スラムの悪ガキが異世界転生ソロ冒険者の物を盗んだら一緒に旅をすることに!?

和吉

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静寂の町を行く

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「それじゃあ、夜の準備は終わったし町に行ってきて良いぞ」
「よ~し、行ってきます!」

 俺達は寝る為のテントと寝袋を準備し終えたので、夜の町に行く許可を貰えた。さぁ早速行くぞ~

「遅くなり過ぎるなよ~」
「分かってる~」

 俺はブレストの声を背中に受けながら静寂に包まれライトチェリーの仄かな光とガーディアンツリーの隙間から降り注ぐ月光に照らされた町へと駆け出した。人の気配がなく、話し声や賑やか音が聞こえない町は凄く新鮮で、鳴り響くのは虫や鳥の声のみ。秋が終わりに近づき冬になりそうになっている所為で、夜はもう寒いぐらいだけど俺の装備ならば大丈夫だ。

「ふふ~ん、道を走るのも良いけどやっぱこうやって走る方が楽しいよな~」

 この町は森の中に木で出来た家が所々にあって、一応整理はしてあるけれど木や蔦それに木の家が伸ばした枝で複雑に入り組んでいる。つまり俺の足場になる場所が沢山あるってことだ。俺は木から木に飛び、空を繋げる蔦を渡り家から家へと飛び移り町を縦横無尽に駆けるのは凄く楽しい。普段はこんな事したら怒られるし、気配を消しながらだったら大丈夫だけど何も気にしなくて良いって言う解放感は味わえないからな~

「あれ、昨日はあそこに木は無かったよな?と言う事は住民だな」

 この時間帯この町の人達はみんな植物の姿になって寝てしまっているから、森に生えている普通の木と同じように見えてしまう。ああやって、昨日や朝には無かったものがあったりすると分かりやすいんだけど、間違えて足場にしたり踏まないように気を付けないとな。

「ペシェさんは気にしないと言ってたけど、人を踏むのは流石に不味いと思うんだよな~」

 あの植物の姿になっている最中は感覚が鈍くなり痛覚も感じづらくなるし、寝ている間であればちょっとやそっとの事じゃ起きないからもし踏まれても気にしないと言われたけど、流石の俺だって人の身体を足場にするのは抵抗あるな。

「あれが盗賊とかだったら喜んで踏みつけてやるんだけど」

 善良な住民達を踏まないよう気を付けながら町を走っていると、水の気配が濃い場所までやって来た。この場所は今日のペシェさんの案内では来ていないエリアで、澄んだ小川が巡るように枝分かれしながら流れていて、その周囲に木の家や草花が咲き誇っている。小川達は月光を浴びてキラキラと光り、一体を明るくし神秘的な雰囲気を醸し出している。それに加えて小川に浮かぶ色とりどりの花達は、水の流れでくるくると回り綺麗だ。

「凄いな~俺達が居たエリアと全く違うみたいだし、ここは水を好む植人達の為に作られた場所か」

 スターリアは大きな町ではあるけど、俺が居たプリトや王都ほどの大きさは無いにも関わらず町の中で環境が違うのが楽しいな。

「昼間に来てないから分からないけどこの場所は夜の方が綺麗に見えそうだよな~」

 景色って言うのは夜と昼間では全く違う顔を見せるものだ。例えば鬱蒼とした森の中に広がる花畑と言うのは昼間に見る分には美しく華やかで綺麗だが、夜になれば明かりが消え何も見えない森と言うのは恐怖を煽り、闇に包まれ美しい花の色さえ見え無いだろう。壮大で雄大な滝であればその勢いと水の量に圧倒されるだろうが夜になれば月光を反射し煌めく滝はきっと神秘的だ。昼と夜、違う良さがあるものなのだ。

「夜はやっぱり良いよな~落ち着く~」

 こうやって夜の町を伸び伸びと眺めゆっくりと寛いでいると、夜の良さを再確認できるな。多くの人が明かりが消え眠りに就く夜よりも太陽の光によって照らされ明るく活動の時間である朝や昼の方が好きな人が多いけど、俺は夜の方が好きだ。この全てを包み込むように広がる闇は俺のこの髪と瞳を隠し、人々の目から俺を隠してくれる。寝床が見つかって大人に追い回された時だって、俺を守ってくれたのはこの闇だ。月光や星々の輝きは優しく俺達を照らし、道を示してくれ世界を神秘的なものへと変えてくれる。夜って最高だと思わないか?

「さて、そろそろ次の所に行くか」

 俺は暫くの間神秘的な輝き方をする小川達を眺めた後、他の町を見る為に駆けだした。明かりが少なく、頼りになるのは月光と星の輝きそれにライトチェリーだけど言う環境でこんな風に自由に走れているのは、夜目が利いて闇の中にあるものが分かるからだ。これは魔法によって夜目が利くようにしている訳じゃ無く生まれた時からのものなのだ。普通の人々にとっては何も見えず真っ暗な世界だとしても、俺には闇の中にあるものがはっきり見えている。光っている訳でも、明るく見えている訳でも無いけどはっきり見えるんだ。俺が夜が好きなのはこの目のおかげでもあるかもしれないな。仕組みは分からないけど、こうやって神秘的な景色を楽しんだり、光の無い森の中でも姿を見れて冒険にも役に立つ。俺の少ない自慢だったりするんだぜ。

「こういうのって親も同じ体質だったりするって言うよな~」

 親と子、血を分けた存在故に親から子供に継がれるものは沢山ある。顔、魔力、そして体質にスキルこう言ったものは親から子に継がれることが多いと言われるけど、俺の親もそうだったのかな?俺の記憶にある二人は常に怒鳴り声と悲鳴を上げ、殺気と嫌悪が宿った睨みつける目に、何度も向かって来る拳と足、首を締め上げる力の入った手、それぐらいしか覚えていない。まともに話すことも無かったから、俺と同じ体質なのかは知らないけどもうどうでも良い事か。

「それに俺と同じならあそこまで俺を殺そうとはしないだろうしな」

 俺を捨て俺の全てを否定し命を奪おうとまでするということは俺に血の繋がりを感じなかったか、それほどまでに俺が化け物に見えたかだな。

「はぁ、変な事考えちまったな。さぁ気持ちを切り替えて次行こっと!」

 もうどうでも良い事を思い出してしまった俺は切り替えるように足に力を籠め町を駆けていく。起きてしまった出来事と言うのはどうやっても変えられないのだから、考えるべきなのは未来。俺はこの世界を楽しむって決めたんだからな。

「お、気配が変わったな。こっちは普通の木がやけに多いけど・・・・あぁなるほど」

 小川が流れているエリアの隣は鬱蒼とした木々が並んでいて、町のどの場所より植物が多く森そのものと言えるほどの場所になっていた。何でこんな場所が街の中にあるのかと疑問だったがその答えはすぐに見つかった。

「植物に寄生する植物は沢山あるもんな~あの花綺麗だけど、その性質を考えると少し恐ろしいよな」

 よく見てみると木々や植物に巻き付くように植人達が眠っている。植物の中には自分で地面に根を生やし大地から糧を吸い成長するのではなく、他の植物の幹に根を生やし命を吸いながら成長する植物がある。その類の植人達が栄養を貰い寝る場所として作られたのがこの場所なのだろう。

 鬱蒼とした植物の中に一番目立つように咲き誇っているあの花畑の中央に咲く花は、命の美貌と呼ばれる花で周囲に咲く花達の命を奪った数だけ大きくなりそして鮮やかな色を見せるという植物だ。つまり夜の森で一際目立つほどの美しさと鮮やかさを持つあれは一体どれほどの花の命を奪ったんだろうな。

「命を奪った分だけ美しくなる・・・・人間もそう変わらないな」

 俺達だって自分の糧にするために魔物を狩り食らう。それによって成長して行くんだからあの花とやっていることは変わらない。

「このエリアは中までは入らない方が良さそうだな」

 特殊な生態を持つ植人達の住処に興味はあるけど、スマッシュツリーのよう死体を作り出し糧としたり、生き物の命を奪わずそのまま寄生する植物、死体に根を生やし成長する植物など厄介な性質を持っている奴もいる。大体の事は何とかなるだろうし、植人達は好戦的では無いけれど危険性を秘めたこの場所にわざわざ入る必要もないだろう。

「戦闘でも相手の手中には入るなって言うしな」

 植人達は植物が溢れる場所では途轍もない強さを見せる事もあると聞くし、やっぱりこの中には入らない方が良いだろう。

「今日はこれぐらいにして帰るか」

 どうせ一ヶ月はこの町に居るだろうし少しずつ見て周れば良いしな。 
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