、部屋に響き渡る。
しかしなぜか私の隣では、マリアンヌが口許に手をやりながらクスクスと笑っていた。
「え、え、え? 本気で言ってます? 先ほどの冗談ではなくて?」
状況が飲み込めず、私は二人を交互に見る。
私のあまりの挙動不審さに、マリアンヌが先に口を開いた。
「だから言ったじゃない。貴女、気づいてなかったの?」
何がと言いかけて私も止まる。
好意でってことよね。
普通、気づかないでしょう。
どこにそんな要素があったというの。
そこまで考え、今までのブレイズの行動を振り返ってみる。
普段社交界に顔を出さなかった彼。
浮わついた話もなければ、特定の女性との話も聞かない。
だけどそんな彼が私をお礼だと言って自宅に招いてくれた。
しかもその後だって、広場でのお礼と言うには多すぎるほど贈り物をくれた。
ただの同情だって思っていたけど、そうじゃなかったってこと?
「マリアンヌ様は気づいてたんですか?」
「なんとなくはね。だけど確信を持ったのは、この前の夜会の時で、だけどね。だいたい、ただの知り合いなだけの人の旦那が愛人を持っていたからと言って、ここまで激怒する?」
「……しない……ですかねぇ?」
「しないでしょーよ」
何こいつとは思っても、激怒まではしないか。
だけど、だけどよ。
本当に好意なの……かな。
「そうだとしてもですよ。接点なんてなかったですし、まだ会ったばかりではないですか」
「恋に落ちるなんて一瞬よ。理屈ではないことくらい、分かるでしょ?」
マリアンヌを見ていれば、それだけは恋愛に疎い私でも分かる。
分かるけども、それが自分に当てはまるかと言われたら、分からないのよ。
「会ったばかりではないんだ。君に助けられたのは、あの広場で二回目なんだ」
「え、二回目?」
記憶になんてないけれど、私は前にもブレイズを助けたってこと。
でも、どこでだろう。
だいたい、前の人生では出てこなかったような人なのに。
もしかして、どこかで私見落としていたのかしら。
「ずいぶん前だからな。覚えていないのも当然かもしれない。昔、子どもの頃に地下に迷い込んでしまった時に、君に助けられたんだ」
「地下……」
ブレイズのその言葉に、私は記憶の端を辿った。
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